赤ちゃんのおへそケア ― 小児科専門医が臍帯脱落後の管理について解説します

赤ちゃんのおへそケア ― 小児科専門医が臍帯脱落後の管理について解説します


🌱 はじめに:小さなおへそにも、大切な役割があります

赤ちゃんが生まれると、まず切り離されるのが「へその緒」。
お母さんと赤ちゃんをつないでいた大切な命のリレーの跡です。

臍帯(さいたい:へその緒)は生後7〜14日ほどで自然に乾燥し、やがて脱落します。
この過程は自然なもので、ほとんどの場合は特別な処置をしなくてもきれいに治ります。

ただし、乾燥が遅れたり、早くから浴槽に入れることで雑菌が入ると感染リスクが高まるため、適切なケアが重要です。

今回は、臍帯脱落後の管理を中心に、「家庭でできるおへそケア」について小児科専門医の立場から解説します。


🧼 臍帯が取れるまでの基本的なケア

臍帯が乾くまでは、清潔にして乾かすことが最も大切です。

日々のケアのポイント

  • 沐浴後は、へその周囲の水滴を清潔なタオルや綿棒でやさしく拭く。
  • おむつは臍が露出するようにあて、尿や汗で汚染されないようにする。
  • 黄色い分泌液がついても、少量であれば生理的範囲。
  • 無理にへその緒を取ろうとせず、自然脱落を待つ。

ガーゼや絆創膏で覆うと乾燥を妨げてしまうため、基本的には不要です。
自然乾燥が一番のケアです。


🛁 お風呂に入れていいのはいつから?

臍が完全に乾くまでは、大人と同じ浴槽での入浴は避けましょう
臍の傷口がまだ閉じていない状態で湯船につかると、雑菌が入り感染するおそれがあります。

この時期は沐浴(ベビーバス)を継続し、臍がしっかり乾いてから家族と同じ浴槽に入るようにしましょう。

通常、臍は脱落後1〜2週間で乾燥が進み、1か月健診で医師が確認して問題なければ入浴OKとなります。

👉 「臍が乾いてから浴槽デビュー」が安全の合図です。


🌿 臍帯脱落後にみられる一時的な変化

臍が取れた直後は、まだ皮膚が再生途中のため少し湿って見えることがあります。
少量の分泌液やかさぶたは自然な経過であり、1〜2週間のうちに乾燥していきます。

ただし、以下のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 周囲が赤く腫れている
  • 悪臭を伴う膿が出ている
  • 発熱・哺乳低下・元気がない

このような場合は、**臍炎(さいえん)**という感染症の可能性があるため、早めに受診を。
臍炎については、次回の記事で詳しく解説します。


💠 臍ヘルニア・臍肉芽腫について

おへそがぷくっと膨らむ「臍ヘルニア」や、赤く湿ったできものが見られる「臍肉芽腫」も、赤ちゃんではよく見られる状態です。

いずれも多くは自然に治るものですが、経過観察や医療的処置が必要になる場合もあります。
これらについても、次回以降のブログでそれぞれ詳しくご紹介していく予定です。

👉 おへそに少し変化があっても、慌てず観察することが大切です。


🌤️ 今のケアの基本は「清潔にして乾かす」

以前はアルコールやヨードでの消毒が一般的でしたが、現在は研究の結果、
**「消毒をしてもしなくても、臍炎の発症率に大きな差はない」**ことが分かっています。

そのため、最近では“必ずしも消毒が必要とは限らない”という考え方が主流になっています。
つまり、臍が乾くまで過度に消毒にこだわる必要はありません

👉 消毒は「やっても良い」ケアですが、「頑張りすぎて頻繁に行う必要はない」――
そのくらいの気持ちで十分です。


☀️ まとめ

赤ちゃんのおへそは「生まれて初めての小さな傷あと」。
時間とともに自然に治っていく過程を見守ることが、何よりのケアです。

  • 沐浴後はやさしく乾かす
  • 臍が乾くまでは浴槽に入れない
  • 赤み・膿・悪臭があれば早めに受診

これを守れば、ほとんどの赤ちゃんはきれいなおへそになります。

👉 清潔に保ち、やさしく乾かすことこそが、いちばん効果的なおへそケアです。