赤ちゃんに飲ませるケイツーシロップってなに?― 小児科専門医がわかりやすく解説

赤ちゃんに飲ませるケイツーシロップってなに?― 小児科専門医がわかりやすく解説

はじめに

出産直後、助産師さんから「ケイツーシロップを飲ませますね」と言われたけど、
「それってどんな薬?」「副作用はないの?」と不安になった方も多いのではないでしょうか。

ケイツーシロップは、生まれたばかりの赤ちゃんの命を守るために大切なお薬です。
この記事では、なぜ必要なのか、いつ・どのように飲ませるのか、
そして親として知っておきたいポイントを、小児科専門医がやさしく解説します。


ケイツーシロップとは?

ケイツーシロップとは、**ビタミンK(K2)**を補うための甘いシロップです。
ビタミンKは血液を固めるために欠かせない栄養素ですが、赤ちゃんは次のような理由で不足しがちです。

  • 胎盤を通して十分にもらえない
  • 肝臓が未熟で血を固める成分をうまく作れない
  • 母乳にはビタミンKが少ない
  • 腸内細菌がまだ育っておらず、自分で作り出せない

このため、生後間もない時期には「ビタミンK欠乏性出血症(VKDB)」という出血の病気を防ぐ目的で、
全国の産院でケイツーシロップが使用されています。

👉 “見えない出血”を防ぐための予防薬、それがケイツーシロップです。


なぜ必要なの?

ビタミンKが足りないと、血が固まりにくくなり、
脳(頭の中)や消化管などで突然出血を起こすことがあります。

特に危険なのが「遅発型ビタミンK欠乏性出血症」です。
これは生後2週〜3か月ごろに起こりやすく、
健康そうに見えていた赤ちゃんが、ある日突然けいれんを起こすこともあります。

まれですが、命に関わったり、後遺症を残したりすることもあるため、
ケイツーシロップによる予防はとても重要です。

また、胆道閉鎖症などの肝胆道系疾患がある場合はビタミンKの吸収が悪く、
さらにリスクが高まります。
母子手帳についている「便の色カード」で便の色を確認するのも、早期発見につながります。

👉 「予防」が何よりの治療。だからこそ、定期的なケイツー投与が欠かせません。


ケイツーシロップの与え方

日本では、主に2つの方法で行われています。

① 3回法

  • 出生直後(哺乳が安定したころ)
  • 退院時(または生後1週)
  • 1か月健診時

② 3か月法

  • 哺乳が安定したころに1回目
  • その後、生後3か月まで週1回(合計13回)

研究では、3か月法を行った場合、頭蓋内出血の報告がほとんどないことがわかっており、
現在では3か月法が推奨されています。

👉 毎週の“ケイツータイム”が、赤ちゃんの安全を守る習慣に。


飲ませ方のコツ

ケイツーシロップは甘くて飲みやすい液体です。
スポイトやシリンジで授乳前後に少しずつ口へ垂らすだけでOKです。

もし吐き戻してしまっても、少し時間をおいてから再度あげて構いません。
1回分を忘れてしまっても、次回以降きちんと飲めれば大丈夫です。

👉 “完璧”よりも“続けること”が大切。焦らずリズムを作って。


副作用はあるの?

これまでの研究で、ケイツーシロップによる重大な副作用は報告されていません。
むしろ飲ませなかった場合の方が、出血のリスクは圧倒的に高いです。

母乳育児でもミルク育児でも、どちらの赤ちゃんにも安全に使えるお薬です。

👉 安全性が高く、長年にわたり日本中の赤ちゃんを守ってきた信頼のあるお薬です。


いつまで続ける?

基本的には生後3か月ごろまでが目安です。
母乳育児の赤ちゃんでは特に重要で、
一方でミルクにはビタミンKが含まれているため、医師の判断で早めに終了することもあります。

👉 “卒業のタイミング”はお子さんの栄養スタイルによって変わります。


まとめ

  • ケイツーシロップは、赤ちゃんの出血リスク下げる大切なお薬
  • 生まれたばかりの赤ちゃんはビタミンKが不足しがち。
  • 「3か月法」でより確実にビタミンK欠乏性出血を予防できる。
  • 吐き戻し・飲み忘れも焦らず対応を。
  • 便の色カードを使って、胆道閉鎖症などのサインにも気づこう。

👉 ケイツーシロップは“予防の第一歩”。
毎週のケアが、未来の安心につながります。