学校検診で「側湾症の疑い」と言われたら?― 小児科専門医がわかりやすく解説

学校検診で「側湾症の疑い」と言われたら?― 小児科専門医がわかりやすく解説

はじめに

学校検診の結果を見て、

「側湾症の疑いがあります」
「整形外科を受診してください」

と書かれていて、驚いた親御さんも多いのではないでしょうか。

お子さん自身は元気で、背中の痛みもなく、
「本当に病気なの?」
「すぐ病院を受診した方がいいの?」
と不安になる方も少なくありません。

側湾症は、背骨が左右に曲がりながらねじれてしまう病気です。初期にはほとんど症状がなく、学校検診で初めて見つかることも珍しくありません。

一方で、成長期に進行することがあるため、早期発見・早期対応がとても大切です。

この記事では、側湾症とはどんな病気なのか、学校検診で指摘されたらどうすればよいのか、治療が必要になるのはどのような場合なのかについて、親御さん向けにわかりやすく解説します。


側湾症とは?

側湾症とは、背骨が左右に曲がり、さらにねじれを伴う病気です。

正常な背骨は正面から見るとまっすぐですが、側湾症になると背骨が横方向へ曲がり、アルファベットの「S字」や「C字」のような形になることがあります。さらに背骨がねじれることで、背中や肋骨の高さにも左右差が生じます。

「猫背」や「姿勢の悪さ」と混同されることがありますが、側湾症は単なる姿勢の問題ではありません。背骨そのものに変形が起きている状態であり、意識して姿勢を正しても改善しないのが特徴です。

診断にはレントゲン検査が用いられ、背骨の曲がりの程度を示す「Cobb角(コブ角)」が10度以上ある場合に側湾症と診断されます。

側湾症にはいくつか種類がありますが、子どもで最も多いのは「特発性側湾症」と呼ばれるタイプです。特発性とは「原因がはっきり分からない」という意味で、成長期に発症することが多いことが知られています。

👉 側湾症は「姿勢が悪い」のではなく、背骨そのものが変形する病気です。


側湾症はどれくらい多いの?

側湾症は決して珍しい病気ではありません。

日本では背骨の曲がりが10度以上ある側湾症は、およそ100人に1〜3人程度にみられるとされています。クラスに1人程度いる計算になるため、実は比較的身近な病気といえるでしょう。

特に多いのが10歳前後から思春期にかけて発症する特発性側湾症です。この時期は身長が大きく伸びる時期でもあり、背骨の曲がりも進行しやすくなります。

また、軽度の側湾症は男女ともにみられますが、治療が必要になるような進行例は女の子に多いことが知られています。そのため学校検診では、成長期のお子さんを対象に継続的なチェックが行われています。

側湾症の多くは自覚症状がありません。そのため学校検診がなければ発見が遅れてしまうケースも少なくありません。

学校検診で指摘されたからといって、必ず重症というわけではありません。しかし、早い段階で見つかったからこそ適切な対応ができるとも言えます。

👉 学校検診は側湾症を早期発見するための大切な機会です。


側湾症の原因は?

親御さんから非常によく聞かれるのが、

「ランドセルが重かったから?」
「ゲームやスマホの姿勢が悪かったから?」
「座り方が悪かったの?」

という質問です。

しかし現在のところ、これらが側湾症の直接的な原因であるという証拠はありません。

実際には、側湾症の約80〜90%を占める特発性側湾症は、はっきりとした原因が分かっていません。

一方で研究が進む中で、遺伝的な要因が関与している可能性は指摘されています。家族に側湾症の方がいる場合は発症しやすい傾向がありますが、「親が側湾症だから必ず子どももなる」というわけではありません。

また、生まれつき背骨の形に異常がある先天性側湾症や、神経・筋肉の病気に伴って起こる側湾症もあります。

親御さんの中には「自分のせいで側湾症になってしまったのでは」と責任を感じる方もいます。しかし、日常生活や育て方が原因で起こる病気ではありません。

まずは必要以上に自分を責めないでいただきたいと思います。

👉 側湾症は親御さんの育て方や姿勢指導が原因で起こる病気ではありません。


家庭で気付けるサインは?

側湾症のやっかいなところは、初期にはほとんど症状がないことです。

発熱や咳のように分かりやすい症状がなく、背中や腰の痛みもないまま進行することがあります。そのため、お子さん自身も気付かず、ご家族も学校検診で初めて知るケースが少なくありません。

側湾症の発見のきっかけになるのは、「痛み」ではなく「見た目の変化」です。

例えば、

肩の高さが左右で違う

肩甲骨の出っ張り方が違う

ウエストのくびれ方が左右で違う

服が斜めになる

といった変化がみられることがあります。

また、最も分かりやすいサインのひとつが「前かがみになったときの左右差」です。

背骨がねじれているため、前かがみになると片側の背中や肋骨が盛り上がって見えることがあります。学校検診で行われる前屈検査も、この変化を確認するためのものです。

入浴時や着替えの際など、何気ない場面で気付く親御さんもいます。

もちろん左右差があるからといって必ず側湾症とは限りません。しかし気になる場合は、学校検診を待たずに整形外科へ相談してもよいでしょう。

👉 側湾症は痛みよりも「見た目の左右差」で見つかることが多い病気です。


放っておくとどうなる?

