はじめに
夜中に突然、お子さんが「ケンケン!」と犬のような咳をしながら苦しそうに息をしていたら、
びっくりしてしまいますよね。
息を吸うたびに「ヒューヒュー」という音が聞こえたり、声がかすれていたり――
そんなときに考えられるのが クループ症候群(急性喉頭炎) です。
小児科外来でもよく見られる病気で、ほとんどは自然に回復しますが、
夜間に急に悪化することがあるため注意が必要です。
クループ症候群とは?
クループ症候群は、喉の奥(声帯や気管の入り口付近)に炎症が起きて気道が狭くなる病気です。
原因の多くはウイルス感染で、代表的なものには次のようなウイルスがあります。
- パラインフルエンザウイルス
- RSウイルス
- インフルエンザウイルス
- アデノウイルス など
主に 生後6か月~3歳前後 の乳幼児に多く、秋から冬にかけて増えます。
👉 風邪の延長で起こる“喉のむくみ”が、あの独特の咳を生み出します。
主な症状
クループ症候群には、特徴的な症状があります。
- 犬の遠吠えのような「ケンケン」咳(犬吠様咳嗽)
- 息を吸うときのヒューヒュー音(吸気性喘鳴)
- 声がかすれる(嗄声)
- 発熱(多くは38℃前後)
- 胸や喉がへこむような呼吸(陥没呼吸)
夜中に症状が悪化し、翌朝少し落ち着く――これを繰り返すこともあります。
👉 「夜だけ悪くなる風邪かな?」と思ったら、クループ症候群を疑いましょう。
なぜ夜に悪化するの?
夜は空気が乾燥し、喉の炎症が悪化しやすくなります。
さらに副交感神経の働きが強まり、喉がむくんで咳が出やすくなるためです。
発症してから2〜3日目が最もつらい時期。
多くは1週間ほどで自然に回復しますが、夜間の発作的な咳が保護者を悩ませます。
👉 夜に強くなるのはこの病気の特徴。朝の元気さに安心しすぎないで。
重症化を疑うサイン
多くは軽症ですが、呼吸が苦しくなるケースもあります。
以下のようなサインがあれば、夜間でも迷わず受診してください。
- 息を吸うたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」音が強い
- 顔色が悪い、唇が紫っぽい(チアノーゼ)
- 水分が取れない、よだれが増えている
- 声がかすれて出ない、泣き声が弱い
- 胸や首元がペコペコへこむ(陥没呼吸)
- 元気がなく、反応が鈍い
👉 呼吸の“音・色・元気”に注目。少しでもおかしいと思ったら受診を。
自宅でできるケア
軽症の場合、自宅でのケアも効果的です。
- 加湿をする:部屋の湿度を保ち、喉の炎症をやわらげます。
- お風呂場で湯気を吸わせる:短時間で咳が落ち着くことも。
- 泣かせない:泣くことで喉の腫れが悪化するため、安心させましょう。
- 上体を起こす:少し体を起こすと呼吸がしやすくなります。
- 水分補給を忘れずに:喉を潤して咳を和らげます。
👉 “泣かせず・乾かさず・安心させる”が自宅ケアの3本柱です。
治療について
医療機関では、症状に応じて次のような治療が行われます。
- 吸入(アドレナリン吸入など):喉の腫れを短時間で改善
- ステロイド内服・注射(デキサメタゾンなど):炎症を抑え、再発を防ぐ
多くの場合、吸入後に比較的短時間で改善がみられます。
クループ症候群はウイルス性疾患のため、抗菌薬(抗生物質)は不要です。
症状が落ち着けば、あとは風邪と同じような対応でOKです。
👉 クループ症候群は「風邪の仲間」。吸入とステロイドで十分に改善します。
受診のタイミング
「救急に行くほどかな…?」と迷う夜もあるでしょう。
目安としては次のような場合、夜間でも受診をおすすめします。
- 苦しそうな呼吸が続く
- 顔色が青白い、唇が紫っぽい
- 水分が取れない・ぐったりしている
- 声が出ない、泣き声が弱い
- 自宅ケアでも症状が悪化している
また、症状のピークは発症から4〜5日目に来ることが多く、
低月齢児ではこの時期に入院管理が必要になることもあります。
👉 深夜に悪化する前に、「ケンケン咳」が出た段階で早めの受診を。
まとめ
- クループ症候群は ウイルス感染が原因で喉が腫れる病気。
- 特徴的な「ケンケン咳」は夜に悪化しやすい。
- ステロイド・吸入治療で早期改善が期待でき、抗菌薬は不要。
- 自宅では「泣かせない・乾かさない・安心させる」が基本。
- 息苦しさや顔色の変化があれば、夜間でも迷わず受診を。
👉 クループ症候群は多くが数日で回復します。
ただし、「いつもと違う」と感じたら早めの受診が安心です。

