目次
はじめに
子どもの予防接種について考えるとき、
多くの親御さんが「できる限り守ってあげたい」という思いを持ちながらも、
同時に「本当に全部必要なの?」「受けさせすぎではない?」と迷いを感じています。
特に初めての予防接種や、
任意接種の案内を見たときに、
「これは受けなくてもいいのかな?」
「定期接種と何が違うの?」
と戸惑うことは、決して珍しいことではありません。
その混乱の原因の一つが、
定期接種と任意接種という制度の違いが、分かりにくいことにあります。
この記事では、
・なぜ費用に違いがあるのか
・制度上、どう位置づけられているのか
・任意接種はどう考えればよいのか
を、小児科専門医の立場から、できるだけ噛み砕いて解説します。
👉 仕組みを知ることで、予防接種への不安はぐっと減らせます。
そもそも「定期接種」と「任意接種」とは?
日本の予防接種は、予防接種法という法律をもとに制度設計されています。
この法律の中で、ワクチンは「定期接種」「任意接種」「臨時接種」に分けられています。
親御さんが混乱しやすいのは、
「定期」「任意」という言葉の印象から、
重要度の違いだと誤解してしまうことです。
しかし実際には、
この分類は
- 誰が主体となって行うのか
- 費用を誰が負担するのか
- 公的な関与の度合い
といった制度上の違いによるものです。
👉 定期か任意かは「価値の差」ではありません。
定期接種とは?
国が「社会全体で守るべき」と考えている予防接種
定期接種は、予防接種法に基づき、市区町村が主体となって実施されます。
目的は、個人を守ることに加えて、社会全体で感染症を広げないことです。
多くの人が接種することで、
赤ちゃんや持病のある人など、
ワクチンを打てない人を間接的に守る効果も期待されています。
定期接種の主な特徴
- 対象年齢内であれば原則として公費負担
- 市区町村から接種案内や予診票が届く
- 「受けるように努めましょう」という努力義務がある
- 万が一の健康被害時には、予防接種健康被害救済制度の対象
五種混合、肺炎球菌、B型肝炎、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ロタウイルス、HPVワクチンなどが含まれます。
👉 定期接種は「みんなで守る」ための予防接種です。
任意接種とは?
希望者が選択して受ける予防接種
任意接種は、予防接種法に基づかないワクチンです。
そのため、接種の判断は保護者に委ねられています。
任意接種という言葉から、
「余裕があれば」「できればでいい」と受け取られがちですが、
医学的な重要性とは必ずしも一致しません。
任意接種の主な特徴
- 原則として自己負担
- 自治体からの個別案内は基本的になし
- 接種するかどうかは家庭の判断
- 健康被害が起きた場合は、**医薬品副作用被害救済制度(PMDA)**の対象
おたふくかぜ、インフルエンザ、髄膜炎菌、A型肝炎などが代表例です。
👉 任意接種は「自由=不要」ではありません。
なぜ費用に違いがあるの?
「同じ予防接種なのに、どうしてお金がかかるものとかからないものがあるの?」
これは、とても自然な疑問です。
この違いは、
社会全体で負担するか、個人が負担するかという考え方の違いから生じています。
- 定期接種
→ 社会全体の感染対策として、市区町村が費用を負担 - 任意接種
→ 個人の予防目的として、原則は自己負担
ただし、自治体によっては
おたふくかぜやインフルエンザなどに
独自の助成制度を設けている場合もあります。
👉 費用の有無と、医学的な価値は別物です。
任意接種は受けなくてもいいの?
多くの親御さんが、ここで一番悩みます。
結論として、
任意接種でも、受けることで大きな意味を持つワクチンは多くあります。
実際に、
B型肝炎やロタウイルスワクチンは、
以前は任意接種でしたが、
効果・安全性・社会的意義が評価され、定期接種へと移行しました。
つまり、
「今は任意接種」という理由だけで、
重要度が低いと判断することはできません。
👉 任意接種は「将来の定期接種候補」でもあります。
万が一のときの補償制度も違う
予防接種は安全性が高い医療ですが、
ごくまれに重い副反応や健康被害が起こる可能性があります。
そのため、日本では補償制度が用意されています。
- 定期接種・臨時接種
→ 予防接種健康被害救済制度(予防接種法) - 任意接種
→ 医薬品副作用被害救済制度(PMDA)
どちらも救済制度はありますが、
根拠となる法律や給付内容が異なる点は知っておくと安心です。
👉 「制度がある」こと自体が、国の安全対策です。
迷ったときはどう考えればいい?
定期接種は、原則として
「受けることを前提」に考えてよい予防接種です。
一方、任意接種については、
- その病気にかかる可能性
- かかった場合の重症度
- 保育園・幼稚園・学校など集団生活の有無
- 家庭の考え方や経済的事情
を踏まえて、
かかりつけ医と相談しながら決めるのが理想です。
👉 迷うこと自体が、真剣に考えている証拠です。
まとめ
- 定期接種と任意接種の違いは「制度上の位置づけ」
- 定期接種は社会全体で感染症を防ぐ仕組み
- 任意接種にも医学的に重要なものは多い
- 費用や補償制度が異なる
- 迷ったときは家庭ごとの判断でよい
👉 予防接種は「納得して選ぶこと」が何より大切です

