目次
はじめに
子どもは、大人が「これは安全」と思っているものほど、興味を持って触ったり口に入れたりします。
家庭の中は安心な場所である一方、乳児・幼児にとっては “中毒を起こす危険物がたくさんある環境” でもあります。
しかし、中毒の多くは
「危険を知っておく」
「いざというときに落ち着いて対応する」
この2つで重症化を防ぐことができます。
まず最初に、家庭用品での中毒に共通する 対応の三原則 をお伝えします。
【対応の三原則】
✔ 吐かせない
無理に吐かせる事で嘔吐物が肺に入り、呼吸困難や肺炎を引き起こす危険性が高まります。
✔ 洗う
口・皮膚・目についたものは「まず流水で洗う」ことが最も安全で効果的です。
✔ 不安なら受診
症状がなくても、危険物であれば受診すべきケースが多くあります。
中毒になりうる家庭用品
ここからは、家庭で起こりやすい中毒を、それぞれ解説します
乾燥剤(石灰乾燥剤・シリカゲル)
●危険ポイント
石灰乾燥剤は強いアルカリ性で、口や喉を“薬傷”のようにただれさせることがあります。
一方、シリカゲルや脱酸素剤は多くが無毒ですが、誤嚥による咳き込みには注意が必要です。
●対応
① まず確認すること
- 外袋に 「石灰/CaO/禁水」 と書かれているか
- 湿気取りの“白い粒”か、青または透明のシリカゲルか
- 飲んだ量や、口の中に残っているか
② やっていいこと
- 口をしっかりすすぎ、舌・頬・歯茎に粒が残っていないか確認
- 飲んですぐなら、口の中の粒を指でやさしく除去
- シリカゲルの場合は水分を少量飲ませてもよい
③ やってはいけないこと
- 石灰乾燥剤は絶対に吐かせない(強アルカリで更なる損傷)
- 牛乳を飲ませて“中和しようとする”行為(逆効果)
④ 受診の目安
- 口の痛み・赤み・腫れ
- よだれが多い、飲み込むと痛そう
- 石灰乾燥剤を飲んだ可能性が高い場合は無症状でも受診
芳香剤・消臭剤(置き型・液体)
●危険ポイント
置き型は主にゲル状で軽症が多いですが、液体タイプはエタノールや界面活性剤を含むため、
眠気・興奮・粘膜刺激・誤嚥による肺炎 といった症状を起こすことがあります。
●対応
① まず確認すること
- 製品が液体か置き型か
- 誤飲量(口に含んだだけか、飲み込んだのか)
- エタノール(アルコール)や界面活性剤の表記の有無
② やっていいこと
- 口を数回すすぎ、味やしみる様子を観察
- 皮膚についた場合は石鹸で洗い流す
- 目に入った場合は10〜15分ほど流水で洗眼
③ やってはいけないこと
- 大量に誤飲したのに様子をみてしまう。
- スプレー製品を吸い込んだ直後の“深呼吸”
- 牛乳などで薄める行為(吸収が早くなる可能性)
④ 受診の目安
- 顔が赤い、眠そう、興奮して落ち着かない
- 何度も咳き込む・むせる
- 液体を“飲んだ可能性が高い”場合は早めに受診
殺虫剤(液体蚊取り・スプレー)
●危険ポイント
液体蚊取りの主成分には 石油系溶剤 があり、誤飲すると肺に入り化学性肺炎を引き起こすことがあります。
スプレーは吸い込み事故にも注意が必要です。
●対応
① まず確認すること
- 製品が “液体蚊取り” か “線香” か
- 飲んだ量、口に触れた時間
- 目や皮膚に付着していないか
② やっていいこと
- 口をしっかりすすぐ
- 皮膚についた場合は石鹸で洗う
- 部屋の換気を行う
③ やってはいけないこと
- 吐かせること(肺に入り重症化の原因)
- 甘い飲み物を飲ませて“流す”行為
- 強い咳のときの様子見
④ 受診の目安
- 咳き込み、息苦しさ
- 嘔吐・腹痛
- 液体蚊取りを飲んだ“可能性がある”時点で受診推奨
電池(コイン型リチウム電池)
●危険ポイント
コイン型リチウム電池は 2時間ほどで粘膜を溶かすほどの危険物。
症状がなくても進行し、重症化します。
●対応
① まず確認すること
- 電池が1つ足りない、外れた可能性がある
- 子どもがくわえていた・遊んでいた形跡
- 同じ大きさのおもちゃ部品と紛らわしくないか
② やっていいこと
- 何も飲ませず、即受診!
