目次
― 小児科専門医が教える“受診の目安と家庭でできるケア” ―
🌱 はじめに
「赤ちゃんの鼻がフガフガ言って苦しそう」
「寝ているときに口を開けて呼吸しているけど大丈夫?」
外来でもとても多い相談です。
特に兄弟がいるご家庭では、保育園などから風邪をもらってきて、
家庭内で兄弟どうしが風邪をうつし合うことも珍しくありません。
そのため、下の子の鼻づまりや鼻水に悩む保護者はとても多いです。
実は、赤ちゃんの鼻づまりの多くは病気ではなく自然な反応です。
生後3か月ごろまでは口で上手に呼吸ができないため、
少しの鼻づまりでも目立ちやすく、息が苦しそうに見えることがあります。
今回は、小児科専門医の立場から、
鼻づまりの原因・家庭でできるケア・受診の目安をやさしく解説します。
👃 赤ちゃんの鼻づまりが起こる理由
赤ちゃんは基本的に鼻呼吸ですが、
鼻の穴がとても狭いため、ほんの少しの粘液やホコリでも空気の通りが悪くなりやすい構造をしています。
乾燥した季節やエアコンの使用中は、
粘膜が乾いて鼻水が固まり、詰まりやすくなります。
また、ミルクの吐き戻しが鼻に逆流したり、
軽いウイルス感染によって一時的に鼻粘膜が腫れることもあります。
👉鼻の構造そのものが狭いため、軽い鼻水や乾燥でも詰まりやすいのが赤ちゃんの特徴です。
🍼 哺乳中の“鼻づまりサイン”を見分ける
赤ちゃんの鼻づまりを見極める上で、ミルクの飲み方はとても大事なサインです。
赤ちゃんはミルクを飲むとき、乳首をくわえると口が完全に塞がります。
その状態で長くしっかり吸い続けられるなら、
鼻はしっかり通っている証拠です。
一方で、
- 途中で何度も乳首を離す
- 苦しそうに顔をしかめる
- 飲む量が明らかに減っている
といった様子があれば、鼻が詰まって苦しいサインです。
そんなときは、次に紹介するケアを試してみてください。
👉長く吸えていれば鼻は通っています。途中で口を離すようなら、鼻づまりを疑いましょう。
🏠 家庭でできるケア
① 加湿を保つ
乾燥は鼻づまりの大敵です。
- 加湿器を使う
- 洗濯物を部屋干しする
- お風呂上がりの湿気を活用する
② 鼻吸いは“お風呂上がり”がベスト
お風呂の湿気で鼻の中が潤っており、鼻水が柔らかくなって吸いやすくなります。
- 電動タイプは吸いすぎ防止機能付きが安心
- 手動タイプは吸う力を弱めに
- 吸いすぎは粘膜を傷つけるため1日数回まで
※綿棒を使う場合は「赤ちゃん用(先が細いもの)」で、浅くそっと拭き取る程度に。
👉入浴後の吸引が最も効果的。無理せず優しくケアしましょう
🌙 夜間の咳・嘔吐と鼻づまりの関係
夜中に「咳が多くて起きてしまう」「咳と一緒に吐いてしまう」という相談も多く聞かれます。
実は、これも鼻汁(鼻水)によることが多いのです。
仰向けに寝ていると、鼻の奥に溜まった鼻汁が喉の方へ流れ込み、
それが刺激となってむせ込みや咳、嘔吐を引き起こすことがあります。
そんなときは、夜中でも一度鼻吸いをしてあげるだけで、
咳き込みが落ち着くケースもあります。
眠っているときでも呼吸が苦しそう、咳で何度も起きてしまうようなら、
無理のない範囲で鼻を吸ってあげましょう。
👉夜間の咳や嘔吐も、鼻を整えることで改善することがあります。
③ 寝る姿勢を少し工夫
平らに寝かせると鼻水が溜まりやすくなります。
タオルを背中や肩の下に敷いて少し上体を傾けると、呼吸がしやすくなります。
👉少しの角度の工夫で、赤ちゃんの眠りがぐっと楽になります。
④ 室内環境を整える
- 部屋を清潔に(換気・掃除)
- タバコやお香、ペットの毛などの刺激を避ける
- エアコンの風が直接当たらないように
👉刺激を減らし、赤ちゃんが過ごしやすい空気を保つことが大切です。
⚠️ 受診が必要なサイン
鼻づまり自体は自然に治ることが多いですが、
次のような場合は早めに小児科を受診しましょう。
- 発熱がある
- ミルクをほとんど飲めない
- 呼吸が苦しそう(胸がペコペコへこむ)
- 鼻水が黄色や緑色で臭う
- 鼻づまりが1週間以上続く
特に**新生児(生後1か月未満)**では、
ほんの少しの鼻づまりでも呼吸がしづらくなることがあります。
この時期は、早めの受診をおすすめします。
☀️ まとめ
- 赤ちゃんの鼻づまりは多くが一時的で、病気ではありません。
- 長くミルクを飲めるなら、鼻の通りはしっかり確保されています。
- 夜間の咳や嘔吐も、鼻汁が原因のことがあります。
- 家庭では「加湿」「お風呂上がりの吸引」「環境整備」が基本。
👶 鼻づまりも、赤ちゃんが外の世界に慣れていく過程のひとつ。
焦らず、やさしく見守ってあげてください。

