目次
はじめに
生後まもない赤ちゃんの肌は、とてもデリケート。
生まれたばかりの頃はツルツルだったのに、気づけばほっぺたやおでこに赤いポツポツが…。
「アトピーかも?」
「お風呂で洗いすぎた?」
「保湿クリームを塗ると悪化する?」
そんな不安の声を、毎日のように外来で耳にします。
実はこの“乳児湿疹”、ほとんどの赤ちゃんが通る道。
体の成長とともに自然に落ち着いていくことが多いんです。
🍼 乳児湿疹とは?
「乳児湿疹」は病名というより、赤ちゃんの皮膚に出るさまざまな発疹の総称です。
生後1〜2か月ごろから出てくることが多く、顔・頭・体・おむつまわりなど、部位もさまざま。
赤ちゃんの肌は大人よりも
- 表皮が薄くバリア機能が弱い
- 汗腺や皮脂腺の働きが未熟
- 外の刺激(よだれ・ミルク・よごれ・温度差など)に敏感
といった理由で、ちょっとした刺激でも赤みやブツブツが出やすいのです。
👉 赤ちゃんの肌は“薄くて敏感”が当たり前。完璧な肌じゃなくて大丈夫です。
🌿 よくある乳児湿疹のタイプ
① 乳児脂漏性皮膚炎
生後2週〜3か月ごろによく見られるタイプ。
頭皮や額、眉のあたりに黄色いかさぶたのような皮脂の固まりができるのが特徴です。
原因は、赤ちゃん自身や母体由来のホルモンの影響による皮脂分泌の多さ。
頭皮がベタベタしても無理に剥がす必要はなく、
ベビーオイルなどでふやかしてから、やさしく洗い流す程度で十分です。
👉 洗いすぎると逆に皮脂が減って悪化することも。やさしく清潔に。
② 新生児ざ瘡(赤ちゃんニキビ)
生後2〜4週に多く、ほっぺやおでこに小さな赤いプツプツが現れます。
原因は母体ホルモンの影響で、思春期のニキビと同じようなメカニズム。
かゆみや痛みはほとんどなく、1〜2か月で自然に落ち着きます。
気になるからといって消毒をしたり、市販のニキビ薬を塗るのはNG。
👉 “触らない・つぶさない・洗いすぎない”が鉄則です。
③ あせも・おむつかぶれ
夏場や発熱時など、汗をかきやすい時期に多く見られます。
赤ちゃんは汗腺が多いのに体が小さいため、すぐに蒸れてしまうのです。
あせもは首・背中・おでこに小さな赤い点々、
おむつかぶれはお尻や股の赤みが典型的です。
毎日の沐浴で清潔を保ち、汗をかいたらすぐ着替えを。
炎症が強い場合は、短期間のステロイド外用薬を使用します。
👉 「保湿+清潔+通気性」この3つがケアの基本です。
🧠 アトピー性皮膚炎との違い
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は、最初の見た目が似ているため混同されやすいです。
しかしアトピー性皮膚炎は長引く・かゆみが強い・繰り返すのが特徴です。
次のような場合はアトピーの可能性を考えましょう:
- かゆみが強く、顔をこすりつける・耳を引っかくなどの行動が見られる
- 湿疹が2か月以上続いている
- 顔や首、耳のまわりから体・手足へと広がっている
- 家族にアレルギー疾患(アトピー、喘息、花粉症など)がある
👉 “長引く・かゆい・広がる”が3つのサイン。気になったら早めに相談を。
🧴 ケアと治療の基本
軽症の乳児湿疹は、スキンケアで十分改善します。
- 低刺激性の石けんで1日1回洗う
- 泡でやさしくなで洗い、タオルで“押さえるように”水分を取る
- 洗った後は保湿剤をたっぷり塗る(1日2〜3回)
- 冷暖房の風やよだれなど、外的刺激を避ける
炎症が強い場合は、短期間だけステロイド外用薬を使うことがあります。
「怖い」と思われがちですが、正しい量・期間で使えば安全で副作用の心配はほとんどありません。
むしろ、我慢して放置すると炎症が長引き、色素沈着やかゆみが残ってしまうこともあります。
👉 “早く治して肌を守る”のが目的。怖がらず、正しく使いましょう。
💡 よくある質問・迷いやすいポイント
- 「お風呂で洗うのは1日何回?」 → 1回でOK。洗いすぎは逆効果。
- 「保湿はいつまで続ける?」 → 肌が安定しても1日1回は継続を。
- 「乳児湿疹とアトピー、見分ける方法は?」 → 時間の経過がヒント。長引くなら受診を。
- 「母乳や食事のせい?」 → 乳児湿疹は基本的にホルモンと皮脂のバランスが原因です。
まとめ
- 乳児湿疹は「多くの赤ちゃんが通る通過点」です。
- 保湿と清潔が最大のケア。洗いすぎや触りすぎに注意。
- 長引く・かゆい・広がる場合は、アトピー性皮膚炎を疑いましょう。
- ステロイド外用薬は、怖がらずに“正しく短期間”使うことが大切です。
👉 赤ちゃんの肌はまだ発展途上。毎日のスキンケアが、将来の健康な肌を育てます。