(病院でレントゲンを撮り位置を確認します)
③ やってはいけないこと
- 食べ物・飲み物を与える
- 様子を見る
- 家で吐かせる
④ 受診の目安
- 疑った瞬間に受診。症状は関係なし
衣類用防虫剤(樟脳・ナフタレン)
●危険ポイント
樟脳は神経症状、ナフタレンは溶血を起こすことがあり、少量でも危険です。
●対応
① まず確認すること
- 成分が「樟脳」「ナフタレン」か「パラジクロロベンゼン」か
- 形状(粒・板状)
- 飲んだ量
② やっていいこと
- 口をすすぐ
- 水は飲ませてもよい
- 皮膚についた場合は洗う
③ やってはいけないこと
- 牛乳を飲ませる(吸収を早める可能性)
- 眠そう・ぐったりしているのに様子見
④ 受診の目安
- 嘔吐・ぐったり
- 顔色が悪い
- 樟脳・ナフタレンを飲んだ可能性がある時点で受診
ホウ酸ダンゴ
●危険ポイント
ホウ酸による 吐き気・顔の赤み・興奮・下痢 など。
●対応
① まず確認すること
- 自家製か、市販か(自家製はより危険)
- どれくらいの量が減っているか
- 口の周りに付着がないか
② やっていいこと
- 口をすすぐ
- 水・牛乳はどちらもOK
- 手や顔についたホウ酸を洗い流す
③ やってはいけないこと
- 自宅で“時間を置く”
- 下剤や大量の水で流そうとする行為
④ 受診の目安
- 嘔吐・顔の赤み
- 興奮・落ち着かない様子
- 大量摂取の可能性
漂白剤(塩素系)
●危険ポイント
強アルカリで粘膜を傷つけ、誤嚥すると重症化します。
目に入る事故も非常に多い家庭用品です。
●対応
① まず確認すること
- 原液か希釈か
- 飲んだ量、口に触れた時間
- 目・皮膚へ付着の有無
② やっていいこと
- 口をしっかりすすぐ
- 皮膚・目は10分以上洗い続ける
- 水・牛乳を少量飲ませてよい
③ やってはいけないこと
- 吐かせることは絶対にNG
- 酢やレモンで“中和”しようとする(有毒ガスの危険)
④ 受診の目安
- 口の痛みが続く
- 嘔吐
- 原液を飲んだ可能性
- 目に入り痛みが強い
石油製品(灯油)
●危険ポイント
飲み込んだ量がわずかでも 誤嚥性肺炎 を起こすことがあり、家庭用品の中でも特に危険です。
●対応
① まず確認すること
- 飲んだのか、吸ったのか
- 量や付着の有無
- 嘔吐していないか
② やっていいこと
- 口の残りを拭い取る
- 服や皮膚についた灯油を洗い流す
③ やってはいけないこと
- 吐かせる(危険性最大)
- 水分を飲ませる
- 自宅での長時間観察
④ 受診の目安
- 咳き込み
- 息苦しさ
- 嘔吐
- 飲んだ疑いだけでも受診推奨
食器用洗剤
●危険ポイント
界面活性剤による吐き気・下痢・咳き込み。
大量では誤嚥のリスクが上がります。
●対応
① まず確認すること
- 原液か薄めたものか
- 飲んだ量
- 目や皮膚への付着有無
② やっていいこと
- 口・皮膚・目を丁寧に洗う
- 水・牛乳どちらもOK
③ やってはいけないこと
- 大量誤飲の様子見
- 無理に吐かせる
④ 受診の目安
- 嘔吐が続く
- 咳き込み・呼吸苦
- 大量摂取
染毛剤(ヘアカラー・ブリーチ)
