子どもの尿路感染症とは?ー症状・検査・治療など知っておきたいポイントを小児科専門医が解説

子どもの尿路感染症とは?ー症状・検査・治療など知っておきたいポイントを小児科専門医が解説

はじめに

「高い熱があるのに、咳も鼻水もない」

「風邪と言われたけれど、なかなか熱が下がらない」

「病院で尿路感染症と診断され、突然入院することになった」

このような状況で、不安を感じている親御さんも多いのではないでしょうか。

尿路感染症という病名を聞いても、

「どうしておしっこの感染で高熱が出るの?」

「元気そうなのに、なぜ入院が必要なの?」

「将来、腎臓に影響が残らない?」

と、次々に疑問が出てくると思います。

子どもの尿路感染症は、特に赤ちゃんや小さな子どもに多い細菌感染症です。

乳幼児では「おしっこをすると痛い」と訴えられないため、発熱だけで見つかることも少なくありません。

多くの場合は、適切な抗菌薬治療によってしっかり回復します。

ただし、尿路感染症が進行すると細菌が血液中に入り、菌血症や敗血症などの重い状態につながることがあります。そのため、早期に診断して適切な治療を始めることが大切です。

今回は、子どもの尿路感染症について、症状、検査、入院治療、繰り返す場合の注意点など、親御さんに知っておいてほしいポイントを解説します。

尿路感染症とは?

尿路感染症とは、おしっこの通り道に細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。

おしっこは腎臓で作られ、尿管を通って膀胱にたまり、尿道から体の外へ出ていきます。

この「腎臓・尿管・膀胱・尿道」をまとめて尿路と呼びます。

多くの場合、細菌が尿道から入り、膀胱、さらに腎臓へと上がっていくことで尿路感染症を起こします。

特に腎臓まで感染が及ぶと、高い熱や嘔吐がみられます。赤ちゃんでは、ぐったりしたり、母乳やミルクを飲めなくなったりすることもあります。

子ども、特に乳幼児の発熱を伴う尿路感染症では、腎臓まで感染が及んでいる可能性を考えて治療します。

👉 子どもの発熱を伴う尿路感染症は、早めの治療が必要な細菌感染症です。

子どもはどのような症状が出る?

子どもの尿路感染症は、年齢によって症状の現れ方が異なります。

赤ちゃん・乳幼児の場合

赤ちゃんや小さな子どもは、排尿時の痛みや違和感を自分で伝えられません。

そのため、

  • 原因の分からない発熱
  • 母乳やミルクの飲みが悪い
  • 食欲がない
  • 機嫌が悪い
  • ぐったりしている
  • 嘔吐や下痢
  • 体重が増えにくい

など、一見すると尿とは関係なさそうな症状がみられます。

なかでも重要なのが、咳や鼻水などの風邪症状が目立たない発熱です。

乳幼児では、発熱以外の症状がほとんどなく、尿検査をして初めて尿路感染症と分かることがあります。

幼児・学童の場合

言葉で症状を伝えられる年齢になると、

  • おしっこをするときに痛がる
  • 何度もトイレへ行く
  • おしっこを我慢する
  • 急にお漏らしが増える
  • 一度できていたトイレでの排尿に失敗する
  • 下腹部や腰、背中を痛がる
  • 尿が濁る
  • 尿に血が混じる

などの症状がみられることがあります。

急にお漏らしが増えたり、トイレトレーニングが順調だった子どもが何度も失敗したりする場合には、排尿時の痛みや頻尿が隠れていないか確認しましょう。

ただし、尿のにおいが強い、尿の色が濃いというだけでは、尿路感染症とは診断できません。水分摂取量や食事などによっても、尿のにおいや色は変化します。

👉 赤ちゃんでは「発熱や飲みの悪さ」、大きな子どもでは「排尿時の痛みや頻尿」が尿路感染症のサインになります。

どのような発熱で尿路感染症を疑う?

