目次
はじめに
子どもが熱を出したとき、
一番心配なのは「このまま悪くならないか」ということではないでしょうか。
その中でも、
突然起こる熱性けいれんは、
親御さんにとって非常に強い衝撃となる出来事です。
けれども、
熱性けいれんは多くの子どもが経験しうるもので、
将来に大きな影響を残すことはまれです。
大切なのは、
「知らないこと」を怖がるのではなく、
「知っておくこと」で、いざというときに落ち着いて行動できるようになること。
この記事では、
熱性けいれんの基本から家庭での対応、
そして実際の診療現場で私たちが親御さんにお願いしている行動まで、
小児科専門医の立場からわかりやすく解説します。
👉 知識があるだけで、あの突然の場面への向き合い方は確実に変わります。
熱性けいれんとは?
熱性けいれんとは、
発熱に伴って起こる発作のことで、
主に生後6か月〜5歳ごろの子どもに見られます。
日本では約10人に1人前後が経験するとされており、
決して珍しいものではありません。
高熱そのものが脳を傷つけているわけではなく、
熱が急に上がることをきっかけに、
一時的に脳が過敏に反応して起こると考えられています。
多くの場合、
数分で自然におさまり、
後遺症を残すことはほとんどありません。
👉 見た目は非常に怖いですが、医学的には予後の良い発作です。
どんな症状が出るの?
熱性けいれんでは、次のような症状がみられます。
- 手足がガクガクと震える
- 体が突っ張る
- 目が上を向く、ぼーっと一点を見つめる
- 呼びかけに反応しない
- 口の周りが紫っぽく見える
発作は突然始まり、
多くは数分以内に自然におさまるのが特徴です。
初めて見ると、
「このまま止まらなかったらどうしよう」
「命に関わるのでは」
と強い恐怖を感じるのは、当然の反応です。
👉 親御さんが怖くなるのは自然なこと。決して大げさではありません。
単純型と複雑型の違い
熱性けいれんは、経過によって
単純型と複雑型に分けられます。
単純型熱性けいれん
- けいれんが15分以内でおさまる
- 体の左右が同じように動く
- 同じ発熱の中で1回だけ
全体の大多数がこのタイプで、
経過はとても良好です。
複雑型熱性けいれん
- 15分以上続く
- 体の片側だけのけいれん
- 同じ発熱の中で何度も起こる
この場合は、
より慎重な評価や経過観察が必要になります。
👉 多くの子は単純型で、深刻な経過をたどることはまれです。
けいれんが起きたとき、家でできること
けいれんが起きた瞬間、
親御さんは強い恐怖や焦りに襲われます。
そんなときに大切なのは、
**「全部を完璧にやろうとしないこと」**です。
まずは、お子さんの安全を守ることを最優先にしてください。
① あわてず、時間を確認する
可能であれば、
「何時何分ごろに始まったか」を確認しましょう。
正確でなくても問題ありません。
👉 時間の目安があるだけで、医療者の判断がしやすくなります。
② 横向きに寝かせて、安全を確保する
- 吐いたものが喉に詰まらないよう横向きに
- 周囲の硬い物や危ない物をどける
- 無理に押さえつけない
- 口の中に物を入れない
👉 けいれんを止める必要はありません。安全確保が最優先です。
③ 余裕があれば「動画」を撮る
もし少しでも余裕があればで構いません。
- 手足や体の動き
- 目の動きや視線
- 体の左右差
- 呼びかけへの反応
などを、短時間でいいので動画に残しておくと、
受診後の診断や対応にとても役立ちます。
高熱のときには、
けいれんなのか、寒気による震え(シバリング)なのかを
ご家族が見分けるのは非常に難しいため、
動画があることで医療者側の判断が助けられます。
もちろん、
無理に撮る必要はありません。
お子さんの安全確保が何よりも優先です。
👉 動画は「余裕があれば」で十分。それだけで医師はとても助けられます。
④ 迷ったら、すぐに救急車を呼ぶ
「まだ5分経っていないから」
「もう少し様子を見たほうがいいのかな」
と迷う必要はありません。
実臨床の経験からは、
けいれんを起こした時点で救急車を呼んでほしいと考えています。
5分経ってから呼んでも、
到着・搬送までに時間がかかり、
結果的に発作が長引いてしまうことがあるためです。
👉 早すぎる判断より、遅れる判断のほうがリスクになります。
「5分未満なら様子見」で本当にいい?
医学的には、
5分以上続く発作が治療介入を考える目安とされています。
ただし、現実には
- 開始時刻が分からない
- 時計を見る余裕がない
- 迷っている間に時間が過ぎる
といったことがよく起こります。
そのため、
ガイドラインの目安にこだわりすぎず、
安全側に倒した行動を取ってください。
👉 「様子見で遅れる」より「早めに動く」ほうが安心です。
繰り返す?後遺症は?てんかんになる?
熱性けいれんは
約3人に1人程度で再発すると言われています。
ただし、
再発しても多くは同じように自然におさまり、
成長や発達に影響を残すことはほとんどありません。
将来てんかんになる割合も、
わずかに高くなる程度です。
👉 「起きたこと」よりも、「その後どう育つか」が大切です。
まとめ
- 熱性けいれんはよくある、予後の良い発作
- 見た目は怖いが、多くは自然におさまる
- 家では安全確保が最優先
- 迷ったらすぐ救急車を呼んでいい
- 5分ルールにこだわりすぎなくていい
- 余裕があれば動画が診断の助けになる
👉 迷ったら「安全側に倒す」。それが親として、いちばん正しい行動です。

