赤ちゃんの頭の形、気になりますか?― 小児科専門医が対策から治療までわかりやすく解説

赤ちゃんの頭の形、気になりますか?― 小児科専門医が対策から治療までわかりやすく解説

はじめに

健診で「頭の形が少し平らですね」「向き癖がありますね」と言われて、
心配になる親御さんは少なくありません。

実際、生後6か月までの赤ちゃんの約4割に、頭の形の変化(平ら・斜めなど)がみられるといわれています。
多くは成長とともに自然に整っていきますが、
一部には早めの対応が望ましい場合もあります。

今回は、小児科専門医の立場から、
「赤ちゃんの頭の形が気になるときに知っておきたいこと」
をわかりやすくまとめました。


🧠 赤ちゃんの頭が変形しやすい理由

赤ちゃんの頭の骨は、大人のように一枚の板ではなく、複数の骨が“パズル”のように組み合わさってできています。
骨と骨の間には「縫合」と呼ばれる隙間があり、出産のときに頭を柔軟に変形させたり、脳の成長に合わせて広がったりします。

つまり、生まれたばかりの頭はまだとても柔らかく、外からの力によって形が変わりやすい構造になっています。
このため、寝る向きや抱っこの仕方など、日常の中の“圧のかかり方”が頭の形に影響します。

👉 赤ちゃんの頭は「柔らかく変わりやすい」だけでなく、「自然に整う力」も持っています。時間とともに変化を見守ることも大切です。


😴 仰向け寝と頭の形

1990年代以降、SIDS(乳幼児突然死症候群)を予防するために「仰向け寝」が推奨されるようになりました。
この寝かせ方によりSIDSの発生は大きく減りましたが、
一方で後頭部が平らになりやすい“短頭”や、片側だけ平らになる“斜頭”の赤ちゃんが増えています。

ただし、これは「命を守る正しい寝方」であることをまず理解しておきましょう。
頭の形を整える工夫は、この安全な睡眠姿勢を保ちながら行うことが大切です。

👉 仰向け寝は命を守る最優先の姿勢。頭の形のバランスは、日々の工夫でゆっくり整えていけば十分です。


↔ 向き癖と下になる側の圧力

赤ちゃんは寝ている時間が長く、まだ自分で向きを変えられません。
そのため、下になりやすい方向の後頭部が平らになりやすいという特徴があります。

たとえば、右を向いて寝ることが多い赤ちゃんは右後頭部が平らになり、
それに伴って左の額が少し前に出るような形になることがあります。
これは「位置的な圧のかかり方」によるもので、特別な病気ではありません。

対策として、
・授乳の向きを毎回変える
・抱っこの肩を左右交互に変える
・ベッドの位置を変えて、興味を引く方向を反対側にする
など、日常のちょっとした工夫で左右のバランスを保つことができます。

👉 赤ちゃんの“下になっている側”を意識して、反対向きに寝かせてあげるだけでも形の偏りは軽くできます。


🐻 首がすわったら「タミータイム」を

首がすわってきたら、日中に短時間うつ伏せで遊ぶ「タミータイム(Tummy Time)」を取り入れてみましょう。
首や背中の筋肉が鍛えられ、頭の後ろにかかる圧が減る効果があります。

ただし、首がすわる前は窒息のリスクがあるため、無理に行わないように注意が必要です。
生後3か月ごろから、目を離さず数秒ずつ挑戦するくらいが安心です。

👉 タミータイムは「首がしっかりしてから」「短時間ずつ」がポイント。赤ちゃんのペースに合わせましょう。


🩺 病気が隠れていることも

頭の形の変化がすべて向き癖や寝方で説明できるわけではありません。
中には、頭の骨の縫い目が早く閉じてしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症」という病気が隠れていることもあります。

この病気では、頭の発育の方向が制限され、縫合が閉じた部位によって特徴的な形を示します。
放置すると頭蓋内圧が高くなり、発達や視力に影響を及ぼす場合もあるため注意が必要です。

「形がどんどん歪んでいく」「月齢が進んでも戻らない」「顔の左右差が強くなってきた」
そんな場合は、小児科または脳神経外科・形成外科に相談しましょう。

👉 “変化が進む”ときは受診のサイン。早めに相談することで大きな安心につながります。


⛑ ヘルメット治療について

姿勢の工夫をしても改善が乏しい場合、ヘルメット治療(頭蓋形状矯正療法)を検討することがあります。
これは、頭の成長を利用して形を整える方法で、1日20時間ほど装着して少しずつ形を導いていきます。

治療の適期は生後4〜7か月ごろ。
この時期は頭蓋骨が柔らかく、成長スピードが速いため、改善が期待できます。
ただし、保険適用外であり、費用は20〜40万円ほどかかります。
皮膚のかぶれなどを防ぐため、医師の定期チェックも欠かせません。

👉 ヘルメットは“成長を助ける道具”。焦らず、医師と相談しながら無理のない形で進めましょう。


🏠 おうちでできるケア

軽度の変形であれば、家庭での工夫で自然に整うことがほとんどです。

・授乳・抱っこの向きを変える
・首がすわってきたら日中の姿勢をこまめに変える
・ベッドの位置や照明を工夫して、首を動かす方向を変える
・首の動きがかたい場合は医師や理学療法士に相談

そして何より大切なのは、焦らないことです。
頭の骨はおよそ1歳半ごろまで柔らかく、まだまだ変化していく途中。
この時期に多少の左右差があっても、成長とともに目立たなくなることが多いです。

👉 赤ちゃんの頭は“育つ途中”。1歳半くらいまでは形が変わり続けるため、今の状態を必要以上に心配しなくて大丈夫です。


まとめ

・赤ちゃんの頭はとても柔らかく、成長とともに形を変えていきます。
・向き癖や寝る姿勢で多少の左右差が生じても、多くは自然に整います。
・仰向け寝はSIDS(乳幼児突然死症候群)の予防にもっとも重要。形よりもまず安全を優先しましょう。
・首がすわってからは、日中の姿勢を少し変えたり、タミータイムを取り入れるのも良い刺激になります。
・骨がしっかりくっつくのは1歳半ごろまで。焦らず、見守る時間も大切にしてください。

👉 赤ちゃんの頭の形は、日々変化するもの。完璧を目指すよりも、今日の笑顔を守ることを大切にしていきましょう。