発熱した子ども全員に尿検査が必要なわけではありません。

一方で、次のような場合には、尿路感染症を考えて尿検査を行うことがあります。

  • 咳や鼻水など、発熱の原因となる症状が乏しい
  • 高い熱が続いている
  • 発熱の原因が分からない
  • 風邪と診断されたものの、なかなか熱が下がらない
  • 発熱に嘔吐や哺乳不良を伴っている
  • 過去に尿路感染症を起こしたことがある
  • 胎児期や乳児期に腎臓・尿路の異常を指摘されている

また、風邪のウイルスが見つかっていても、尿路感染症を同時に起こしている可能性が完全になくなるわけではありません。

特に生後3か月未満の赤ちゃんに38℃以上の発熱がある場合は、元気そうに見えても早めの受診が必要です。

生後28日以内の赤ちゃんでは、尿路感染症だけでなく、菌血症や髄膜炎などの重い細菌感染症も考えなければなりません。夜間や休日であっても自宅で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。

👉 風邪症状の乏しい発熱、特に低月齢の赤ちゃんの発熱では、尿路感染症を考える必要があります。

尿路感染症はどのように診断する?

尿路感染症の診断で最も重要なのは、尿を採取して検査することです。

ただし、尿を調べれば必ず正しく診断できるわけではありません。

正確に診断するためには、皮膚や便にいる細菌が混ざらないよう、できるだけ清潔に尿を取る必要があります。

トイレで排尿できる大きな子どもでは、最初の尿を少し流してから、排尿途中の尿を容器に取る「中間尿」を使用します。

一方、赤ちゃんやトイレトレーニング前の子どもは、自分で中間尿を取ることができません。そのため、尿道から細いカテーテルを入れて尿を採取する「導尿」が必要になることがあります。

「赤ちゃんにカテーテルを入れるなんて、かわいそう」

と感じる親御さんもいると思います。

しかし、おむつに貼り付ける採尿バッグで取った尿には、皮膚や便にいる細菌が混ざりやすくなります。

その尿から細菌が検出されても、本当に尿路感染症なのか、皮膚などの細菌が混ざっただけなのか判断できないことがあります。

正しく診断できなければ、本当は必要のない抗菌薬を使用したり、反対に必要な治療が遅れたりする可能性があります。

また、抗菌薬を使用した後では尿中の細菌が減り、尿路感染症だったのか分からなくなることがあります。そのため、可能な限り抗菌薬を始める前に尿を採取することが重要です。

👉 尿路感染症を正確に診断するため、清潔な尿が取れない乳幼児では導尿が必要になることがあります。

尿路感染症はどのように治療する?

尿路感染症は細菌によって起こるため、抗菌薬を使って治療します。

治療方針は年齢や全身状態、医療機関によって異なりますが、特に乳幼児の発熱を伴う尿路感染症では、入院して抗菌薬の点滴を行うことが多くあります。

「元気そうなのに、なぜ入院しなければいけないの?」

と疑問に思う親御さんもいるでしょう。

子ども、特に赤ちゃんの尿路感染症では、細菌が腎臓だけにとどまらず、血液中へ入り込むことがあります。

細菌が血液中から検出される状態を「菌血症」、それによって全身に強い炎症が起き、臓器の働きに影響が出る状態を「敗血症」と呼びます。

敗血症になると、ぐったりする、呼吸が速くなる、顔色が悪くなる、血圧が下がるなど、命に関わる状態へ進む可能性があります。

低月齢の赤ちゃんほど症状が分かりにくく、最初は比較的元気そうに見えても、その後に全身状態が悪くなることがあります。

そのため、入院して抗菌薬を確実に点滴しながら、発熱や全身状態の変化を慎重に確認します。

水分が取れない場合には点滴で補い、尿や血液の培養検査で原因となった細菌と抗菌薬の効き方を調べます。

培養検査の結果が分かるまでには数日かかるため、結果を待ってから治療を始めるのではなく、尿路感染症を疑った段階で抗菌薬を開始します。

その後、培養検査の結果に合わせて、より適した抗菌薬へ変更することがあります。

多くの場合、適切な抗菌薬を開始すると、24~48時間ほどで発熱や全身状態が改善してきます。

状態が安定し、口から薬や水分を取れるようになれば、点滴から飲み薬へ変更して退院できることがあります。

一方、48~72時間たっても熱が下がらない場合には、

  • 抗菌薬が十分に効いていない
  • 腎臓に強い炎症が起きている
  • 腎臓に膿がたまっている
  • 尿の流れを妨げる異常がある

などの可能性を考えて、追加の検査を行うことがあります。

👉 入院治療は、抗菌薬を確実に投与し、菌血症や敗血症などの重症化を防ぎながら安全に経過をみるために行います。

きちんと治る?腎臓に影響は残らない?

