経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト®」について ― 小児科専門医が解説

経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト®」について ― 小児科専門医が解説

2025/10/03(金)

今年もインフルエンザワクチン接種のシーズンが始まりました。
これまで日本では注射型ワクチンが主流でしたが、2024年秋から新しく 鼻にスプレーするタイプのワクチン「フルミスト®」 が登場しました。

「注射が苦手な子どもに使えるの?」と期待される一方で、対象年齢や注意点があるため、接種できる人は限られています。ここでは、小児科専門医の立場から特徴や注意点、そして「どんな子にどちらが向いているか」をまとめます。


フルミスト®とは?

  • 対象年齢:2歳以上~19歳未満
  • 接種方法:鼻にスプレー(痛みはほとんどありません。)
  • 特徴:弱毒化した「生ワクチン」。鼻の奥で少し増えることで、自然感染に近い免疫をつける仕組み。

👉 「注射が苦手な子にとって、新しい選択肢になるワクチンです。」


フルミストで免疫がつく仕組み

従来の注射ワクチンは「不活化ワクチン(毒性のないウイルスの一部)」を使います。体の中に入ってもウイルスは増えませんが、抗体を作ることで守りをつけます。

一方フルミスト®は 「弱らせた生きたウイルス(生ワクチン)」 を使っています。

  • 鼻の奥(鼻粘膜)で実際に少しだけ増える
  • その結果、体が「自然感染に近い形」で反応し、免疫が作られる
  • 抗体だけでなく、鼻や喉の粘膜の免疫(局所免疫)も働く

つまり、注射型よりも 自然に近い免疫のつき方 をするのが特徴です。


副作用と注意点

  • よくある副作用:鼻水・鼻づまり、喉の痛み、軽い発熱。
  • 注意点
    • 接種後は鼻や喉からワクチンウイルスが出るため、免疫不全者との接触は1〜2週間避ける
    • 接種直後にインフルエンザ迅速検査をすると、ワクチン由来ウイルスで陽性になる可能性がある。

👉 「副作用や注意点を知っておくことで、安心して接種できます。」


フルミスト®を接種できない人

  • 2歳未満の乳幼児
  • 19歳以上の人
  • 重度の免疫不全がある人
  • 重い喘息や呼吸器疾患がある人
  • 過去にこのワクチンでアレルギー反応を起こした人

👉 「誰でも打てるわけではないので、事前に医師に相談しましょう。」


注射型 vs 経鼻型 ― 比較表

特徴注射型ワクチン経鼻型ワクチン
投与方法注射鼻スプレー
対象年齢生後6か月以上2歳以上~19歳未満
ワクチンの種類不活化(毒性のないウイルス)弱毒生(弱らせたウイルス)
メリット幅広い年齢に使用可能、効果安定注射不要、自然感染に近い免疫
デメリット注射の痛み接種対象が限定的、免疫不全者NG、検査で誤陽性あり

👉 「注射型と経鼻型、それぞれに長所と短所があります。」


どんな子に注射型・経鼻型が向いている?

経鼻型(フルミスト®)が向いているケース

  • 痛みが苦手な子ども
  • 2歳以上19歳未満で健康な子どもや思春期
  • 注射に強い恐怖心がある場合

👉 「注射が大きなストレスになる子には、経鼻型が助けになります。」

注射型(不活化ワクチン)が向いているケース

  • 2歳未満や19歳以上(対象外のため必然的に注射型)
  • 重い喘息や慢性呼吸器疾患を持つ子
  • 免疫不全や基礎疾患がある子
  • 家族に免疫不全の方がいる場合

👉 「持病がある子や幅広い年齢層には、注射型の方が安心です。」


まとめ

  • フルミスト®は 注射が苦手な子どもへの新しい選択肢
  • 鼻から投与することで自然感染に近い免疫を獲得できる。
  • ただし年齢や基礎疾患などで、接種できない人がいる点に注意。
  • 子どもの性格や健康状態、家族の状況をふまえて、かかりつけ医と相談して選びましょう

👉 「ワクチンは“どちらを選ぶか”よりも、“安心して続けられる方法を選ぶこと”が大切です。」