子どもの自殺が増えている現実― 小児科専門医が伝えたい現状と課題

子どもの自殺が増えている現実― 小児科専門医が伝えたい現状と課題

はじめに

「子どもの自殺が増えている」

ニュースで見聞きしたことはあっても、
どこか自分の家庭とは距離のある話だと感じていないでしょうか。

しかし、最新のデータは、
どの家庭にも無関係ではない現実を示しています。

👉 この問題は「特別な家庭の話」ではありません。


子どもの自殺は、確実に増えている

日本では、社会全体での自殺者数は減少してきました。
ところが、子どもの自殺だけは減っていません

2024年、児童生徒の自殺者数は 529人
これは、これまでで最も多い人数です。

さらに重要なのは、

  • コロナ禍だけが原因ではない
  • 2017年頃から、毎年少しずつ増え続けている
  • 特に女子中高生の増加が顕著

という点です。

👉 一時的な出来事ではなく、長く続く変化が起きています。


半数が「原因不明」という現実

文部科学省の調査では、
子どもの自殺の 約半数が「原因不明」 とされています。

記録上は、

  • 普段と変わらない様子だった
  • 悩みを抱えているように見えなかった

とされています。

これは裏を返せば、
誰にもSOSを出せないまま命を絶っている子どもが多い
ということです。

👉 「突然」ではなく、気づかれなかっただけかもしれません。


「いじめ」だけが原因ではありません

子どもの自殺というと、
どうしても「いじめ」が思い浮かびます。

もちろん、いじめは重大な問題です。
しかし実際には、原因はもっと身近で、複雑です。

小学生で多い背景

  • 親からのしつけ・叱責
  • 親子関係の不和
  • 孤独感

中学生で増える悩み

  • 成績が伸びない
  • 進路への不安
  • 友だちとのトラブル(いじめと認識されないもの)

高校生になると

  • 学業・進路のプレッシャー
  • 女子では うつ病などの精神的な不調

👉 どれも、特別な家庭だけに起こる問題ではありません。


女の子に多い「見えにくい苦しさ」

近年の特徴として、
女子中高生の自殺の増加がはっきりとみられます。

注目すべきは、
「学友との不和(いじめ以外)」が原因として多い点です。

  • 表立ったいじめではない
  • でも逃げ場がない
  • 本人にとっては深刻

大人の感覚では軽く見えてしまうことも、
子どもにとっては大きな苦しさになります。

👉 子どもの世界のつらさは、大人の尺度では測れません。


SOSは「出し方」より「受け止め方」

学校では
「困ったときは相談しよう」という
SOSの出し方教育が行われています。

とても大切な取り組みです。

ただし、子どもが勇気を出して話したときに、

  • 否定される
  • 説教される
  • すぐに正論を返される

と、次はもう話してくれなくなります。

👉 SOSは、受け止めてもらえる経験があって初めて出せるようになります。


デジタル支援だけでは足りない

最近は、

  • タブレットでの心の健康チェック
  • SNS相談窓口

なども整備されつつあります。

一方で、
オンラインだけでは大人が変化に気づきにくくなる
という側面もあります。

まず必要なのは、
身近な大人がそばで気づき、関わることです。

👉 対面の関係が土台にあってこそ、デジタル支援は生きます。


変わるべきなのは、子どもではなく大人

「最近の子どもは弱い」
「もっと強くなるべきだ」

そんな言葉を耳にすることがあります。

しかし、子どもの自殺が増えている現実は、
子どもが弱いからではありません

  • 話を聞けていたか
  • 気づけていたか
  • 安心できる存在だったか

👉 問われているのは、大人側の姿勢です。


親として、今日からできること

特別なことをする必要はありません。

  • 表情や言葉の変化に少し気づく
  • 「どうだった?」より「どんな気分だった?」
  • すぐに結論を出さず、まず聞く

それだけで、
子どもにとっては大きな支えになります。

👉 「話してもいい大人」が一人いることが、何よりの予防になります。


まとめ

  • 子どもの自殺は増え続けている
  • 原因不明が半数を占める
  • どの家庭にも起こりうる問題
  • SOSを受け止める大人の存在が不可欠

👉 子どもの命を守る鍵は、日常の中にあります。