川崎病ってどんな病気?ー親が知っておくべきポイントを小児科専門医が解説

川崎病ってどんな病気?ー親が知っておくべきポイントを小児科専門医が解説


はじめに

「川崎病」という名前を初めて聞く親御さんも少なくありません。

川崎病は、乳幼児なら誰にでも起こりうる病気で、
入院して治療を受ける必要がある代表的な疾患のひとつです。

多くのお子さんは適切な治療で順調に回復しますが、
特に大切なのは治療のタイミングです。

この記事ではまず、川崎病とはどのような病気なのか、
最初に知っておきたい基礎知識をやさしく解説します。

👉 川崎病は“知っていれば早く気づける病気”。まずは基本だけ押さえておきましょう。


川崎病の診断基準(主要6項目)

川崎病には、診断の手がかりとなる6つの主要症状があります。

  • 発熱
  • 白目(結膜)の充血
  • 唇の赤み・乾燥、いちご舌
  • 手足の赤み・腫れ→解熱後に指の皮がむける(膜様落屑)
  • 体の発疹
  • 首のリンパ節の腫れ

このうち、
**6項目中5項目以上がそろえば「典型的な川崎病」**と診断します。

ただし実際には、
受診時点では症状がすべて出そろっていないことが多く、注意が必要です

👉 「今日は2〜3つしか当てはまらなくても、翌日にはもっと揃う」そんな経過もよくあります。


川崎病は血管炎の病気。細い血管ほど症状が出やすい

川崎病の本体は、**全身の血管に炎症が起こる「血管炎」**です。

特に炎症が出やすいのは、
細い血管(毛細血管)が多い場所

そのため、

  • 白目の充血
  • 唇や舌の赤み
  • 手足の赤み・腫れ
  • 体の発疹

といった “川崎病らしい” 所見が表れます。

👉 症状の出方には理由があり、毛細血管が多い場所ほど炎症が目立ちやすいのが特徴です。


冠動脈に炎症が及ぶと…冠動脈瘤のリスクがある

全身の血管が炎症を起こす中で、特に注意したいのが**心臓の血管(冠動脈)**です。

川崎病では、

  • 第6〜8病日:血管の中層が弱くなり始める
  • 第8〜10病日:炎症が強まり血管壁が傷む
  • 第10〜12病日:脆くなった部分が膨らみ、冠動脈瘤が形成される

という経過をたどります。

もっとも冠動脈瘤ができやすいのは“発熱10日前後”

だからこそ、

遅くとも“第7病日まで”に治療を開始することが重要

です。

冠動脈瘤ができてしまうと、血管内に血栓ができやすくなり、
心筋梗塞につながる可能性があるため、
治療タイミングが最も重視されます。

👉 川崎病の治療は“早さ”がとても大切です。


不全型川崎病:症状が揃わなくても治療が必要なことがある

川崎病には、典型的な6項目がすべてそろわない「不全型」もあります。

たとえば主要症状が3〜4つでも、

  • 心エコーで冠動脈の拡大が見つかった場合

には、川崎病として治療を開始します。

症状の揃い方だけで判断して治療が遅れると、
冠動脈への炎症が進み、瘤のリスクが高くなってしまうためです。

👉 “症状の数”よりも“冠動脈の状態”が診療上は何より大切です。


まとめ

  • 川崎病は乳幼児に多い血管炎の病気
  • 診断は主要6項目のうち5項目以上が目安
  • 細い血管に炎症が出やすく、結膜・口唇・手足の所見が特徴
  • 冠動脈瘤は発熱10日前後に形成されやすい
  • 瘤を予防するため、7日目までに治療を開始したい
  • 症状が揃わない不全型では、冠動脈所見があれば治療を行う
  • 冠動脈瘤が形成されると血栓ができやすく、心筋梗塞の危険がある

👉 次回は 「川崎病の症状と診断の流れ」 をさらに具体的に解説します。