目次
はじめに
「インフルエンザワクチンを受けさせたいけれど、注射が苦手で毎年大変……」
そんなご家庭にとって、鼻に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト®」は、新しい選択肢のひとつです。
フルミスト®は、2024年秋から日本でも接種できるようになった経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。針を使わず、左右の鼻にワクチンを噴霧します。
一方で、年齢や健康状態、使用している薬によっては接種できない場合があります。
この記事では、フルミスト®の特徴や注射型ワクチンとの違い、接種前に確認しておきたいことについて、保護者の方に分かりやすく解説します。
フルミスト®とは?
フルミスト®は、鼻から投与するインフルエンザワクチンです。
対象年齢は、2歳以上19歳未満です。
接種では針のない専用器具を使用し、左右の鼻にそれぞれ0.1mLずつ、合計0.2mLを噴霧します。
年齢や過去のインフルエンザワクチン接種歴にかかわらず、1シーズンに1回の接種です。
注射型ワクチンが「不活化ワクチン」であるのに対し、フルミスト®は、病原性を弱めたウイルスを使用する「弱毒生ワクチン」です。
子どものインフルエンザワクチンは、原則として任意接種です。接種費用や自治体の助成制度は、地域や医療機関によって異なります。
👉 フルミスト®は、2歳以上19歳未満を対象とした、針を使わない鼻から接種するインフルエンザワクチンです。

どうやって免疫がつく?注射より効果が高いの?
インフルエンザウイルスは、主に鼻やのどの粘膜から体内に侵入します。
フルミスト®は、鼻の粘膜で弱毒化されたウイルスがわずかに増えることによって、インフルエンザに対する免疫をつける仕組みです。
「鼻に接種するワクチンのほうが、注射よりよく効くのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、日本小児科学会は、注射型ワクチンとフルミスト®について、現時点ではインフルエンザの予防効果に明確な優劣は確認されていないとしています。
2歳以上19歳未満の子どもでは、年齢や健康状態などの条件が合えば、どちらも選択肢になります。
流行するウイルスの種類や接種を受ける人の年齢などによってもワクチンの効果は変わるため、「フルミスト®なら必ず感染を防げる」というものではありません。
ただし、どちらのワクチンもインフルエンザの発症予防が期待され、重症化予防の観点からも接種は重要です。
👉 フルミスト®と注射型ワクチンのどちらかが、常に優れているわけではありません。
注射型ワクチンとフルミスト®の違い
| 比較項目 | 注射型ワクチン | フルミスト® |
|---|---|---|
| 接種方法 | 腕などに注射 | 左右の鼻に噴霧 |
| 対象年齢 | 生後6か月以上 | 2歳以上19歳未満 |
| ワクチンの種類 | 不活化ワクチン | 弱毒生ワクチン |
| 接種回数 | 年齢などにより1~2回 | 1シーズンに1回 |
| よくみられる反応 | 接種部位の痛み・腫れ、発熱など | 鼻水・鼻づまり、せき、のどの痛み、発熱など |
| 主なメリット | 幅広い年齢や健康状態で選択しやすい | 針を使わず、接種が1回で済む |
| 注意点 | 注射時の痛みがある | 健康状態や使用中の薬によって接種できないことがある |
フルミスト®は針を使わないため、注射を強く怖がる子どもには大きなメリットがあります。
ただし、鼻に器具を近づけられることを嫌がる子どももいます。泣いて激しく動いてしまう場合には、安全に接種できないこともあります。
「痛くないからフルミスト®」「新しいからフルミスト®」と決めるのではなく、子どもの年齢や持病、内服薬、接種時の体調などを考えて選ぶことが大切です。
👉 接種方法の違いだけでなく、子どもの健康状態を含めて選びましょう。
フルミスト®を接種できない人・事前相談が必要な人
フルミスト®は、すべての子どもに使用できるわけではありません。
対象年齢ではない人
次の年齢は、日本で承認されている接種対象に含まれません。
- 2歳未満
- 19歳以上
特に2歳未満では、海外の臨床試験において、接種後の入院や喘鳴のリスクが増えたとの報告があります。
接種できない、または接種を延期することがある人
次のような場合には、フルミスト®を接種できない、あるいは当日の接種を延期することがあります。
- 明らかな発熱がある
- 重い急性疾患にかかっている
- ワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある
- 免疫機能に異常がある
- 免疫を抑える治療を受けている
- 妊娠していることが明らかである
接種前に医師へ相談したいケース
次のような場合も、必ず接種前に医師へ伝えてください。
- 喘息がある、または最近ゼーゼーしている
- アスピリンなどのサリチル酸系薬剤を使用している
- ジクロフェナクやメフェナム酸を使用している
- ステロイドや免疫抑制薬を使用している
- ゼラチンで強いアレルギーを起こしたことがある
