食物アレルギーは、
「ずっと避け続けるしかない病気」ではありません。
正しく評価し、
正しく段階を踏んで向き合えば、
食べられる世界は少しずつ、確実に広がっていきます。
その考え方の中心にあるのが、経口免疫療法です。
目次
「治る」とはどういう意味?
まず、いちばん誤解されやすい点から整理します。
私が言う「食物アレルギーが治る」 とは、
- 何でも好きなだけ食べられる
- もう一切気にしなくていい
という意味では必ずしもありません。
まず目指すのは、
- 一定量までなら安全に食べられる
- 誤って食べてしまっても、重い症状が出にくい
という状態です。
これは、
- 命に関わるリスクを下げ
- 日常生活の制限を減らす
という点で、親御さんと子どもにとってとても大きな変化です。
👉 「ゼロか100か」ではなく、「安全に動ける範囲を広げる」ことを目指します。
食物アレルギーは「変化していく病気」
食物アレルギーは、
- ある/ない
- 治った/治っていない
と単純に区切れる病気ではありません。
実際の臨床では、
- 同じ食品でも量で反応が変わる
- 年齢や体調で症状が変わる
- 加工(加熱・発酵など)で食べられるようになる
といった、グラデーションのある経過をたどることが多くあります。
だからこそ、
今は食べられない = 一生食べられない
とは限りません。
👉 「今の状態」は通過点であり、ゴールではありません。
経口免疫療法とは?
経口免疫療法とは、
原因となる食品を、医師の管理下で
計画的に、少量ずつ、長期的に摂取し続けることで
体を“慣らし”、症状を起こしにくくしていく治療
です。
ここで大切なのは、
- 一気に克服する治療ではない
- 「慣れればOK」という単純な話ではない
という点です。
第3回で扱った経口負荷試験は、
- 食べられるかどうかを評価する「検査」
一方、経口免疫療法は、
- 食べられる範囲を広げるための「治療」
👉 同じ「食べる」でも、目的も責任の重さも違います。
経口免疫療法は誰に向いている?
経口免疫療法は、
希望すれば誰でも受けられる治療ではありません。
医師は、
- これまでの症状の重さ
- アレルギーの種類
- 喘息など他の病気の状態
- 家庭での管理体制
などを総合的に見て判断します。
場合によっては、
- 今はまだ時期ではない
- 別の方法を選んだ方が安全
と判断されることもあります。
👉 「やらない」という選択も、立派な治療方針です。
経口免疫療法のやり方
① 事前評価
治療は、
「じゃあ今日から始めましょう」という形では進みません。
- どんな症状が、いつ、どれくらい出たか
- 検査結果と実際の症状のズレ
- 本当に目指すゴールはどこか
を丁寧に整理します。
👉 この評価が甘いと、後のリスクが一気に高くなります。
② 開始量
開始量は、
- 親御さんが拍子抜けするほど極少量
です。
- 数ミリグラム
- 耳かきの先に付く程度
というレベルから始めることも珍しくありません。
これは、体に“危険ではない”と学習させるためです。
👉 最初は量より「安全に続けられること」が最優先です。
③ 維持期
この段階では、
- 定期的(毎日~週3回程度)に同じ量
- 同じ条件
- 同じ時間帯
で摂取します。
この時期にありがちな落とし穴は、
- 調子がいいから少し増やす
- 忘れた分をまとめて摂る
といった自己判断での調節です。
👉 「変えないこと」が治療になります。
④ 増量期
一定期間問題がなければ、
必ず医師の判断で増量します。
- 家庭の判断
- SNSや体験談
は、判断材料にはなりません。
👉 増量は「挑戦」ではなく「医療行為」です。
⑤ 長期管理:ゴールは一人ひとり違う
- 毎日食べる量
- どこまで増やすか
- いつ維持に切り替えるか
これらは、子どもごとに異なります。
👉 他の子と比べないことが、続けるコツです。
経口免疫療法にはリスクもある
経口免疫療法は、
アレルゲンを避ける治療ではなく、あえて体に入れる治療です。
そのため、
- じんましん
- 嘔吐
- 咳・呼吸苦
- まれに強い全身症状
が起こる可能性があります。
だからこそ、
- 医師の管理
- 親御さんの理解
- ルールの遵守
が不可欠です。
👉 「怖い治療」ではなく、「管理が必要な治療」です。
経口免疫療法の本当の目的
この治療の目的は、
❌ 好きなだけ食べられるようにすること
⭕ 生活の中で“致命的なリスク”を減らすこと
です。
- 給食の微量混入
- 外食での完全回避が難しい場面
でも、
命に関わる事態を防げる状態を目指します。
👉 「食事」ではなく「生活」を守る治療です。
親御さんへ
経口免疫療法は、
- 魔法ではない
- 近道でもない
でも、
- 何もせずに除去だけを続ける
以外の、
「前に進む選択肢」 です。
👉 焦らず、比べず、その子のペースで大丈夫です。
🔵 まとめ
- 食物アレルギーは「治る病気」と考えられる時代になってきた
- 「治る」とは、安全に食べられる範囲が広がること
- 経口免疫療法は医師管理下で行う長期的な治療
- ごく少量から始め、段階を踏んで進める
- 自己判断は最大のリスク
- 目標は「完食」ではなく「安全な生活」
👉 希望と慎重さ、その両方が大切です。

