小児喘息の新しい治療選択肢― デュピクセントを小児科専門医が解説

小児喘息の新しい治療選択肢― デュピクセントを小児科専門医が解説

はじめに

小児喘息は、長く付き合っていく必要がある慢性の病気です。
毎日きちんと吸入治療を続けているのに、

  • 発作を何度もくり返す
  • 夜間の咳や息苦しさで眠れない
  • 運動や学校生活に制限が出てしまう

といった悩みを抱えているご家庭も少なくありません。

そんな中、2025年に「デュピクセント」6〜11歳の小児喘息にも使えるようになり、治療の選択肢が大きく広がりました。
この記事では、喘息のお子さんをもつ親御さんに向けて、
「デュピクセントってどんな薬?」「注射ってどうやるの?」
という疑問を、できるだけわかりやすく解説します。


小児喘息ってどんな病気?

喘息は、気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起こることで、

  • ゼーゼー・ヒューヒューする音
  • 咳が長引く
  • 息苦しさ

といった症状が出る病気です。

多くのお子さんは、
吸入ステロイド薬を中心とした治療で症状が落ち着きます。
しかし一部のお子さんでは、

  • 吸入をしっかり続けているのに発作が減らない
  • 救急受診や入院を何度も繰り返す

といった 「コントロールが難しい喘息」 になることがあります。

👉 子どもの喘息についてはこれまでに詳しく解説しているので、🔗過去の記事も参考にしてください


従来の治療だけでは難しいケースも

これまでの小児喘息治療の基本は、

  • 吸入ステロイド薬
  • 気管支拡張薬
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬

などを毎日継続することでした。

それでも症状が抑えきれない場合、
「これ以上どうすればいいのだろう…」
と悩まれるご家庭も多かったのが現実です。

👉 そこに新たな選択肢として加わったのが「デュピクセント」です。


デュピクセントってどんな薬?

デュピクセントは、**生物学的製剤(抗体薬)**と呼ばれる注射のお薬です。

作用の特徴

喘息の中でも、特に
「2型炎症」 と呼ばれるタイプの炎症に関わる
「IL-4」「IL-13」という物質の働きをピンポイントで抑えます。

その結果、

  • 気道の炎症が落ち着く
  • 喘息発作が起こりにくくなる

といった効果が期待できます。

👉 ステロイドとは違う仕組みで炎症を抑える点が大きな特徴です。


6〜11歳にも使えるようになりました

これまでデュピクセントは、
12歳以上の喘息やアトピー性皮膚炎で使われていました。

2025年の適応拡大により、6〜11歳で既存治療では十分にコントロールできない小児喘にも使用可能となりました。

海外の大規模臨床試験では、

  • 喘息発作の回数が大きく減少
  • 呼吸機能の改善
  • 効果が長期間持続

といった結果が示されています。

👉 「年齢が小さいから使えない」という壁が下がったことは、大きな前進です。


どんなお子さんが対象になるの?

とても大切な点ですが、
デュピクセントはすべてのお子さんに使う薬ではありません。

主に、

  • 吸入治療をきちんと行っている
  • それでも中等症〜重症の喘息症状が続く

といったお子さんが対象になります。

血液検査(好酸球)や呼気NOなどを参考に、
医師が慎重に判断します。

👉 「今すぐ使う薬」ではなく、「次の選択肢」として考える薬です。


💉 デュピクセントは皮下注射のお薬です

デュピクセントは、**皮下注射(皮膚のすぐ下に打つ注射)**で使います。
飲み薬や吸入薬ではありませんが、比較的安全に使用できる注射薬です。


🗓 注射の間隔(どれくらいの頻度?)

基本的な投与スケジュール(小児喘息)

  • 初回
     → 医師の判断で、最初に2本まとめて注射することがあります
  • 2回目以降
     → 通常は2週間に1回(隔週) の注射を継続します

症状が安定してきた場合には、
4週間に1回へ間隔を調整することもあります。

👉 投与間隔は必ず主治医の指示に従ってください。


📍 注射する場所(接種部位)

デュピクセントは、次の部位に注射します。

主な注射部位

  • お腹(腹部)
     ※へその周り約5cmは避けます
  • 太もも(大腿部)
  • 上腕(腕の外側)
     ※保護者が打つ場合などに選ばれます

大切なポイント

  • 毎回同じ場所に打たない(ローテーションする)
  • 傷・湿疹・赤みのある場所は避ける

👉 注射部位を変えることで、皮膚トラブルを防ぎます。


🏠 自宅での注射はできる?

最初は医療機関で医師や看護師の指導のもとで行いますが、
慣れてくれば 保護者による自宅注射 が可能になる場合もあります。

ただし、

  • 正しい打ち方
  • 消毒や針の扱い
  • 副作用の確認

などを必ず医療者から指導を受けてから行うことが大切です。

👉 「自宅でできる=自己判断でよい」ではありません。


副作用はあるの?

比較的多くみられるのは、

  • 注射部位の赤み・腫れ
  • 軽い結膜炎

などです。
重い副作用はまれですが、気になる症状があればすぐに受診しましょう。

👉 不安な点は、遠慮せず主治医に相談してください。


親御さんに伝えたいこと

デュピクセントの登場で、小児喘息治療は
「我慢する時代」から「選べる時代」 に近づいてきました。

  • 発作が減る
  • 夜ぐっすり眠れる
  • 学校や運動を楽しめる

そんな可能性を広げてくれる治療の一つです。

👉 「今の治療で本当に十分かな?」と感じたら、相談する価値はあります。


まとめ

  • デュピクセントは 小児喘息の新しい治療選択肢
  • 6〜11歳のコントロール不良な喘息にも使用可能
  • 2週間ごとの皮下注射が基本
  • 注射部位は 腹部・太もも・上腕
  • すべての子に必要な薬ではないが、希望となるケースがある

喘息治療で悩んでいるときは、
一人で抱え込まず、かかりつけ医に相談してください。
お子さんに合った治療を、一緒に考えていきましょう。