【小児科専門医監修】子どもの低身長とは?「背が伸びない」ときの基準・受診の目安・治療を解説

【小児科専門医監修】子どもの低身長とは?「背が伸びない」ときの基準・受診の目安・治療を解説

はじめに

「クラスでいつも一番小さい」
「去年から、ほとんど背が伸びていない気がする」
「両親が小柄だから、遺伝だと思ってよい?」

子どもの身長について、このような不安を感じる保護者の方は少なくありません。

身長には大きな個人差があり、小柄だからといって必ず病気があるわけではありません。実際、低身長に当てはまる子どもの多くは、治療を必要とする病気ではないとされています。

ただし、一部にはホルモンの病気や慢性疾患などが隠れていることがあります。大切なのは、現在の身長だけではなく、これまでどのように伸びてきたかを確認することです。

今回は、子どもの低身長の基準、成長曲線の見方、受診の目安、検査や治療について、保護者の方向けに分かりやすく解説します。


子どもの低身長とは?何cmから?

低身長には、「○歳で○cm以下」という全年齢共通の基準があるわけではありません。

年齢と性別が同じ子どもたちと比べて、身長がどの位置にあるかを示す「SD(標準偏差)」という指標を使って判断します。一般的には、身長が**−2SD以下**の場合を低身長と呼びます。

−2SD以下に当てはまるのは、同じ年齢・性別の子ども100人のうち、およそ2~3人です。

ただし、−2SD以下だからといって、すぐに病気や治療が必要という意味ではありません。日本内分泌学会では、低身長と判定される子どもの90%以上は、治療を必要とする病気が見つからないと説明しています。

一方、現在の身長が−2SDより上でも、それまでの成長曲線から大きく外れて伸びが悪くなっている場合には、確認が必要です。

👉 低身長は一律の「何cm」で判断せず、年齢・性別ごとの基準と成長曲線を使って評価します。


一番大切なのは「成長曲線」

成長曲線は、子どもの身長や体重を年齢ごとに記録し、成長の経過を確認するグラフです。母子健康手帳や学校の健康記録にも掲載されています。

成長曲線を見るときは、次の3つのパターンに注目します。

1.小柄でも同じカーブに沿って伸びている

身長が低めでも、成長曲線に沿って一定のペースで伸びている場合は、遺伝や体質による可能性があります。

2.身長が−2SDを下回っている

現在の身長が−2SD以下であれば、一度小児科で相談する目安になります。

3.成長曲線を下向きに横切っている

以前は標準的な身長だったのに、次第に成長曲線の下のラインへ移動している場合は、身長の伸びる速度が低下している可能性があります。

このような変化は、ホルモンの病気や慢性疾患などを見つける手がかりになります。

一年に何cm伸びればよい?

身長の伸びる速度は、乳幼児期、学童期、思春期によって大きく異なります。

思春期前の学童期では、一般に一年間で5~6cm前後がひとつの目安になります。ただし、年齢や性別、思春期の始まる時期によって個人差があるため、「年間○cm未満なら病気」と一律に判断することはできません。

測定方法による誤差もあるため、1回の測定値だけではなく、数か月から数年の記録を並べて確認することが大切です。

👉 小柄でも順調に伸びているか、それまでのカーブから外れてきているかが重要です。


低身長の原因は遺伝だけ?

低身長の多くは、遺伝的な体質や成長する時期の個人差によるものです。しかし、身長の伸びに影響する原因はそれだけではありません。

遺伝や体質

両親が小柄な場合、子どもも小柄になる傾向があります。

また、成長のペースがゆっくりで、周囲より遅れて思春期を迎えてから身長が伸びる子どももいます。

栄養不足や慢性疾患

十分な栄養を取れていない場合や、消化管・心臓・腎臓などの慢性疾患がある場合には、身長の伸びが悪くなることがあります。

長期間使用しているステロイドなどの薬が影響することもあります。

ホルモンの病気

成長ホルモン分泌不全症や甲状腺機能低下症などでは、身長の伸びる速度が低下します。

体重は比較的保たれているのに、身長だけが伸びにくくなることもあります。

小さく生まれた場合

在胎週数に対して小さく生まれた子どもを「SGA児」と呼びます。

多くは3歳頃までに身長が追いつきますが、一部では低身長が続くことがあります。

思春期の始まる時期

思春期が早く始まると、一時的に周囲より身長がよく伸びることがあります。

しかし、骨の成熟も早く進むため、早い時期に身長の伸びが止まり、最終身長に影響する可能性があります。反対に、思春期の始まりが遅いため、周囲より小柄に見えている子どももいます。

【思春期早発症についてはこちらの記事で詳しく説明しています】

染色体・遺伝子や骨の病気

ターナー症候群、ヌーナン症候群、軟骨無形成症などが低身長の原因になることもあります。

手足と胴体のバランス、顔立ち、思春期の進み方、ほかの症状などから疑われる場合があります。

👉 低身長の多くは遺伝や体質によるものですが、治療可能な病気が隠れていることもあります。


小児科ではどのような検査をする?

