身近な“食べ物・飲み物”で起こる子どもの中毒― 小児科専門医が徹底解説

身近な“食べ物・飲み物”で起こる子どもの中毒― 小児科専門医が徹底解説

はじめに

「食べ物や飲み物は身近にあるから安全」
…そんなふうに思ってしまいがちです。

しかし実際には、私たちの家庭にある“いつもの食品”が、子どもにとっては中毒の原因になり得ることがあります。
しかも、少量でも強い症状を引き起こすものも珍しくありません。

この記事では、非常に身近にある食品で起こる中毒 について、小児科専門医の視点からわかりやすく解説します。

大切なのは、「知っていれば防げる」こと。
今日からの食卓と家庭環境を、すこし見直すきっかけになれば幸いです。


1|カフェイン

(コーヒー/紅茶/緑茶/コーラ/エナジードリンク/一部の市販薬)

●原因

カフェインは多くの飲み物・食品・市販薬に含まれています。
大人には影響が少なくても、体が小さい子どもは中毒量に達しやすいことが問題です。

●症状

過剰摂取すると以下のような神経刺激症状が出ます:

  • 嘔吐
  • 呼吸が速くなる
  • 興奮・落ち着きがない
  • けいれん
  • 動悸、不整脈
    重症では命に関わることも。

子どもでは 20 mg/kg ほどで症状 が出ることがあり、
80〜100 mg/kg では重篤化するとされています。身近な食品に潜む中毒

●予防

  • エナジードリンクは子どもに与えない
  • 「眠くなるから」と市販薬を自己判断で飲ませない
  • 大人の飲みかけを放置しない

👉 特に思春期の“エナドリ常用”は要注意。


2|アルコール

(チューハイ/ビール/ワイン/料理酒/消毒用アルコール誤飲)

●原因

乳幼児は、甘いアルコール飲料をジュースと間違えて飲んでしまうことが多いです。

●症状

アルコールは中枢神経を抑制し、

  • 酩酊
  • ふらつき
  • 意識障害
  • 呼吸抑制
  • 昏睡

少量でも危険で、最小の中毒量は 1.4 mg/kg とされています。身近な食品に潜む中毒

特に缶チューハイ(350mLで純アルコール14g前後)は、見た目もジュースに似ていて非常に危険です。

●予防

  • 飲みかけ缶を子どもの手の届く場所に置かない
  • パーティーなどでは大人がこまめに片付ける
  • 保管場所は高所・施錠が基本

👉 「飲んだかも?」でも、迷わず相談を。


3|ハチミツ(1歳未満は絶対に禁止)

●原因

ハチミツには ボツリヌス菌の芽胞 が混入していることがあります。
大人は大丈夫でも、1歳未満の赤ちゃんの腸内では菌が増えてしまうことがあります。

●症状

  • 便秘
  • 元気がない
  • 哺乳力が落ちる
  • 泣き声が弱くなる
  • 重症では呼吸が弱まり人工呼吸が必要になることも

芽胞は 100℃で数分加熱した程度では死滅しません。身近な食品に潜む中毒

●予防

  • 加熱してもOKにならない
  • パンやお菓子に“ハチミツ入り”があるので注意
  • 周囲の祖父母にも必ず共有

👉 1歳未満の“絶対禁止食品”として最重要。


4|銀杏(ぎんなん)

●原因

銀杏に含まれる 4′-O-メチルピリドキシン が、ビタミンB6の働きを阻害し神経症状を起こします。
これは昔から「歳の数以上食べてはいけない」と言われる理由です。

●症状

  • 嘔吐
  • けいれん
  • 意識障害

加熱しても毒はなくなりません。身近な食品に潜む中毒

●予防

  • 大量に食べさせない
  • 子どもが拾った生銀杏を口に入れないよう注意
  • 異変があれば「銀杏を食べた」と医療者に必ず伝える

👉 季節イベントで“炒り銀杏”が出る時期は特に注意。


5|ナツメグ

(香辛料/ポプリ/アロマに含まれることも)

●原因

ナツメグにはミリスチシンなどの成分が含まれ、代謝物が強い神経刺激作用を持ちます。

●症状

  • 頻脈
  • 顔の紅潮
  • 口の乾燥
  • 強い不安
  • 興奮・錯乱
  • 幻覚

海外では死亡例もあります。身近な食品に潜む中毒

●予防

  • スパイス瓶を子どもの手の届かない場所へ
  • ポプリ・アロマを誤食しないよう置き場所に注意

👉 「香辛料だから大丈夫」は誤解。


6|ヒスタミン中毒(魚)

原因

サバ・マグロなどの魚に含まれるヒスチジンが、保存状態不良で菌によりヒスタミンへ変化すると発生。

ヒスタミンは 加熱しても分解されません。身近な食品に潜む中毒

●症状

食後10〜30分以内に:

  • 顔や体の赤み
  • かゆみ
  • 腹痛
  • アナフィラキシーのような症状
    重症では血圧低下・気道狭窄が起こることも。

●予防

  • 魚は購入後すぐ冷蔵庫へ
  • 生魚の再冷凍・放置に注意

👉 見た目・においが普通でも中毒を起こすことがあります。


7|ジャガイモ(芽・皮の緑色部分)

●原因

毒素 ソラニン/チャコニン が、

  • 皮の緑色部分
    に多く含まれます。光が当たると増加します。

加熱しても減りません。身近な食品に潜む中毒

●症状

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛
  • 頭痛
  • めまい

子どもの食中毒が多く報告されています。

●予防

  • 芽は深くえぐって除去
  • 緑色の皮の部分は厚くむく
  • 古くなったジャガイモは使わない

👉 給食でも問題になることがある、非常に有名な中毒です。


8|子ども向けサプリメント

●原因

グミタイプなど、“お菓子のようで食べやすい”ことが逆に危険。
複数粒を一度に食べてしまう子も少なくありません。

また、ビタミン・ミネラルには 「耐容上限量」 が設定されており、
超えると健康被害が起こり得ます。

●症状

サプリの種類によるが、

  • 高カルシウム血症
  • 腎機能障害
  • 体重増加不良
    などが起こる恐れがあります。身近な食品に潜む中毒

●予防

  • 必要性は医療者・栄養士と相談
  • 子どもが自分で開けられない場所に保管
  • 「お菓子感覚」にならないよう説明

👉 基本は“食事がベース”。サプリでバランスは補えません。


おわりに|“先回りの安全”が中毒を防ぎます

子どもは日々成長し、昨日できなかったことが今日できるようになります。

だからこそ大切なのは、
「今は届かないから大丈夫」ではなく「次に届くようになるかもしれない」
という視点です。

中毒は、知っていればほとんどが予防できます。
あなたのお子さんの安全を守るために、今日から少しだけ環境を見直してみてください。