胃腸炎の原因「ノロウイルス」とは?― 小児科専門医がわかりやすく解説

胃腸炎の原因「ノロウイルス」とは?― 小児科専門医がわかりやすく解説

はじめに

前回の記事では、「嘔吐や下痢が続く子どもの胃腸炎」について、原因や家庭での対応を中心にお話ししました。
今回はその中でも特に**冬場に流行しやすい『ノロウイルス』**について、より詳しく解説します。

ノロウイルスは、子どもだけでなく大人にも感染する非常に感染力の強いウイルスで、保育園や家庭内であっという間に広がることがあります。
一見「食中毒」と勘違いされやすいですが、実際はウイルスによる感染症です。

👉 嘔吐や下痢の“原因のひとつ”として、ノロウイルスを知っておくことが大切です。


ノロウイルスとは

ノロウイルス(Norovirus)は、冬季に多くみられるウイルス性胃腸炎の主要な原因ウイルスの一つです。
わずか数十個のウイルス粒子
でも感染が成立し、非常に感染力が強いのが特徴です。

一度感染しても、ウイルスには多くの型があるため再感染を繰り返すこともあります。
また、全年齢に感染しますが、乳幼児や高齢者では症状が強く出やすい傾向があります。


潜伏期間と感染経路

  • 潜伏期間:1〜2日(短期間で発症)
  • 感染経路
    • 嘔吐物や便からの接触感染
    • 嘔吐時の飛沫感染
    • **汚染された食品(特にカキなどの二枚貝)**による経口感染

嘔吐物が乾燥するとウイルスが空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで感染することもあります。
そのため、掃除や洗濯の際には特に注意が必要です。

👉 ノロは“空気中にも浮く”ほど強力。家庭内で広がりやすい理由です。


主な症状

ノロウイルスは、突然の嘔吐が特徴的です。
発熱は軽く、下痢は1〜3日程度で治まることが多いです。

主な症状は以下の通りです:

  • 急な嘔吐(繰り返す)
  • 水のような下痢
  • 軽度の発熱(38℃前後)
  • 倦怠感・腹痛

症状は多くの場合2〜3日で自然に回復しますが、嘔吐が続くと脱水を起こすおそれがあります。

👉 症状への具体的な対応や水分補給のコツは、前回の記事
**「こどもの胃腸炎―小児科専門医が解説する家庭での対応法」**を参考にしてください。


診断と登園・登校の目安

診断は、症状や流行状況から行うことが多いです。
便検査でノロウイルスが特定されることもありますが、治療は**対症療法(症状を和らげる治療)**が基本です。

登園・登校の目安は以下を参考に:

  • 嘔吐・下痢が治まり、食欲と元気が戻っている
  • 水分や食事を摂れる状態
  • 発熱がない

ただし、便の中にウイルスは1〜2週間ほど残るため、回復後もしばらくは家庭内での感染対策を継続しましょう。

👉 「治った=もううつらない」とは限りません。油断は禁物です。


家庭での対策

ノロウイルスはアルコール消毒では不十分です。
家庭での消毒には、**次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)**が有効です。

🔹 吐物や便の処理方法

  1. 手袋・マスクを着用して処理
  2. ペーパータオルで静かに覆い、拭き取る
  3. 0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウムで消毒
  4. 廃棄物は二重袋にして密閉
  5. 処理後は石けんでしっかり手洗い

🔹 日常での工夫

  • タオルや食器の共有を避ける
  • 洗濯は分けて行い、日光でよく乾かす
  • トイレ・ドアノブ・おもちゃを定期的に拭き掃除

👉 「最初の1人目」の対応で、その後の家庭内感染が決まります。


大人にも感染します

ノロウイルスは子どもだけの病気ではありません
看病中の親御さんが感染してしまうことも多く、家族全員が体調を崩してしまうケースも。

また、食品を扱う職業(調理・給食・飲食店など)の方は、症状が治まっても2〜3日は勤務を控えることが推奨されています。

👉 看病する側こそ、マスク・手袋・手洗いの徹底を。


まとめ

  • ノロウイルスは非常に感染力の強いウイルス性胃腸炎
  • 突然の嘔吐で始まり、数日で自然に回復することが多い。
  • アルコールではなく塩素系漂白剤での消毒が有効。
  • 症状が治ってもウイルスは便中に残るため、家庭内での感染対策は継続を。
  • 大人にも感染するため、看病時の手洗い・マスク・消毒が重要。
  • 嘔吐や下痢の具体的な対応は、「こどもの胃腸炎」の記事も参照してください。

👉 冬の嘔吐下痢はノロの可能性あり。焦らず冷静に、家族みんなで守ることが大切です。