低身長の診察では、最初からすべての検査を行うわけではありません。成長曲線や診察結果から、必要な検査を選びます。

まず、次のような内容を確認します。

  • 出生時の身長・体重と在胎週数
  • これまでの身長・体重の記録
  • 両親の身長や思春期を迎えた時期
  • 食事、睡眠、運動などの生活状況
  • 持病や使用している薬
  • 思春期の始まり方
  • 身体のバランスやほかの症状

必要に応じて、血液検査や尿検査で、栄養状態、貧血、肝臓・腎臓の働き、炎症、甲状腺ホルモン、成長に関係する物質などを調べます。

手のレントゲン写真から、骨の成熟度を示す「骨年齢」を確認することもあります。

成長ホルモンは一日の中で分泌量が大きく変化するため、通常の採血で一度測った値だけでは、分泌不足かどうかを判断できません。

成長ホルモン分泌不全症が疑われる場合には、薬で分泌を促して反応を調べる「成長ホルモン分泌刺激試験」を行います。

さらに必要な場合は、頭部MRI検査や染色体・遺伝子検査などが検討されます。

👉 低身長の診断では、成長曲線と診察を基本に、必要な検査を段階的に行います。


成長ホルモン治療は誰でも受けられる?

「背が低ければ、成長ホルモンを使えるのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、成長ホルモン治療は、すべての低身長の子どもに行うものではありません。

まずは低身長の原因を調べ、栄養不足、甲状腺の病気、慢性疾患などが見つかった場合には、その原因に対する治療を優先します。

成長ホルモン治療の代表的な対象には、次のような病気があります。

  • 成長ホルモン分泌不全性低身長症
  • SGA性低身長症
  • ターナー症候群
  • ヌーナン症候群
  • プラダー・ウィリ症候群
  • 慢性腎不全
  • 一部の骨系統疾患

実際に治療できるかどうかは、病名だけでなく、身長、年齢、成長速度、検査結果などの基準を満たしているかによって判断されます。

治療は自宅で行う皮下注射が基本です。毎日または週6~7回注射する製剤に加え、病気や製剤によっては週1回の持続型製剤を使用できる場合もあります。

治療中は、身長の伸びや血液検査を定期的に確認します。注射部位の赤みや痛み、関節痛、血糖値や甲状腺機能の変化などに注意が必要です。

強い頭痛や繰り返す嘔吐、急な足の痛みや歩き方の変化がある場合は、早めに主治医へ相談します。

成長ホルモン治療をすれば、必ず希望する身長まで伸びるわけではありません。効果は原因、治療開始時期、思春期の進み具合などによって異なります。

👉 成長ホルモン治療は「希望する身長まで伸ばすための治療」ではなく、適応となる病気と基準が定められた医療です。


家庭で確認したいことと受診の目安

家庭でできる最も大切なことは、これまでの身長と体重を成長曲線に記録することです。

身長は測定方法による誤差もあるため、毎週のように測る必要はありません。乳幼児健診、園、学校などで測定した記録を、数か月から数年単位で並べてみましょう。

次のような場合は、小児科へ相談することをおすすめします。

  • 身長が−2SD以下にある
  • 成長曲線を下向きに横切っている
  • 前年までと比べて、身長の伸びが明らかに遅くなった
  • 小さく生まれ、3歳頃になっても身長が追いつかない
  • 体重も増えない、または減っている
  • 慢性的な腹痛、下痢、食欲不振、強い疲れやすさがある
  • 手足と胴体のバランスが気になる
  • 思春期が極端に早い、または遅い
  • 頭痛、嘔吐、見え方の異常などを伴う

まずは、かかりつけの小児科へ相談して構いません。

受診時には、母子健康手帳、園や学校の健康記録、これまでの身長・体重の測定結果を持参しましょう。必要に応じて、小児内分泌を専門とする医療機関へ紹介されます。

バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動は、子どもが本来持っている成長する力を支えます。

ただし、特定の食品、サプリメント、ストレッチなどに、病気や遺伝による低身長を改善する確実な効果があるわけではありません。「背を伸ばす」と宣伝する商品だけに頼らず、気になる場合は医療機関で成長曲線を確認してもらいましょう。

👉 家庭では身長を無理に伸ばそうとするより、成長の記録を残し、気になる変化があれば小児科へ相談することが大切です。


まとめ

子どもの低身長は、単に「何cm以下か」だけでは判断できません。

  • 低身長の一般的な基準は、同年齢・同性の−2SD以下
  • 小柄でも成長曲線に沿って伸びていれば、体質的な場合が多い
  • 成長曲線を下向きに横切る場合は、身長が−2SDより上でも注意が必要
  • 一年間に伸びる身長は、年齢や思春期の時期によって異なる
  • 原因には遺伝や体質のほか、栄養、慢性疾患、ホルモン、思春期、遺伝子や骨の病気などがある
  • 成長ホルモン治療には、対象となる病気と基準がある
  • 受診時には母子健康手帳や園・学校の成長記録を持参する
  • まずはかかりつけの小児科へ相談してよい

子ども自身が身長を気にしている場合は、毎日のように周囲と比べたり、「もっと食べれば伸びる」などと責めたりしないことも大切です。

👉 「小さいこと」だけを心配するのではなく、「成長曲線から外れていないか」を確認し、気になる変化があれば小児科へ相談しましょう。