●危険ポイント
過酸化水素・アンモニアなど刺激の強い成分 → 口腔内の痛み・嘔吐・喉の炎症。
●対応
① まず確認すること
- 触れた液が1剤か2剤か(濃度が異なる)
- 目・皮膚に付着していないか
② やっていいこと
- 口・皮膚をしっかり洗う
- 匂いが強い場合は換気
③ やってはいけないこと
- 吐かせる
- 家庭で“薄めて中和しよう”とする
④ 受診の目安
- 口や喉の痛みが強い
- 嘔吐
- 飲んだ可能性が高い
マウスウォッシュ
●危険ポイント
商品によってはアルコールを含む → 乳幼児では少量でも酩酊・嘔吐・低血糖を起こすことがあります。
●対応
① まず確認すること
- アルコール濃度
- 飲んだ量
② やっていいこと
- 口をしっかりすすぐ
- その後しばらく眠気やふらつきがないか観察
③ やってはいけないこと
- 飲み物を与えて薄めようとする
- 自宅で半日以上様子を見る
④ 受診の目安
- 眠そう、ふらつき、嘔吐
- 顔の赤み、呼びかけに反応が鈍い
アロマディフューザー液
●危険ポイント
精油・アルコール・界面活性剤による粘膜刺激。
吸い込み・誤飲どちらにも注意が必要です。
●対応
① まず確認すること
- 成分表(精油濃度、アルコール含有)
- 誤飲か、吸い込みか、皮膚接触か
② やっていいこと
- 口・皮膚の洗浄
- 室内の換気
③ やってはいけないこと
- そのまま寝かせる(呼吸状態の変化に気づきにくい)
④ 受診の目安
- 嘔吐
- 眠気
- 呼吸が苦しそう
新型コロナ抗原キットの液体
●危険ポイント
アジ化ナトリウムを含む製品があり、少量でも中毒の可能性。
●対応
① まず確認すること
- 試薬の液が直接口に入ったか
- 触れた場合、手を舐めていないか
② やっていいこと
- 口・皮膚を洗う
- 手洗いを徹底する
③ やってはいけないこと
- 様子見のみで放置
④ 受診の目安
- 嘔吐
- ぐったり
- 呼吸状態の変化
スライム(ホウ砂入り)
●危険ポイント
ホウ酸による消化器症状・神経症状。
市販より“自作スライム”の方が濃度が高く危険度が上がります。
●対応
① まず確認すること
- 市販か自作か
- 色や匂いの変化はないか
② やっていいこと
- 口をすすぐ
- 水・牛乳はどちらもOK
- 皮膚についた部分を洗う
③ やってはいけないこと
- 大量摂取の様子見
- 無理に吐かせる
④ 受診の目安
- 嘔吐
- 顔の赤み
- ぼんやりしている
シャボン玉・水溶性クレヨン
●危険ポイント
界面活性剤による嘔吐や咳。
大量では誤嚥性肺炎のリスク。
●対応
① まず確認すること
- 飲んだ量
- 目や皮膚についたか
② やっていいこと
- 口・皮膚をしっかり洗う
- 水・牛乳は少量ならOK
③ やってはいけないこと
- 大量摂取の様子見
- 激しい咳なのに家で待つこと
④ 受診の目安
- 嘔吐が続く
- 呼吸が苦しそう
- 大量に飲んだ可能性
おわりに
家庭用品の中毒は、「知っているだけ」で守れる命があります。
どれも日常生活でよく使うものばかりですが、対応の三原則と、各物質の危険性を知っておくことで、万が一のときにも落ち着いて行動できます。

