赤ちゃんの「でべそ」って大丈夫? ― 小児科専門医が解説する「臍ヘルニア」

赤ちゃんの「でべそ」って大丈夫? ― 小児科専門医が解説する「臍ヘルニア」


🌱 はじめに:おへそがふくらんでいるけど、心配?

「うちの子のおへそ、出てるけど大丈夫ですか?」
――これは新生児健診や1か月健診でとてもよく聞かれる質問のひとつです。

赤ちゃんのおへそがポコッと出ている状態は、臍(さい)ヘルニア呼ばれます。
通称「でべそ」と言われるこの状態は、見た目の印象とは裏腹に、
ほとんどのケースで自然に治っていくものです。

今回は、臍ヘルニアの原因や経過、家庭でのケア、
そして注意してほしいサインを、小児科専門医の視点からわかりやすくお話しします。


💠 臍ヘルニアとは?

臍ヘルニアは、赤ちゃんの腹筋のすき間(臍輪)から腸の一部が皮膚の下に押し出されることで、
おへそがふくらんで見える状態です。

👶 原因

赤ちゃんは生まれた直後まで、へその緒を通じて栄養をもらっていました。
へその緒が取れたあとの穴(臍輪)が完全に閉じるまでに少し時間がかかることがあり、
そのすき間から腸が押し出されるのが臍ヘルニアです。

お腹の筋肉が未発達な低出生体重児や早産児では少し多く見られます。


👀 どんな見た目?

  • おへその中央がポコッとふくらむ
  • 泣いたりいきんだりすると、さらに膨らんで目立つ
  • 手で軽く押すとへこむ
  • 痛みや熱、皮膚の赤みはない

多くの親御さんが「痛そう」「苦しそう」と感じますが、
臍ヘルニア自体は痛みを伴わないため、赤ちゃんは特に気にしていません。

👉 見た目は派手でも、ほとんどが無害。


⏳ 治るまでの経過

臍ヘルニアは、自然に治ることが非常に多い病気です。

  • 生後3〜4か月ごろから徐々にふくらみが小さくなり、
  • 1歳前後で8〜9割の子どもが自然に閉じます。

体重増加や筋肉の発達に伴ってお腹の圧が高まり、
自然に臍輪(穴)が閉じていくのです。

手術が必要になるのは、全体の5〜10%ほど。
2歳を過ぎても閉じない場合や、見た目の膨らみが強く残る場合に検討します。


🩹 テープ圧迫療法について

近年では、臍ヘルニアを早く目立たなくするために、
**医療用のテープでおへそを軽く押さえる「圧迫療法」**が行われることがあります。

これは医療機関で安全に行うもので、
家庭でテープやコインなどを貼るのは感染や皮膚炎の原因になるため避けましょう。

圧迫療法のポイント

  • 生後2〜3か月から始めることが多い
  • 1〜2か月で目立たなくなることが多い
  • 医師や看護師が経過を見ながら行う

👉 市販のテープや自己流の処置はNG。
皮膚がかぶれてしまうリスクがあるため、必ず医師の指導のもとで行いましょう。


⚠️ こんなときは受診を

臍ヘルニアは自然経過で問題ないことがほとんどですが、
以下のような場合は注意が必要です。

  • おへそが硬くなって押しても戻らない
  • 赤く腫れている、痛がる様子がある
  • 嘔吐やぐったりするなど、全身の変化を伴う

これらは**腸が締め付けられて血流が悪くなる「嵌頓(かんとん)」**のサインの可能性があります。
まれですが放置すると危険なため、すぐに医療機関を受診してください。


🏠 家庭でのケア

  • 泣いたときに少し膨らんでも、心配しすぎなくて大丈夫
  • テープや硬貨を貼るのは感染リスクがあるため避ける
  • 清潔を保ち、臍の周囲が赤くならないかだけ観察する
  • 1か月健診や定期健診で、医師に経過を見てもらう

👉 おへそが出てる」よりも、「赤くないか・痛そうでないか」を見るのがポイント。


☀️ まとめ

  • 臍ヘルニア(でべそ)は見た目に驚きますが、ほとんどは自然に治ります。
  • 2歳を過ぎても残る場合のみ、手術を検討します。
  • 自己流のテープ固定は皮膚トラブルのもと。必ず医師の指導のもとで行いましょう。
  • おへそが赤く腫れたり、押しても戻らない場合は早めに受診を。

👉 おへそは、生まれたあとの小さな“がんばりのあと”。焦らず、ゆっくり見守ってあげてください。