今年もインフルエンザワクチン接種のシーズンが始まりました。
前回の記事では、注射ではなく鼻から投与する「経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト®)」について解説しました。
今回は、「せっかくワクチンを打ったのにインフルエンザにかかってしまうのはなぜ?」という疑問について、小児科専門医の立場から説明します。
① ワクチンは“その年の流行予測”に基づいて作られる
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変化するため(抗原変異)、ワクチンは「今年どの型が流行しそうか」を世界中のデータから予測して作られます。
- WHO(世界保健機関)が年2回、南半球・北半球ごとに流行株を予測
- 日本では国立感染症研究所と厚労省がその情報をもとに、その冬に使う株を決定
- 製造は春から夏に行われ、秋から接種が始まる
予測と実際の流行がずれると、ワクチンの効果が十分に発揮されないことがあります。
👉 「インフルエンザワクチンは、その年の流行を“先読み”して作られるため、必ずしもぴったり合うとは限りません。」
② ワクチンは“感染をゼロにする”ものではない
インフルエンザワクチンは、感染そのものを100%防ぐわけではありません。
しかし、接種することで
- 高熱が長引きにくい
- 肺炎や脳症などの合併症を防ぐ
といった大きな効果があります。
👉 「ワクチンは“感染しないためのもの”ではなく、“重症化を防ぐためのもの”です。」
③ 免疫がつくまでに時間がかかる
接種後すぐに効果が出るわけではなく、2〜4週間ほどかけて免疫が作られます。
接種直後に感染すると「打ったのにかかった」と感じてしまうことがあります。
👉 「ワクチンは早めに接種してこそ効果を発揮します。」
④ 実はインフルエンザではないこともある
冬の発熱や咳の原因は、インフルエンザだけではありません。
RSウイルスやアデノウイルスなど、インフルエンザに似た症状を起こすウイルスはたくさんあります。
👉 「冬の発熱=必ずしもインフルエンザ、ではありません。」
まとめ
- インフルエンザワクチンは、その年の流行を予測して作られるため、効果にばらつきがある。
- 感染を完全に防ぐものではなく、重症化を防ぐことが最大の役割。
- 接種後すぐは効果が出ないので、早めの接種が安心。
「ワクチンを打ったのにかかった」と感じても、実際には 重症化のリスクから子どもを守っている のです。
ぜひ今年も、家族みんなで接種を検討してみてください。

