子どもの耳かきをするのはNG!?― 小児科専門医から親御さんへ伝えたいこと

子どもの耳かきをするのはNG!?― 小児科専門医から親御さんへ伝えたいこと

🌸 はじめに

お風呂上がりに、つい耳掃除をしたくなるお子さんの耳。
でも「どこまでやっていいの?」「病院で取ってもらうべき?」と迷う方も多いと思います。

実は、子どもの耳掃除は“やりすぎ注意”の代表格です。
今回は、小児科医の立場から“安全な耳ケア”についてお話しします。


👶 耳垢は「たまる」ものではなく「出てくる」もの

耳垢(じこう)は、皮膚の老廃物や油分、ホコリなどが混ざったもので、
健康な耳では**自然に外に押し出される仕組み(自浄作用)**があります。

つまり、耳垢は放っておいても少しずつ外に出てくるため、
無理に取る必要はありません。

耳垢には次の2タイプがあります:

  • 乾性耳垢(カサカサタイプ):自然に落ちやすい
  • 軟性耳垢(ベタベタタイプ):体質であり、病気ではありません

👉 耳垢は「汚れ」ではなく「体のしくみ」。自然に出るのが普通です。


🩺 小児科で耳を診るときの現実

小児科の外来では、発熱や風邪で受診した際に
中耳炎の確認のため鼓膜をのぞくことがあります。

しかし実際には、耳垢で鼓膜が見えにくいケースが非常に多いです。
この場合、小児科でも無理に耳垢を取ることはしません。

なぜなら、

  • 外耳道が狭く、暴れると危険
  • 吸引や鉗子など、専用の器具と固定技術が必要
  • 鼓膜を傷つけるリスクがある

といった理由があるからです。

耳垢除去は医療的にも耳鼻咽喉科で行う処置であり、
たとえ医師であっても、耳鼻科以外で気軽に行うべきではありません

👉 子どもの耳垢取りは“医療行為”。安全に行うには耳鼻科がベストです。


🚫 むやみに耳をいじらない

家庭での耳掃除も、基本的におすすめできません。
耳かきや綿棒を使うと、

  • 耳垢を奥へ押し込んでしまう
  • 外耳道を傷つけてしまう
  • 鼓膜を破ってしまう

といった事故が起こることがあります。

実際、出血や外耳炎、鼓膜損傷で受診する子どもも少なくありません。
特に、嫌がって動く子どもの耳掃除はリスクが高く、無理に行わないようにしましょう。

👉 「見えたから取りたい」はNG。奥まで入れず“やらない勇気”を。


🧴 耳鼻科に行くタイミング

  • 耳垢が詰まっている(耳垢栓塞)
  • 聞こえが悪い
  • 耳をかゆがる・痛がる
  • 耳だれが出ている

こうした症状がある場合は、耳鼻科での耳垢除去が必要です。

耳鼻科では、耳垢を柔らかくする薬(耳垢水)を使い、
数日後に吸引器で安全に取り除くことができます。

家庭で無理に取るよりも、半年〜1年に1度、耳鼻科でチェックるくらいが安心です。

👉 「毎回お風呂上がり」より、「半年に1回耳鼻科」で十分。


💬 よくある誤解

❌「耳かきをしすぎると中耳炎になる?」

実際には、耳かきのしすぎで起きるのは**外耳炎(耳の入口の炎症)**です。
鼓膜を突き破るほど強く入れなければ、中耳炎を引き起こすことはありません。
中耳炎は「鼻のばい菌が耳に入る病気」であり、耳かきが原因ではありません。

詳しくは前回中耳炎についてまとめた記事をご参照ください。

👉 “耳かき=中耳炎”ではありません。耳の中はそっと優しく。


🧸 家でのお手入れは“入口だけ”でOK

  • お風呂上がりに、乾いた綿棒で耳の入口を軽く拭く
  • カサカサ耳垢の人は、オイル綿棒を使うと取りやすい
  • 子どもが動く日は、無理せず「今日はやめよう」でOK

👉 耳掃除は“見えるところだけ”。やさしく、無理せず。


🧾 まとめ

  • 耳垢は自然に外へ出るしくみ
  • 鼓膜が見えないときも、小児科では無理に取らない
  • 耳垢除去は耳鼻科で行う医療処置
  • 家では“入口をやさしく拭く”程度で十分
  • 半年〜1年に一度、耳鼻科でチェックしてもらうと安心

👉 何事もやりすぎには注意が必要です。