我が子に適した吸入薬、どう選ぶ?―小児科専門医が徹底解説

我が子に適した吸入薬、どう選ぶ?―小児科専門医が徹底解説

はじめに

これまでの記事では、

についてお話ししてきました。

今回は、親御さんがよく迷われる
「吸入薬の種類と選び方」 について、
小児科専門医の視点から分かりやすく解説します。

👉 吸入器の違いを知ると、治療の効果とやりやすさがグッと変わります。


✅ 吸入薬が必要な理由

小児喘息は、気道に炎症があることが本体の病気です。
飲み薬よりも、炎症が起きている気道に薬を直接届ける吸入薬の方が、

  • 少量でしっかり効く
  • 即効性がある
  • 副作用が少ない

という大きなメリットがあります。


✅ 吸入デバイスは大きく4種類

―― それぞれ「どんな子に合うか」を知ることが大切


MDI(エアロゾル)

代表薬:フルタイド、キュバール、アドエアエアロゾル、メプチンエア®

特徴

  • プッシュすると霧状の薬が勢いよく噴射
  • 小児には“押す→吸う”のタイミングが難しい
  • スペーサー併用が基本

スペーサー(エアロチャンバー® など)

代表例:エアロチャンバー、VORTEX、マスク付きスペーサー

特徴

  • 薬を一度ためてゆっくり吸える
  • 小児の「吸えていない問題」を大幅に改善
  • マスクタイプなら乳幼児でもOK

👉 吸入が不安なら、まずスペーサーを使うのが正解。


DPI(粉吸入:ディスカス・エリプタなど)

代表薬:アドエアディスカス、レルベア、ブリーズヘラー

特徴

  • 自分の吸う力で薬を吸い込むタイプ
  • タイミング合わせが不要で簡単
  • 吸う力が弱い年齢には向かない

ネブライザー(霧化式吸入器)

病院の急性期(発作時)治療で活用される吸入器。

特徴

  • 霧状の薬を長時間吸入する
  • 発作時の気道を広げたいときに有用

ただし、日常のコントローラー治療には不向き
理由:

  • 1回10〜20分と時間がかかる
  • しっかり咥えられないと吸入量が少ない
  • 家庭での運用・手入れが大変

👉 普段の管理は MDI+スペーサー or DPI。
ネブライザーは“急性期専門”と覚えてOK。


✅ 年齢に応じた「最適な吸入デバイス」

―― 年齢でできることが変わるから、吸入器も変わる


0〜2歳:MDI+スペーサー(マスク一択)

  • 吸う力が弱い
  • “吸う”を意識できない
  • マウスピースが咥えられない

👉 迷わずマスク型スペーサーでOK。泣いていても一定量吸えます。


3〜4歳:MDI+スペーサー(マスク → マウスピースへ移行期)

  • 少しずつ吸う動作が上達
  • できる子はマウスピースに移行可能
  • まだ個人差が非常に大きい

👉 診察で手技を確認しながらステップアップ。


5〜6歳:MDI+スペーサー or DPI(粉吸入)

  • 吸う力が強くなり、DPIが使える子が増える
  • タイミング不要で扱いやすい
  • 練習すれば上達しやすい

👉 デバイスを選べるようになる時期。


7歳〜:ほとんどの子がDPIを使える

  • 深く速く吸える
  • 携帯しやすく、学校でも使いやすい

👉 “自分でできる吸入”が身につき始める年齢。


✅ よくある失敗と「実は吸えていない」サイン

―― 正しい吸入は、治療効果の9割を左右します


❌ ① MDIでプッシュと吸入のタイミングが合わない

スペーサーで解決。
押したあと5〜10回ゆっくり呼吸でOK。


❌ ② DPIの吸う力が弱い

医療者前でチェック。
難しければ MDI+スペーサーに戻すのは正しい選択。


❌ ③ ICS後のうがい不足(口内炎・声かすれの原因)

吸入後はうがい必須。
できない年齢は飲水でもOK。


❌ ④ マスクの密着不足で漏れてしまう

鼻と口にしっかりフィットさせる。
ずれるようなら大人が固定。


❌ ⑤ “吸っているつもり”で実は吸えていない

必ず診察で手技チェック。
小さな改善で吸入量は大きく変わります。


✅ まとめ

  • 吸入薬は「吸う力」と「手技」で選ぶ
  • 乳幼児は MDI+スペーサー(マスク)
  • 5〜6歳以上で DPI(粉吸入) も選択肢に
  • ネブライザーは急性期用で、普段の管理には向かない
  • 正しく吸えてこそ治療効果が出る

👉 今日からデバイスを見直すだけで、治療がぐっと楽になります。