子どものHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を正しく知ろう!―効果・副反応・接種時期を小児科専門医が解説

子どものHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を正しく知ろう!―効果・副反応・接種時期を小児科専門医が解説

はじめに

小学校高学年になると、自治体から届く「HPVワクチンのお知らせ」。

「まだ子どもなのに、なぜ接種するの?」
「副反応が心配……」
「本当に受けた方がいいの?」

このように迷う親御さんは少なくありません。過去の報道を覚えていて、不安を感じている方もいるでしょう。

HPVワクチンは、将来の子宮頸がんなどを予防するために、子どものうちに接種しておくことが大切なワクチンです。

この記事では、HPVワクチンの効果や接種時期、副反応について、親御さんが知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。


HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)とは?

HPVワクチンは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」への感染を防ぐワクチンです。

HPVは、主に性的な接触によって感染する、ごく一般的なウイルスです。多くの場合は自然に体から排除されますが、一部では感染が長く続き、将来の子宮頸がんにつながることがあります。

日本では毎年、約1万人が子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。特に、妊娠や出産、子育てを迎えることの多い若い世代にもみられるがんであることが問題です。

HPVワクチンは、感染してからHPVを排除したり、子宮頸がんを治療したりするワクチンではありません。HPVに感染する前に接種し、将来のがんを予防するためのワクチンです。

👉 HPVワクチンは、子どもの今ではなく、将来の健康を守るために接種します。


なぜ子どものうちに接種するの?

「性的な接触で感染するなら、もっと大きくなってからでもよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、HPVワクチンは、HPVに感染する前に接種するほど高い効果が期待できます。また、一般的に若い年齢で接種した方が、ワクチンに対する免疫もつきやすいとされています。

そのため、日本では小学校6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象になっており、標準的な接種時期は中学1年生です。

HPVワクチンを勧められることは、その子の現在の行動を疑われているという意味ではありません。将来HPVに感染する可能性に備えて、最も予防効果が期待できる時期に接種するという考え方です。

👉 子どものうちに接種するのは、早すぎるからではなく、予防効果を十分に得るためです。


HPVワクチンにはどのような効果がある?

2026年4月から、定期接種に使用されるのは9価HPVワクチン「シルガード9」です。

「9価」とは、9種類のHPVを予防対象としているという意味です。このうち7種類は、子宮頸がんの原因になりやすいHPVです。

9価HPVワクチンによって、子宮頸がんの原因の約80~90%を防げるとされています。また、HPVによる前がん病変を減らすだけでなく、海外では子宮頸がんそのものを減らす効果も報告されています。

ただし、すべてのHPV感染や子宮頸がんを100%防げるわけではありません。そのため、ワクチンを接種していても、成人後は子宮頸がん検診を受けることが大切です。

👉 HPVワクチンと将来の子宮頸がん検診を組み合わせることが、より確実な予防につながります。


何歳で、何回接種するの?

定期接種の対象は、小学校6年生から高校1年生相当までの女子です。対象期間内であれば、原則として公費で接種できます。

接種回数は、1回目を受ける年齢によって異なります。

15歳になる前に1回目を接種した場合

原則として、合計2回です。

  • 1回目
  • 通常、1回目から6か月後に2回目

1回目と2回目の間隔は、少なくとも5か月以上あける必要があります。5か月未満で接種した場合は、3回目の接種が必要になります。

15歳になってから1回目を接種した場合

合計3回です。

  • 1回目
  • 通常、1回目から2か月後に2回目
  • 通常、1回目から6か月後に3回目

体調不良などで予定日に受けられなくても、通常は最初からやり直す必要はありません。接種間隔については医療機関へ相談してください。

2回で完了できることや、接種期限に余裕を持てることから、できれば15歳になる前に1回目を受けるのがおすすめです。

👉 自治体から案内が届いたら後回しにせず、余裕を持って接種を始めましょう。


HPVワクチンの副反応は?

