前回の記事で「子どもの睡眠障害」について触れた際に、乳児期の代表的な現象として コリック(乳児疝痛) を簡単に紹介しました。
今回は、そのコリックについてさらに詳しく取り上げ、親御さんに知っていただきたいことをまとめます。
目次
コリックってなに?
赤ちゃんは泣くのが仕事、とよく言われます。でも「授乳しても、おむつを替えても、抱っこしても泣き止まない」――そんな経験をした親御さんも多いはずです。
生後2週〜4か月ごろに見られる 理由の分からない激しい泣き を「コリック」と呼びます。特に夕方から夜にかけて泣き続けるのが特徴で、日本では「黄昏泣き」とも呼ばれています。
👉「コリックは病気ではなく、多くの赤ちゃんに見られる一過性の通過点です。」
コリックの「3の法則」
国際的に広く共有されている目安が「3の法則(rule of threes)」です。
- 1日3時間以上 泣く
- 週3日以上 続く
- 3週間以上 繰り返す
この条件に当てはまる場合、医学的にも「コリック」と表現されることが多いです。
👉「“3の法則”は、親御さんが『これはコリックかもしれない』と気づくための一つの目安です。」
夜泣きとの違い
「夜になると泣く」という点で、コリックと夜泣きは混同されがちです。しかし実際には 時期・性質・対応 に大きな違いがあります。
- 時期の違い
- コリックは 生後2週〜4か月 に多く見られます。
- 夜泣きは 生後6か月以降 に目立ち始め、1歳を過ぎても続く子もいます。
- 泣き方の違い
- コリックは、夕方から夜にかけて 突然激しく泣き出し、顔を真っ赤にして長時間続く のが特徴です。
- 夜泣きは、夜間に何度も目を覚まし ぐずぐずと泣いたり、授乳や抱っこで比較的落ち着く ことが多いです。
- 経過の違い
- コリックは 3〜4か月で自然に改善 することがほとんど。
- 夜泣きは生活リズムや発達に影響され、時期によって強く出たり弱くなったりを繰り返します。
👉「コリックは“成長初期の泣きのピーク”、夜泣きは“その後の睡眠リズムの乱れ”と整理すると理解しやすいです。」
コリックが起こる理由
コリックの原因は明確には解明されていませんが、複数の要因が組み合わさっていると考えられます。
- 腸の未熟さ:ガスがたまりやすく、お腹の張りが不快感を生む。
- 自律神経の未発達:昼夜の区別がつかず、刺激の処理が未熟で泣きに結びつく。
- 環境的要因:夕方の疲れや、部屋の明るさ・音・暑さなどが重なりやすい。
👉「体・心・環境の要因が重なって起きるのがコリック。赤ちゃんの成長過程で自然に現れる反応です。」
親御さんができる工夫(3つのアプローチ)
1. 抱っこと姿勢
- 抱っこやおんぶで安心感を与える
- 「コリック抱き」(赤ちゃんをうつ伏せに抱き、お腹を軽く圧迫する姿勢)が有効なことも
2. お腹を楽にするケア
- 授乳後のげっぷをしっかり
- 足を軽く曲げてお腹を押すポーズでガスを出しやすくする
3. 環境を整える
- 部屋を暗く静かにして刺激を減らす
- 室温や衣服を調整して快適にする
- 母乳の場合はお母さんの食事を工夫する(乳製品を控えるなど)
👉「“抱っこ・お腹・環境”の3つを意識して、赤ちゃんに合った工夫を探してみましょう。」
親御さん自身のセルフケア(3つの支え)
- 気を張りすぎない
赤ちゃんを安全な場所に寝かせ、数分離れて深呼吸。気持ちを整えることは育児を続けるうえで大切です。 - 家族に頼る
パートナーや祖父母に協力をお願いして、短時間でも休息をとる。 - 専門家につなぐ
小児科や助産師、保健師に相談して安心を共有。必要に応じてアドバイスを受ける。
👉「“自分・家族・専門家”の3方向からの支えが、親御さんの心を守ります。」
小児科医からのまとめメッセージ
- コリックは 予後良好な一過性の現象 で、多くの赤ちゃんに見られます。
- 「3の法則」を知っておくと、親御さんが冷静に受け止めやすくなります。
- ただし、まれに病気が隠れていることもあります。
「いつもと違う泣き方」「発熱・嘔吐・血便・吐き戻し」を伴う場合は、必ず小児科を受診してください。 - 親御さん自身の休養もとても大切です。
👉「泣き止まないのは親御さんのせいではありません。コリックは通過点。安心して、無理せず、周囲に頼りながら乗り越えていきましょう。」