学校検診で指摘されたものの、

「本人は元気だし様子を見てもいいかな」

と考える親御さんもいるかもしれません。

しかし側湾症で重要なのは、「今どうか」ではなく「今後どうなるか」です。

特に身長が大きく伸びる時期には、背骨の曲がりも進行することがあります。

軽い側湾症の多くは経過観察のみで済みますが、一部のお子さんでは成長とともに曲がりが強くなることがあります。

進行すると見た目の左右差が目立つようになり、洋服のフィット感にも影響します。また成人後に腰痛や背部痛につながる場合もあります。

さらに重症になると胸郭が変形し、肺や心臓への影響が問題となることもあります。

もちろんそこまで進行するケースは多くありません。しかし、だからこそ進行する前に見つけて対応することが大切なのです。

👉 側湾症は「今は症状がないから大丈夫」とは限りません。


学校検診で指摘されたら何科を受診する?

学校検診で側湾症を指摘された場合は、整形外科を受診しましょう。

学校検診はあくまで「疑いがあるお子さんを見つけるための検査」です。検診だけで側湾症と確定診断されるわけではありません。

整形外科では身体診察や前屈検査に加え、必要に応じてレントゲン検査が行われます。

レントゲンではCobb角(コブ角)という指標を用いて、背骨の曲がりの程度を評価します。この角度によって、経過観察なのか、装具治療が必要なのかを判断します。

学校検診で指摘されても精密検査では異常がなかったというケースもあります。一方で、見た目には軽そうでも実際には治療が必要な程度まで進行している場合もあります。

そのため、受診を勧められた場合には自己判断で様子を見ず、一度専門医の診察を受けることをおすすめします。

👉 学校検診で指摘されたら、一度は整形外科で詳しく評価してもらいましょう。


側湾症の治療は?

治療方針は、背骨の曲がりの程度だけでなく、お子さんの年齢や成長の残り具合によって決まります。

軽度の場合は定期的なレントゲン検査を行いながら経過を観察します。

一方で、成長期にあり今後進行する可能性が高い場合には、装具(コルセット)治療が検討されます。

ここで知っておいていただきたいのは、コルセットの目的は「背骨を真っ直ぐに戻すこと」ではないということです。

コルセット治療の最大の目的は、成長期に曲がりがさらに悪化することを防ぐことです。

そして、曲がりが高度になった場合には手術治療が検討されます。

「側湾症=手術」というイメージを持つ方もいますが、実際には多くのお子さんが経過観察や装具治療で管理されています。

だからこそ、早い段階で発見することに大きな意味があります。

👉 早期発見によって手術を避けられる可能性が高まります。


スポーツは続けていいの?

学校検診で側湾症を指摘されると、

「運動したら悪化するのでは?」
「部活をやめた方がいいのでは?」

と心配になる親御さんも多いと思います。

しかし現在のところ、一般的なスポーツ活動が側湾症の原因になるという証拠はありません。

また、多くの場合、運動によって側湾症が悪化することもないと考えられています。

そのため、医師から特別な制限を受けていなければ、学校体育や部活動を含め、普段どおり生活することができます。

もちろん、側湾症の程度や治療内容によって個別の注意点があるため、診察時に確認することは大切です。

しかし過度に運動を制限する必要はなく、多くのお子さんはこれまでどおり学校生活を送っています。

👉 側湾症があっても、多くのお子さんは普段どおり運動や学校生活を続けられます。


まとめ

・側湾症は背骨が左右に曲がり、ねじれる病気
・姿勢の悪さやランドセルが原因ではない
・学校検診で見つかることが多い
・初期には症状がほとんどない
・成長期に進行することがある
・学校検診で指摘されたら整形外科を受診する
・早期発見によって治療の選択肢が広がる
・多くのお子さんは普段どおり学校生活を送ることができる

👉 学校検診で「側湾症の疑い」と言われても、必要以上に心配する必要はありません。しかし放置せず、一度整形外科で詳しく調べてもらうことが大切です。


※記事中の図は日本側彎症学会ホームページ掲載資料を引用・改変して使用しています。
出典:日本側彎症学会 患者さんとご家族のための側彎症ガイド
https://www.sokuwan.jp/patient/