最も多いのは、接種した腕の症状です。

  • 痛み
  • 腫れ
  • 赤み
  • しこり

そのほか、頭痛、発熱、だるさ、吐き気、めまいなどがみられることがあります。多くは一時的で、数日以内に改善します。

特に腕の痛みはよくみられ、9価ワクチンでは接種した人の半数以上に起こるとされています。

一方、重いアレルギー反応などの重い副反応が起こる可能性もありますが、非常にまれです。

また、思春期の子どもでは、注射の痛みや緊張によって血圧が下がり、気を失うことがあります。これはHPVワクチンの成分による反応とは限らず、ほかの注射でも起こります。

転倒によるけがを防ぐため、接種後30分程度は、背もたれのある椅子などに座って様子を見ましょう。

なお、HPVワクチンによって不妊になりやすくなるという科学的根拠は、現在のところ認められていません。

👉 腕の痛みなどは比較的よくみられますが、重い副反応が起こることは非常にまれです。気になる症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう。


過去に報道された「接種後のさまざまな症状」は大丈夫?

HPVワクチンの接種後に、長く続く痛み、しびれ、力が入りにくい、体が動かしにくいといった症状が報告され、大きく報道された時期がありました。

そのため、日本では2013年から積極的な接種勧奨が一時的に差し控えられていました。しかし、その後、国内外で有効性と安全性について改めて検討され、2022年4月から個別の接種案内が再開されています

「接種後に起きた症状」のすべてが、ワクチンによって起きたとは限りません。ワクチンと直接関係なく起こる体調不良や、注射への緊張・不安などによって生じる症状も含まれるためです。

ただし、接種後のつらい症状を「気のせい」と決めつけてよいわけではありません。

痛みやしびれなどが長引く場合や、学校生活・日常生活に支障が出ている場合は、接種した医療機関やかかりつけ医へ相談してください。必要に応じて、各都道府県に設置されている協力医療機関へつないでもらうこともできます。

👉 接種との因果関係にかかわらず、症状が続くときは我慢せず医療機関へ相談しましょう。


子ども本人にはどう説明すればいい?

HPVワクチンを受ける年齢になると、子ども本人も「何の注射?」「どうして受けるの?」と疑問を持つようになります。

難しい説明をする必要はありません。

「将来かかるかもしれない病気や、がんを予防するためのワクチンだよ」

このように伝えるだけでも十分です。

「親が決めたから受けなさい」と進めるよりも、本人にもわかる言葉で目的や副反応を説明し、疑問や不安を聞いてあげることが大切です。

注射が苦手な場合は、横になって接種できるか、事前に医療機関へ相談してもよいでしょう。

👉 親子で一緒に考え、本人が納得して接種できる環境をつくりましょう。


まとめ

  • HPVは、子宮頸がんなどの原因になる一般的なウイルス
  • HPVワクチンは、感染する前に接種するほど高い効果が期待できる
  • 定期接種の対象は、小学校6年生から高校1年生相当までの女子
  • 15歳になる前に1回目を受ければ、原則2回の接種で完了する
  • 9価ワクチンは、子宮頸がんの原因の約80~90%を防ぐとされている
  • 腕の痛みや腫れは比較的多いが、重い副反応は非常にまれ
  • HPVワクチンによって不妊になりやすくなるという科学的根拠は認められていない
  • 接種後は失神や転倒を防ぐため、座って30分程度様子を見る
  • 痛みなどの症状が長引く場合は、接種した医療機関やかかりつけ医へ相談する
  • ワクチンを接種していても、成人後は子宮頸がん検診が必要

👉 HPVワクチンについて親子で正しく知り、将来の子宮頸がんを予防する機会を大切にしましょう。

※定期接種の対象や使用されるワクチンは、2026年8月時点の情報です。自治体によって予約方法などが異なるため、最新情報をご確認ください。