目次
はじめに
子どもの誤飲事故は、「一瞬」で起こります。
そしてその多くは、親御さんがどれだけ注意していても完全には防げない事故です。
なぜなら、子どもは日々成長し、昨日までできなかったことを突然できるようになるから。
大人が想像する以上のスピードで、世界の探索範囲を広げていきます。
だからこそ誤飲を防ぐために必要なのは、親がずっと緊張して見守ることではなく
環境そのものを安全に整えておくこと。
この記事では、小児科専門医の視点から、
家庭で今日からできる誤飲予防の方法を、親御さん目線に寄り添って丁寧に解説します。
誤飲は「成長」とともに起こる
― 昨日安全でも、今日安全とは限らない
誤飲は親の不注意ではなく、子どもがしっかりと発達しているが故に起こります。
◆ 生後5〜6か月
- つかんだ物をなんでも口へ
⚠ 床の小さなゴミも危険に
◆ 生後8〜9か月
- ハイハイで行動範囲が一気に拡大
⚠“少し奥”に置いた物が取られる
◆ 1歳前後
- つかまり立ち・伝い歩き
⚠ 机や棚の上も安全ではなくなる
◆ 2歳前後
- 引き出しを開ける
- 台を押してよじ登る
⚠ 片付けていても届いてしまう
👉 子どもが成長するほど“家の安全ゾーン”は塗り替えられます。
「見ていれば防げる」は間違い
― 見ている目の前でも起こるのが誤飲事故
子どもは大人の想像よりもずっと早く動き、
親が反応する前に口に入れてしまうことがよくあります。
24時間見守り続けるのは誰にとっても不可能。
だからこそ、親の注意力に頼るのではなく、
“事故が起きにくい環境にする”ほうが圧倒的に現実的で効果的です。
👉 見守りに限界があるからこそ、環境を整える価値があります。
今日からできる誤飲予防
①「口に入るサイズ」を知るだけで事故は減る
子どもが大きく口を開けたときに入る大きさは
約 39mm × 51mm。
このサイズ以下の物は、すべて誤飲の危険があります。
危険サイズの代表例
- ボタン電池
- 硬貨
- LEGO®などの細かいパーツ
- ビーズ・アクセサリー部品
- 乾燥剤
- タブレット薬
トイレットペーパーの芯を通して確認するのが手軽でおすすめ。
通るものは、子どもの口にも入ります。
👉 “サイズで判断する”習慣があるだけで、誤飲は大幅に減らせます。
②「手の届く高さ」を大人目線で判断しない
子どもの手の届く範囲は、大人が思うよりずっと広いです。
- 1歳:約90cm
- 2歳:約110cm
- 3歳:約120cm
さらに、
- 台や椅子を動かす
- 引き出しを踏み台にする
など、“工夫して取る能力”がついてきます。
実は危険な場所
- キッチンカウンターの奥
- リビング棚の中段
- 洗面所の化粧品置き場
- テーブル真ん中の薬やサプリ
高い場所=安全は通用しません。
👉 “子どもの目線”で家を見ると、意外な危険が見えてきます。
③全部を完璧にするのは難しい。まずは「優先順位」をつける!
誤飲を完全にゼロにする必要はありません。
重要なのは、重篤化しやすいものから対策すること。
最優先で対策すべき危険物
- ボタン電池
- 成人用医薬品(1錠でも危険なものがある)
- タバコ・加熱式タバコ
- ジェルボール洗剤
- 除草剤・防虫剤
- アルコール・消毒液
これらは、
「子どもが興味を持ちやすい」+「誤飲時の影響が大きい」
という共通点があります。
👉 完璧を目指さず“危険度の高い物から守る”のが現実的で続けやすい方法です。
危険物別の具体的な対策
ボタン電池
- 新品も使用済みもパッケージごと高所へ
- 電池交換は子どもの前でしない
- 電池カバーが開かない製品を選ぶ
👉 ボタン電池は「置かない・見せない・触らせない」が基本。
ジェルボール洗剤
- 必ず専用ケースへ収納
- 使用後はすぐ戻す
- 洗面所に踏み台を置かない
👉 視界に入れるだけで“キャンディ”と誤認する子もいます。
成人用医薬品
- 子どもの前で薬を飲まない
- 必要量だけ取り出す
- 容器はすぐ閉める
👉 薬は“隠すより触れさせない”が鉄則です。
タバコ・加熱式タバコ
- 未使用スティックも吸い殻も必ず高所へ
- 灰皿の液体を放置しない
👉 吸い殻の液体は特に危険。絶対に手の届かない場所に。
まとめ
誤飲予防は、親御さんの注意力に負担をかける必要はありません。
必要なのは、
「子どもの発達を知り、環境を整える」というシンプルな視点。
- ① 口に入るサイズを基準に物を判断する
- ② 子どもの手の届く高さを正しく知る
- ③ 危険度の高い物から優先的に管理する
これだけで、誤飲事故のリスクは大きく下がります。
👉 誤飲予防は“頑張る育児”ではなく、“仕組みで守る育児”。お子さんが安心して過ごせる環境づくりの一助になれば嬉しいです。

