目次
はじめに
前回の記事では、「嘔吐や下痢が続く子どもの胃腸炎」についてお話ししました。
今回はその中でも特に**乳幼児で重症化しやすい『ロタウイルス』**について解説します。
ロタウイルスは、子どもの間で非常に一般的な感染症であり、
嘔吐・下痢・発熱を伴う脱水症状を起こしやすい代表的なウイルスです。
また、症状が強く出やすく、入院が必要になるケースも少なくありません。
ロタウイルスとは
**ロタウイルス(Rotavirus)**は、主に乳幼児に感染するウイルス性胃腸炎の原因ウイルスです。
二本鎖RNAをもつウイルスで、A群ロタウイルスが人の感染症のほとんどを占めます。
日本では11〜5月頃に流行する傾向があり、
保育園などの集団生活で家庭内感染へと広がることも多いです。
ただし、現在は定期接種となったロタウイルスワクチンによって、
重症例や大規模な流行は大きく減少しました。
潜伏期間と感染経路
- 潜伏期間:2〜4日
- 感染経路:便や嘔吐物を介して口から入る「糞口感染」
非常に感染力が強く、少量のウイルスでも感染が成立します。
トイレ・オムツ交換・吐物の処理後など、手洗いと消毒の徹底が大切です。
主な症状
1〜3日の潜伏期間を経て、以下の症状が現れます:
- 急な嘔吐(1〜2日続く)
- 水のような下痢(4〜7日続く)
- 発熱(38〜39℃程度)
- 白っぽい便(脂肪が混じるため)
ノロウイルスに比べて下痢が長引く傾向があり、
中には「胃腸炎関連けいれん」を起こす子もいます。
👉 嘔吐・下痢のケア方法は、前回の胃腸炎記事を参考にしてください。
診断と治療
診断は症状や流行状況から判断し、便の迅速検査で確定することもあります。
特効薬はなく、基本は脱水予防を中心とした対症療法です。
- 嘔吐が続く場合は少量ずつの水分摂取を
- 飲めない・ぐったりしている場合は医療機関で点滴加療を検討
- 食事制限は不要。食べられる物からでOK(ただし脂っこい物・刺激物は避けましょう)
👉 「少しでも口にできる」ことが回復の第一歩です。無理せず焦らず。
登園・登校の目安
- 嘔吐・下痢が治まり、食欲と元気が戻っている
- 水分や食事をしっかり摂れている
便中のウイルスは1〜2週間ほど残るため、症状が落ち着いても油断せず、
家庭内での手洗い・タオル共有の回避を続けましょう。
家庭での感染対策
ロタウイルスはアルコールに強いため、
**次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)**が有効です。
吐物・便の処理のポイント
- 手袋・マスクを着用
- ペーパーで静かに覆って拭き取る(飛び散らせない)
- 0.1%濃度の次亜塩素酸で消毒
- 二重袋にして廃棄
- 処理後は石けんでしっかり手洗い
👉 「吐いた直後の一手間」で、家族への感染をぐっと防げます。
ワクチンについて
ロタウイルスには2種類の経口ワクチンがあります:
- ロタリックス®(1価):2回接種(生後6〜24週まで)
- ロタテック®(5価):3回接種(生後6〜32週まで)
どちらも生後2か月から接種開始となります。
これらのワクチンは、重症ロタウイルス感染症をほぼ完全に防ぐことが確認されています。
また、しばしば誤解される「腸重積症との関連」についても補足します。
💡 腸重積症との関係
- ロタウイルス感染そのものでも腸重積を起こすことがあります。
- ワクチンによって腸重積のリスクがわずかに上がる可能性は報告されていますが、
感染によって起こる腸重積のリスクの方が高いと考えられています。 - そのため、ワクチンで腸重積を防ぐ側面もあるといわれています。
⚠️ こんなときは受診を
接種後に
- 激しい泣き方を繰り返す
- 嘔吐や血便を伴う
- ぐったりして顔色が悪い
といった様子がみられた場合は、腸重積の初期症状の可能性もあるため、
すぐに医療機関に相談しましょう。
👉 ワクチンは「副作用が怖い」より、「感染で重症化するリスク」を減らす方が大きい。
まとめ
- ロタウイルスは乳幼児に多い胃腸炎の代表的ウイルス。
- 潜伏期間は2〜4日で、便や嘔吐物から感染。
- 嘔吐・下痢・発熱が主症状。脱水に注意!
- 特効薬はなく、対症療法と水分補給が基本。
- アルコールに強く、塩素系漂白剤での消毒が必須。
- ワクチンは重症化を防ぐ有効な手段。
- 感染そのものでも腸重積が起こり得るため、血便が出た場合は要受診。
👉 嘔吐下痢の対応は「こどもの胃腸炎」の記事も参考に。
焦らず、しっかり水分を補いながら回復を見守りましょう。