- 卵、鶏肉、鶏由来成分などでアレルギー症状が出たことがある
- 過去の予防接種後に発熱や全身の発疹が出たことがある
- けいれんを起こしたことがある
- 心臓、腎臓、肝臓、血液などの基礎疾患がある
- 同居家族など、身近に重度の免疫不全の人がいる
- 最近、抗インフルエンザ薬を使用した
- 強い鼻水や鼻づまりがある
- 妊娠している可能性がある、または授乳中である
特に川崎病などでアスピリンを使用している場合や、ステロイド・免疫抑制薬などで治療している場合には、自己判断せず主治医に確認しましょう。
抗インフルエンザ薬を接種前後に使用すると、ワクチンウイルスの増殖が抑えられ、フルミスト®の効果が弱まる可能性があります。いつ、どの薬を使用したかを接種医へ伝えてください。
強い鼻水や鼻づまりがある場合は、当日の体調も含めて接種できるか医師が判断します。
妊娠可能な女性では、添付文書上、接種前の約1か月間と接種後の約2か月間は妊娠を避ける必要があります。
また、授乳中は接種の必要性を慎重に判断し、接種した場合には、ワクチンウイルスの水平伝播を避けるため、接種後1~2週間は乳児との密接な接触を可能な範囲で控える必要があります。
👉 持病や使用中の薬がある場合には、お薬手帳を持参して接種前に相談しましょう。

接種後に起こりやすい副反応と注意点
フルミスト®の接種後には、次のような症状がみられることがあります。
- 鼻水
- 鼻づまり
- せき
- のどの痛み
- 頭痛
- 発熱
- だるさ
- 食欲低下
鼻に投与するワクチンのため、鼻水や鼻づまりなどの症状が比較的起こりやすいのが特徴です。
多くは一時的で、自然に改善します。
接種当日は激しい運動を避け、体調に変化がないか様子をみましょう。
接種後も元気で体調に問題がなければ、フルミスト®を接種したという理由だけで、保育園・幼稚園・学校を休む必要はありません。
一方で、非常にまれですが、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こる可能性があります。
接種後に全身のじんましん、顔や唇の腫れ、息苦しさ、ぐったりするなどの症状がみられた場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
接種後は重度の免疫不全の人との接触に注意
フルミスト®は弱毒生ワクチンのため、接種後しばらくは、鼻やのどからワクチン由来のウイルスが排出されることがあります。
接種後1~2週間は、同居家族など身近に重度の免疫不全の人がいる場合、可能な範囲で密接な接触を避ける必要があります。
該当する家族がいる場合には、接種前に医師へ相談し、注射型ワクチンを選ぶことも検討します。
インフルエンザ検査に影響することがある
フルミスト®接種後は、ワクチン由来のウイルスがインフルエンザの迅速検査で検出され、陽性となる可能性があります。
添付文書では、接種後4週間以内はワクチン由来のウイルスが残っている可能性があるとされています。
接種後に発熱などで医療機関を受診するときは、フルミスト®を接種した日を医師へ伝えてください。
👉 接種後に受診するときは、「いつフルミスト®を接種したか」を医師へ伝えましょう。
フルミスト®と注射型ワクチン、どちらを選ぶ?
フルミスト®が選択肢になりやすい子ども
- 2歳以上19歳未満
- 注射に対する恐怖が強い
- できれば1回の接種で終えたい
- 持病や使用中の薬など、接種上の問題がない
- 鼻への噴霧を受け入れられる
注射型ワクチンが選択肢になりやすい子ども
- 2歳未満または19歳以上
- 喘息がある、または喘鳴を認める
- 免疫機能に関する病気がある
- 免疫を抑える治療を受けている
- フルミスト®の接種に注意が必要な薬を使用している
- 身近に重度の免疫不全の人がいる
- 鼻に器具を近づけられることを強く嫌がる
日本小児科学会は、喘息のある子どもには注射型の不活化インフルエンザワクチンを推奨しています。
一方、持病があるというだけで、必ずフルミスト®を接種できないわけではありません。病気の種類や現在の状態、治療内容によって判断が異なります。
最終的には、年齢だけでなく、現在の体調、過去の病気、アレルギー歴、使用中の薬、家庭環境などを確認して決めます。
👉 迷ったときは、持病や内服薬を把握しているかかりつけ医に相談するのが安心です。
まとめ
フルミスト®は、左右の鼻に噴霧する、針を使わないインフルエンザワクチンです。
- 対象は2歳以上19歳未満
- 左右の鼻に0.1mLずつ、合計0.2mLを噴霧する
- 接種は1シーズンに1回
- 注射型ワクチンとの間に、予防効果の明確な優劣は確認されていない
- 鼻水、鼻づまり、せき、のどの痛み、発熱などが起こることがある
- 持病、アレルギー、内服薬、同居家族の健康状態によっては接種できないことがある
- 接種後も元気であれば、接種したことだけを理由に保育園や学校を休む必要はない
- 接種後に受診するときは、フルミスト®を接種した日を医師へ伝える
注射が苦手な子どもにとって、フルミスト®は心強い選択肢です。ただし、すべての子どもに適しているわけではありません。
👉 「どちらが上か」ではなく、その子に安全で受けやすいワクチンを選ぶことが大切です。

