繰り返すおむつかぶれの悩み ― 小児科専門医が解決します

繰り返すおむつかぶれの悩み ― 小児科専門医が解決します

はじめに

「こまめにおむつを替えているのに、また赤くなってしまった」
「一度よくなったと思ったら、数日でぶり返した」

そんな“繰り返すおむつかぶれ”に悩む親御さんはとても多いです。
赤ちゃんの皮膚は大人の約半分ほどの厚さしかなく、バリア機能も未熟。
ほんの少しの刺激でも炎症を起こしてしまいます。

特に、おむつの中は高温多湿で、汗・尿・便・摩擦といった刺激が常に加わる環境です。
そこにスキンケアのちょっとしたずれが重なることで、治りかけても再発しやすくなります。

今回は、そんな「繰り返すおむつかぶれ」の原因と対策を、小児科専門医の視点で解説します。

おむつかぶれはなぜ起こる?

おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)は、尿・便・摩擦による皮膚の炎症です。
最初はうっすら赤いだけでも、刺激が続くとブツブツやただれに発展することがあります。

主な原因は3つ

  1. 尿や便の化学的刺激
     尿に含まれるアンモニア、便に含まれる消化酵素や細菌が皮膚を刺激します。
     おむつの中で尿と便が混ざると、アルカリ性になり、皮膚のバリアが壊れやすくなります。
  2. 蒸れと摩擦
     おむつ内は温かく湿った環境。皮膚がふやけた状態でこすれることで炎症が起こりやすくなります。
     吸収力の高い紙おむつでも、蒸れによるダメージは避けられません。
  3. 洗いすぎ・拭きすぎ
     清潔にしようと強く拭き取ることで、皮膚の保護膜(皮脂)まで落ちてしまい、かえって悪化することがあります。

👉 清潔を意識しすぎて「拭きすぎている」ことも、おむつかぶれを繰り返す原因になります。


繰り返すのはなぜ?

「しっかりケアしているのに何度もできる」――その背景には、次のような原因があります。

  1. 治りきる前に刺激が再開している
     皮膚が見た目に良くなっても、バリア機能の回復には数日〜1週間かかります。
     保湿や軟膏の塗布を早めにやめると、再び炎症を起こしやすくなります。
  2. カンジダ(真菌)感染が隠れている
     赤みが強く、ブツブツが輪のように広がる場合は、カンジダ性皮膚炎のことがあります。
     この場合は保湿剤やステロイドだけでは改善しません。抗真菌薬が必要です。
  3. 下痢・抗生物質の使用後
     便の回数が多くなると皮膚への刺激が増し、腸内環境の変化でカンジダも繁殖しやすくなります。
  4. 夜間・外出時のおむつ交換の間隔が長い
     特に夜間は気づかないうちに尿がたまり、皮膚が長時間湿った状態になります。

👉 「皮膚が治ったあとも、3日ほどは保護ケアを続ける」ことが再発予防のコツです。


ご家庭でできるケアと予防

💧 おむつ替えの基本

  • 汚れたらすぐに交換(特に便のあと)
  • おしり拭きはこすらず、押さえて吸い取るように
  • 下痢時やおむつかぶれがあるときは、ぬるま湯で洗い流すのもおすすめ

🧴 保護ケア

  • おむつ交換のたびに、ワセリン・亜鉛華軟膏・保護クリームを薄く塗布
  • 乾いて見えても皮膚のバリアは弱いため、数日続けて使用
  • 湿疹やただれがあるときは、医師の指示で短期間のステロイド外用を行うこともあります

🌤 蒸れ対策

  • 自宅では、1日に数回**おむつを外して“おしりを乾かす時間”**をつくる
  • 部屋を暖かくして、数分でも空気に触れさせると皮膚の修復が促されます

🛁 入浴と保湿

  • 石けんは使いすぎず、手のひらで優しく洗う
  • 入浴後5分以内に保湿剤を塗る
  • 乾燥は摩擦と同じくらい炎症を悪化させます

👉 “洗う・守る・乾かす”をセットで行うと、繰り返しにくくなります。


医療機関での治療

🩺 軽症〜中等症

スキンケアと保護軟膏で改善が見られます。
炎症が強い場合には、弱いステロイド外用薬を数日使って赤みと炎症を抑えます。

🦠 カンジダ性皮膚炎が疑われる場合

  • 乳白色のカスや小さな赤い点が広がるときはカンジダの可能性
  • この場合は抗真菌薬(ぬり薬)を1〜2週間使用します。

💊 再発予防のアドバイス

  • 完全に治った後も、しばらく保護クリームを続ける
  • 下痢や便秘のときは、皮膚症状がなくても予防的に塗っておくとよい

👉 「同じ場所に繰り返す」場合は、カンジダ感染の有無を一度確認しましょう。


受診の目安

次のような場合は早めに受診しましょう。

  • 数日経っても改善がない
  • 赤みが強く、痛がる・眠れない
  • 白っぽいかさぶたや点状の発疹が広がっている
  • おむつの外(太ももやお腹)にまで赤みがある
  • 発熱や機嫌の悪さを伴う

ご家庭で確認する際のポイント

この記事では写真は掲載しませんが、
「これかな?」と思う発疹があれば、“おむつかぶれ カンジダ”など病名で画像検索して確認してみてください。
自己判断で市販薬を試すよりも、写真を撮って医師に見せる方が確実です。

👉 写真を見比べるだけで安心することもありますが、迷ったら相談を。


小児科専門医からのまとめ

  • おむつかぶれは、清潔+乾燥+保護で防げる。
  • 見た目が治っても皮膚の回復には数日かかる。
  • 繰り返す場合はカンジダ感染の可能性も視野に。
  • 再発予防には「治ったあと3日ルール」を意識。

👉 赤ちゃんのおしりは、デリケートでよく頑張っている証拠。焦らず優しくケアしてあげましょう。