突然入院することになると、

「腎臓に後遺症が残るのでは?」

「将来、腎臓の機能が悪くならない?」

と不安になる親御さんもいると思います。

尿路感染症は、早めに診断して適切な抗菌薬治療を行えば、多くの子どもが問題なく回復します。

一度尿路感染症を起こしただけで、必ず腎臓に傷が残るわけではありません。

ただし、治療開始が遅れたり、腎臓まで感染が及ぶ尿路感染症を何度も繰り返したりすると、腎臓の一部に「腎瘢痕」と呼ばれる傷が残ることがあります。

腎瘢痕が広い範囲にできた場合や、両側の腎臓に傷が残った場合には、将来的な高血圧、たんぱく尿、腎機能低下につながる可能性があります。

必要以上に怖がる必要はありませんが、最初の感染を適切に治療することに加えて、再び発熱したときに早めに尿路感染症を疑うことが大切です。

👉 多くの子どもは適切な治療で回復しますが、腎臓を守るためには早期治療と再発時の早期受診が重要です。

尿路感染症を繰り返すときに考えること

尿路感染症を繰り返す子どもでは、尿路感染症を起こしやすくする腎臓や尿路の病気が隠れていることがあります。

代表的なものには、

  • 腎臓に尿がたまって腫れる「水腎症」
  • 膀胱の尿が腎臓側へ逆流する「膀胱尿管逆流」
  • 尿管や膀胱の形の異常
  • 尿の流れを妨げる病気
  • 膀胱の働きの問題

などがあります。

そのため、尿路感染症を繰り返した場合には、経過に応じて腎臓や膀胱の超音波検査、排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG)などを行うことがあります。

すべての子どもに同じ検査を行うわけではありません。尿路感染症を起こした回数、年齢、治療経過などから、必要な検査を判断します。

一度尿路感染症を起こした子どもが、再び原因の分からない発熱を起こした場合には、受診時に**「以前、尿路感染症で入院したことがあります」**と必ず伝えましょう。

👉 尿路感染症を繰り返す場合には、水腎症や膀胱尿管逆流などが隠れていないか調べることがあります。

家庭でできる再発予防は?

生まれつきの腎臓や尿路の異常など、家庭での工夫だけでは防げない尿路感染症もあります。

「自分のおむつ交換が遅かったから」

「きれいに洗えていなかったから」

と、親御さんが自分を責める必要はありません。

一方、排尿や排便の習慣を整えることは、尿路感染症の再発予防につながることがあります。

家庭では、

  • おしっこを長時間我慢させない
  • 定期的にトイレへ行く
  • 落ち着いて最後まで排尿する
  • 便秘を放置しない
  • 年齢や体調に合わせて水分を取る
  • 便が出たらおむつを交換する
  • 女の子は前から後ろへ拭く
  • 男の子の包皮は無理にむかず優しく洗う

ことを心がけましょう。

特に便秘は、たまった便が膀胱を圧迫し、尿を出し切りにくくすることがあります。

硬い便が出る、排便時に痛がる、数日間便が出ない、便を我慢する、下着に少量の便が付くといった症状がある場合には、便秘についても医療機関へ相談してください。

👉 再発予防では、排尿を我慢しないこと、便秘を治すこと、適度に水分を取ることが大切です。

まとめ

  • 尿路感染症は、おしっこの通り道に細菌が入り込む病気
  • 乳幼児では排尿時の痛みがなく、発熱だけで見つかることがある
  • 咳や鼻水のない発熱、哺乳不良、嘔吐などが診断のきっかけになる
  • 生後3か月未満、特に生後28日以内の発熱は早急な受診が必要
  • 正確な診断には、できるだけ清潔に採取した尿が必要
  • 中間尿を取れない乳幼児では、導尿による採尿が必要になることがある
  • 発熱を伴う尿路感染症では、入院して抗菌薬を点滴することが多い
  • 入院は抗菌薬を確実に投与し、菌血症や敗血症などの重症化を防ぐために行う
  • 適切に治療すれば、多くの子どもは問題なく回復する
  • 尿路感染症を繰り返す場合は、水腎症や膀胱尿管逆流などを調べることがある
  • 再び原因不明の発熱が出たら、過去に尿路感染症を起こしたことを医師へ伝える
  • 再発予防には、排尿を我慢しないことや便秘の改善が重要

👉 乳幼児の原因不明の発熱では尿路感染症の可能性も考え、早めに受診して適切な検査と治療につなげることが大切です。