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🌱 はじめに:赤ちゃんのおへその赤み、気になりませんか?
赤ちゃんのおへそは、生後まもなくから「へその緒が取れた」「まだ湿っている」「少し赤い」といった変化が続くため、
保護者の方が最も気にされる部位の一つです。
多くの場合は問題ありませんが、なかには「臍肉芽腫(さいにくげしゅ)」や「臍炎(さいえん)」と呼ばれる状態が見られることがあります。
どちらも新生児期に比較的よくみられるものですが、性質や対応が少し異なります。
この記事では、臍の赤みや湿りの原因、受診の目安、家庭でのケアのポイントを
小児科専門医の立場から解説します。
💠 臍肉芽腫(さいにくげしゅ)とは
臍肉芽腫は、臍帯(へその緒)が取れたあとに赤く湿った小さなできものが残る状態です。
これは感染ではなく、皮膚の再生過程でできる**肉芽(にくげ)**という新しい組織が一時的に増えたもの。
👶 主な特徴
- 赤くつやのある丸いできもの(数mm〜1cm程度)
- 少量の透明〜淡い血液混じりの分泌液がにじむ
- 痛みや発熱はない
- 赤ちゃんの元気や哺乳状態は良好
🩺 治療
軽い場合は自然に乾いて治ることもありますが、長引く場合や分泌液が多い場合には次のような処置を行います。
- 硝酸銀による焼灼:肉芽を軽く焼き縮める方法。ほとんど痛みはありません。
- 糸で縛る(結紮)法:できものの根元を糸で結び、数日後に自然に脱落させます。
- ステロイド軟膏の塗布:炎症が軽度な場合に使用します。
👉 臍肉芽腫は「治りかけが少し長引いた状態」。焦らず医師の指示を守ればきれいに治ります。
🔥 臍炎(さいえん)とは
臍炎は、臍の傷口から細菌が侵入して感染が起きた状態です。
臍肉芽腫と見た目が似ていますが、炎症の深さや広がり方が異なり、放置すると悪化することがあります。
👶 主な症状
- 臍のまわりが赤く腫れている
- 膿や悪臭を伴う分泌物がある
- 熱が出る、触ると痛がる
- 哺乳が悪く、ぐったりしている
🩺 治療の考え方
臍炎の治療は、症状の重さ(重症度)によって変わります。
- 軽症〜中等症(炎症が臍の周囲に限局している)
→ 抗菌薬入り軟膏などによる局所療法で改善します。
(外用治療のみで改善する例が多いと報告されていますdownload (7)) - 重症(広範囲の発赤・膿・発熱を伴う)
→ **抗菌薬の全身投与(内服または点滴)**が必要です。
感染が深部に及ぶと蜂窩織炎や敗血症の原因となるため、入院での管理が必要になることもあります。 - 治りが悪い・再発を繰り返す場合
→ 臍の奥に尿膜管が残っている尿膜管遺残の可能性があり、超音波検査で確認しますdownload (7)。
👉 臍炎は早期に見つけて適切に治療すれば、跡を残さず治ります。
🏠 家庭でのケアと受診のタイミング
臍が少し赤い、湿っている、においがする――
そんなときは自己判断せず、早めに小児科や産科で相談しましょう。
見た目では臍肉芽腫と臍炎の区別が難しいため、迷ったときこそ医師の診察が大切です。
家庭でできるケア
- 沐浴後は清潔な綿棒でやさしく水分を拭き取る
- 臍が乾くまでは湯船に入らず沐浴を継続
- 臍がじゅくじゅくしているときはガーゼで覆わない
- 消毒は「やりすぎない」が基本(乾燥を妨げるため)
受診をおすすめするサイン
- 臍から膿や血がにじむ
- 臍まわりの赤みが広がっている
- 発熱・哺乳不良・機嫌が悪い
- 1か月健診の時点でまだ湿っている
👉 「このくらいで受診していいのかな?」と思ったら、ぜひ相談を。
早めに見てもらうことで、軽い処置で済むことがほとんどです。
☀️ まとめ
- 赤ちゃんのおへその赤みや湿りは、多くが自然な治りの途中です。
- 臍炎の場合は早期の受診が大切。治りが悪いときは尿膜管遺残のこともあります。
- 自宅では、清潔にして乾かすことが基本。消毒はやりすぎなくて大丈夫。
- 判断に迷ったら、1か月健診や小児科で早めに相談を。
👉 おへそは、生まれたあとの小さな“がんばりのあと”。焦らず、ゆっくり見守ってあげてください。

