子どものステロイド外用薬ー副作用を避ける正しい使い方を小児科専門医が徹底解説

子どものステロイド外用薬ー副作用を避ける正しい使い方を小児科専門医が徹底解説

アトピー性皮膚炎の治療で最も使われる薬のひとつが「ステロイド外用薬」です。
ただ、初めて処方されたときに
「強い薬じゃないの…?」
「副作用が出たらどうしよう」
と不安になる親御さんはとても多いです。

実際、ステロイド外用薬には副作用があります。
“だからこそ”
安全に、正しく使うことが何より大切な薬 です。

この記事では、
ステロイドの強さ・量・塗り方・やめ時・副作用との向き合い方 を、
小児科専門医として親御さんにわかりやすく解説します。


✅ ステロイドには5段階の強さがある

炎症や部位に合わせて安全に使うための仕組み**

まず知っておきたいのは、
ステロイド外用薬には5段階の“強さ”がある ということです。

  • Ⅰ群(最強)
  • Ⅱ群(非常に強い)
  • Ⅲ群(強い)
  • Ⅳ群(普通)
  • Ⅴ群(弱い)

これは
炎症の深さ・部位の吸収率・年齢
などに合わせて、副作用を避けながら効果を出すための仕組みです。


ランク × よく使われる薬剤名(小児中心)

強さ薬剤名使用の目安
Ⅰ群(最強)デルモベート / ジフラールなど小児では特殊ケースのみ。ほぼ使わない。
Ⅱ群(非常に強い)フルメタ / アンテベート / ネリゾナ / マイゼロンなど子どもの“身体のしっかりした炎症”に多用される主力ランク。
Ⅲ群(強い)キンダベート / リンデロン/ ボアラなど中等度湿疹に使われるバランスの良いランク。
Ⅳ群(普通)ロコイド / アルメタ / リドメックスなど顔や首などデリケートな部位に使用。乳児にも使いやすい。
Ⅴ群(弱い)ヒドロコルチゾンなど顔の軽い炎症に使用。身体には弱すぎて効果不十分。

👉 ランク選択は 「効果」と「安全性」を両立させるための最重要ポイントです。


✅ なぜ“顔”には弱いステロイドしか使わないの?

親御さんにまず知ってほしいのは
塗る場所によって薬の吸収率がまったく違う
という事実です。

✅ 皮膚の吸収率は場所によって大きく異なる

一般的に…

  • 顔 → 薬が非常に入りやすい(腕の約6倍
  • 首 → 顔に近い吸収率
  • わき・陰部 → さらに吸収されやすい
  • 腕・脚 → 標準
  • 手のひら・足の裏 → 吸収されにくい

✅ だから同じ薬でも「塗る場所」で効果と副作用が変わる

たとえば身体に合う強さのステロイドを顔に塗ると、
薬が過剰に吸収され、副作用が起こるリスクが高まります

そのため

  • 顔 → Ⅳ群(普通)やⅤ群(弱い)
  • 身体 → Ⅱ群やⅢ群(中〜強め)
    と使い分ける必要があります。

✅ 「弱い薬=効かない」ではない

顔は薬を吸収しやすいため、
弱い薬でも十分効果を発揮する部位 です。

👉 顔に弱いランクを使うのは「治療が弱い」からではなく 安全性を守るための正しい選択です。


✅ ステロイドの量は“適量”が最重要

ステロイド外用薬の治療で最も多い失敗が
塗る量が少なすぎること
です。

量が少ないと治らず、逆に長期化して副作用のリスクが高まります。

✅ 塗る量の目安、FTUとは?

軟膏を塗る分量の目安として、FTU(フィンガーチップユニット)と呼ばれる単位があります。

大人の指先〜第一関節までの長さに出した軟膏(約0.5g)
大人の手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)に塗るのに適した分量になります。

また、ローションタイプの場合は1円玉大が1FTUの目安です。

✅ 家庭で一番わかりやすい目安

目安は、“ティッシュが軽く貼り付くくらい”しっとりする量です

  • すり込むように塗るのはNG
  • たっぷり皮膚に載せるように塗る事が大切

👉 適量を塗ることこそ 副作用を防ぐための最も重要なポイントです。


✅いつまで塗ればいい?

やめ時は“つるつるの手触り”が戻ったとき**

よくある誤解は
“赤みが消えたら中止”
という判断です。

見た目が良くなっても、炎症細胞は皮膚の奥に残っており、
ここでやめてしまうとぶり返しやすくなります。

✅ 正しいやめ時

赤みなし
+ ザラつきなし
+ 触るとつるつる

この3つがそろったら終了の合図です。

👉 炎症が残る状態でやめると再燃し、結果として長期間ステロイドを使うことになり副作用リスクが上がります。


✅ステロイド外用薬には副作用がある

だからこそ正しい使い方をする必要がある**

ステロイド外用薬には実際に副作用が存在します。

代表的なものは

  • 皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)
  • 血管が浮く
  • 色素脱失
  • ニキビ・毛包炎

などです。

✅ 副作用が起こりやすい“条件”

  • 強い薬を長期間、毎日塗り続けた場合
  • 顔に体用の強いステロイドを塗った場合
  • 少量で治らず炎症が長引いた場合
  • 医師に相談せず漫然と使い続けた場合

これらがそろうと副作用リスクは高まります。

✅ 正しい使い方は“副作用を防ぐ方法”

医師は
強さ × 部位 × 量 × 期間
を細かく調整して安全性を確保しています。

家庭では

  • 指示された量を
  • 指示された部位に
  • 指示された期間だけ使うこと
    が安全につながります。

👉 ステロイドは副作用が“あるからこそ”、正しく使うことで安全に使える薬です。


✅ステロイドを使うメリット

短期間で治し、長期の負担を減らす**

ステロイド外用薬の大きなメリットは
短期間で炎症を確実に抑えられること です。

  • かゆみが早く改善
  • 掻き壊しが減る
  • 睡眠が安定
  • 結果的に治療期間が短くなる

また、ステロイドで炎症を消しておくことで
タクロリムス(プロトピック)やコレクチムなどの
ステロイド以外の薬へ移行しやすくなるという利点もあります。

👉 炎症が強い時期にステロイドを適切に使うことで、むしろ治療は短く安全に進められます。


まとめ

  • ステロイド外用薬には5段階の強さがある
  • 顔や首は薬を吸収しやすい部位のため弱いランクを使用する
  • 塗る量は「FTU」+「ティッシュが貼り付くくらいのしっとり量」
  • やめ時は“赤み”ではなく“つるつるの手触り”
  • ステロイドには副作用があるため、正しい使い方で“副作用が起こる状況”を避ける
  • 短期間しっかり使うほど治療が早く終わり、子どもの生活が楽になる

👉 次回は ステロイド以外の外用薬(タクロリムス・コレクチム・モイゼルト・タピナロフなど)の特徴と使い分け をわかりやすく解説します。