はじめに
赤ちゃんが指をしゃぶる姿、かわいいですよね。
でも、「このまま続けて大丈夫?」「歯並びに影響しない?」と心配する親御さんも多いはず。
実は、指しゃぶりは赤ちゃんの発達の中でとても自然な行動です。
ただし、年齢や強さによっては歯や口の発達に影響することもあるため、
“やめさせる”よりも“上手に見守る”ことが大切です。
👉 今回は「いつまでならOK?」「どんな時に注意が必要?」を中心に、小児科専門医の立場から解説します。
指しゃぶりはなぜするの?
赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるとき(妊娠20週頃)から、すでに指をしゃぶっています。
これは吸啜(きゅうてつ)反射という、生まれてからおっぱいやミルクを飲むための大切な練習。
生まれたあとは、授乳のあとに眠る前や不安なときに吸うことで安心感を得ています。
このとき脳内では「βエンドルフィン」という物質が分泌され、
リラックス効果や満足感を感じることがわかっています。
👉 指しゃぶりは「癖」ではなく、赤ちゃんが自分を落ち着かせるための行動なのです。
いつまでなら大丈夫?
3歳頃までは、ほとんどの子どもにとって自然な発達の一部と考えられています。
この時期の指しゃぶりは、「安心したい」「眠りたい」といった気持ちを表すもので、
無理に止める必要はありません。
ただし、4歳を過ぎても頻繁に吸っている場合は、
歯や顎の発達への影響が出てくる可能性があります。
- 上の前歯が前に出る(出っ歯)
- 噛み合わせが合わない(開咬)
- 発音がしにくくなる(タングスラスト)
- 口呼吸になりやすい
こうした影響は、長期間・強く吸う場合に起こりやすいとされています。
👉 3歳までは見守りでOK、4歳以降は**「徐々に卒業」を目指す時期**と考えましょう。
無理にやめさせないで
指しゃぶりは“安心のサイン”。
「恥ずかしい」「ダメなこと」と決めつけてしまうと、
かえって別の癖(爪を噛む、服の裾を口に入れるなど)に置き換わることがあります。
特に夜寝る前や不安なときに指を吸うのは、心を落ち着かせるための自然な自己調整です。
叱るのではなく、
「眠たくなったんだね」「がんばったね」と声をかけてあげることで、
安心感が生まれ、少しずつやめたい気持ちが育ちます。
👉 指しゃぶりは“叱ってやめさせる”ものではなく、“安心で卒業を促す”ものです。
やめるきっかけをつくる工夫
4~5歳頃になると、子ども自身が「もう赤ちゃんじゃない」と意識し始めます。
この時期に自然にやめられるよう、親御さんができる工夫を紹介します。
- 絵本を読み聞かせながら手をつないで寝る
- 指に可愛いシールを貼って「しゃぶらなかった日」を一緒に数える
- 指しゃぶりをしなくても安心できる時間を増やす(抱っこ・会話・スキンシップ)
夜間だけ無意識に吸ってしまう場合は、柔らかい手袋をつけるなども一つの方法です。
ただし、本人の納得を得てからにしましょう。
👉 「やめなさい」ではなく、「一緒にやめていこうね」の気持ちで寄り添うことが大切です。
指しゃぶりとおしゃぶり
おしゃぶりも吸うことで安心感を得る点では同じですが、
2歳を過ぎて長く使い続けると、歯並びに影響する可能性があります。
指しゃぶりと同様、2歳半~3歳ごろを目安に少しずつ卒業を。
使用する際は清潔を保ち、むし歯や口の感染に注意しましょう。
相談の目安
次のような様子がある場合は、小児科や歯科に相談しましょう。
- 4歳を過ぎても頻繁に指しゃぶりをしている
- 前歯が噛み合わない、歯が前に出ている
- 発音が気になる(特に「さしすせそ」など)
- 口呼吸が多い
小児歯科では歯列のチェックだけでなく、舌や口の動き(舌癖・嚥下・発音)も含めて評価します。
必要に応じて言語聴覚士や心理士と連携し、発達全体をサポートしてくれることもあります。
まとめ
- 指しゃぶりは乳幼児に自然に見られる行動で、3歳頃までは心配不要。
- 4歳を過ぎても続く場合は、歯並びや口の機能に影響が出ることがある。
- 無理にやめさせず、安心できる環境で少しずつ卒業を目指す。
- 気になる場合は、小児歯科や小児科で相談を。
👉 指しゃぶりは「悪いこと」ではありません。
子どもが安心して育つ過程のひとつ。焦らず、ゆっくり見守ってあげましょう。

