目次
- はじめに
- ✅ 吸入薬が必要な理由
- ✅ 吸入デバイスは大きく4種類
- ① MDI(エアロゾル)
- ② スペーサー(エアロチャンバー® など)
- ③ DPI(粉吸入:ディスカス・エリプタなど)
- ④ ネブライザー(霧化式吸入器)
- ✅ 年齢に応じた「最適な吸入デバイス」
- ✅ 0〜2歳:MDI+スペーサー(マスク一択)
- ✅ 3〜4歳:MDI+スペーサー(マスク → マウスピースへ移行期)
- ✅ 5〜6歳:MDI+スペーサー or DPI(粉吸入)
- ✅ 7歳〜:ほとんどの子がDPIを使える
- ✅ よくある失敗と「実は吸えていない」サイン
- ❌ ① MDIでプッシュと吸入のタイミングが合わない
- ❌ ② DPIの吸う力が弱い
- ❌ ③ ICS後のうがい不足(口内炎・声かすれの原因)
- ❌ ④ マスクの密着不足で漏れてしまう
- ❌ ⑤ “吸っているつもり”で実は吸えていない
- ✅ まとめ
はじめに
これまでの記事では、
- 小児喘息はしっかり治療すれば“治る病気”であること🔗過去の記事はこちら
- 診断が難しい理由🔗過去の記事はこちら
- 発作時の適切な対応🔗過去の記事はこちら
- 毎日のコントローラー治療の重要性🔗過去の記事はこちら
についてお話ししてきました。
今回は、親御さんがよく迷われる
「吸入薬の種類と選び方」 について、
小児科専門医の視点から分かりやすく解説します。
👉 吸入器の違いを知ると、治療の効果とやりやすさがグッと変わります。
✅ 吸入薬が必要な理由
小児喘息は、気道に炎症があることが本体の病気です。
飲み薬よりも、炎症が起きている気道に薬を直接届ける吸入薬の方が、
- 少量でしっかり効く
- 即効性がある
- 副作用が少ない
という大きなメリットがあります。
✅ 吸入デバイスは大きく4種類
―― それぞれ「どんな子に合うか」を知ることが大切
① MDI(エアロゾル)

代表薬:フルタイド、キュバール、アドエアエアロゾル、メプチンエア®
特徴
- プッシュすると霧状の薬が勢いよく噴射
- 小児には“押す→吸う”のタイミングが難しい
- スペーサー併用が基本
② スペーサー(エアロチャンバー® など)

代表例:エアロチャンバー、VORTEX、マスク付きスペーサー
特徴
- 薬を一度ためてゆっくり吸える
- 小児の「吸えていない問題」を大幅に改善
- マスクタイプなら乳幼児でもOK
👉 吸入が不安なら、まずスペーサーを使うのが正解。
③ DPI(粉吸入:ディスカス・エリプタなど)

代表薬:アドエアディスカス、レルベア、ブリーズヘラー
特徴
- 自分の吸う力で薬を吸い込むタイプ
- タイミング合わせが不要で簡単
- 吸う力が弱い年齢には向かない
④ ネブライザー(霧化式吸入器)

病院の急性期(発作時)治療で活用される吸入器。
特徴
- 霧状の薬を長時間吸入する
- 発作時の気道を広げたいときに有用
ただし、日常のコントローラー治療には不向き
理由:
- 1回10〜20分と時間がかかる
- しっかり咥えられないと吸入量が少ない
- 家庭での運用・手入れが大変
👉 普段の管理は MDI+スペーサー or DPI。
ネブライザーは“急性期専門”と覚えてOK。
✅ 年齢に応じた「最適な吸入デバイス」
―― 年齢でできることが変わるから、吸入器も変わる
✅ 0〜2歳:MDI+スペーサー(マスク一択)
- 吸う力が弱い
- “吸う”を意識できない
- マウスピースが咥えられない
👉 迷わずマスク型スペーサーでOK。泣いていても一定量吸えます。
✅ 3〜4歳:MDI+スペーサー(マスク → マウスピースへ移行期)
- 少しずつ吸う動作が上達
- できる子はマウスピースに移行可能
- まだ個人差が非常に大きい
👉 診察で手技を確認しながらステップアップ。
✅ 5〜6歳:MDI+スペーサー or DPI(粉吸入)
- 吸う力が強くなり、DPIが使える子が増える
- タイミング不要で扱いやすい
- 練習すれば上達しやすい
👉 デバイスを選べるようになる時期。
✅ 7歳〜:ほとんどの子がDPIを使える
- 深く速く吸える
- 携帯しやすく、学校でも使いやすい
👉 “自分でできる吸入”が身につき始める年齢。
✅ よくある失敗と「実は吸えていない」サイン
―― 正しい吸入は、治療効果の9割を左右します
❌ ① MDIでプッシュと吸入のタイミングが合わない
→ スペーサーで解決。
押したあと5〜10回ゆっくり呼吸でOK。
❌ ② DPIの吸う力が弱い
→ 医療者前でチェック。
難しければ MDI+スペーサーに戻すのは正しい選択。
❌ ③ ICS後のうがい不足(口内炎・声かすれの原因)
→ 吸入後はうがい必須。
できない年齢は飲水でもOK。
❌ ④ マスクの密着不足で漏れてしまう
→ 鼻と口にしっかりフィットさせる。
ずれるようなら大人が固定。
❌ ⑤ “吸っているつもり”で実は吸えていない
→ 必ず診察で手技チェック。
小さな改善で吸入量は大きく変わります。
✅ まとめ
- 吸入薬は「吸う力」と「手技」で選ぶ
- 乳幼児は MDI+スペーサー(マスク)
- 5〜6歳以上で DPI(粉吸入) も選択肢に
- ネブライザーは急性期用で、普段の管理には向かない
- 正しく吸えてこそ治療効果が出る
👉 今日からデバイスを見直すだけで、治療がぐっと楽になります。

