生後3か月未満の発熱は要注意! ― 小児科医が大切にしている視点

生後3か月未満の発熱は要注意! ― 小児科医が大切にしている視点

2025/10/02(木)

赤ちゃんが熱を出すと、多くの親御さんが「大丈夫だろうか?」「すぐに病院に行った方がよいのか?」と不安になります。

特に 生後3か月未満の乳児の発熱 は、年長児とは異なり、医療現場では特別に重要視される症状です。

今回は、最新の小児科診療指針をもとに、この時期の発熱にどう向き合うべきかを解説します。

なぜ生後3か月未満の発熱は特別か?

  • 生後3か月未満の乳児は免疫機能が未発達であり、重症細菌感染症(Severe Bacterial Infection: SBI) のリスクが高いことが知られています。
  • 観察研究では、この時期に発熱で救急を受診した乳児のうち 7〜11%にSBIがみられた と報告されています。
  • 新生児期(生後28日以内)は特にリスクが高く、発熱は「ただの風邪」では済まされないサインです。

発熱の原因となる微生物

  • ウイルス:エンテロウイルス、パレコウイルス、RSウイルス、そして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。
  • 細菌:B群溶血性レンサ球菌(GBS)、大腸菌、リステリア菌など。これらは敗血症や髄膜炎を引き起こすことがあります。
  • なかにはウイルスと細菌の両方が同時に感染する「混合感染」の可能性もあります。

医療現場での評価と検査

診察で重視する点

  • バイタルサイン(呼吸数、心拍数、血圧、SpO₂)
  • 大泉門膨隆、啼泣の様子、呼吸の努力、四肢の活発さ
    これらから全身状態を丁寧に評価します。ただし新生児は所見が不明瞭なことも多いため、慎重さが求められます。

検査

  • 血液検査・尿検査・血液培養・尿培養
  • 必要に応じて 髄液検査 も行われます。
  • 新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、一部のウイルスに対しては専用の迅速検査(鼻や咽頭にスワブをいれる検査)を用いて短時間で診断をつける事ができます。しかし、混合感染の可能性もあるため注意が必要です。

入院と治療の方針

  • 新生児発熱では 入院で経過観察するケースが多い です。
  • 抗菌薬は「使用の閾値を低め」にし、最終的には培養結果や臨床経過に応じて投与の継続を判断します。
  • 発熱のみで全身状態が安定していても、進行が早い可能性を考慮して慎重な管理が推奨されます。

親御さんに伝えたいこと

  • 「生後3か月未満の発熱=要受診」 と覚えてください。
  • 自宅で解熱薬を与えて様子を見るのではなく、すぐに医療機関を受診することが重要です。
  • 「ミルクを飲まない」「ぐったりしている」「呼吸が苦しそう」などの症状があれば、夜間や休日でも救急をためらわないでください。

参考

  • Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al. Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old. Pediatrics. 2021;148(2):e2021052228.

まとめ

  • 生後3か月未満の発熱は「重症感染症を見逃さない」ことが最優先。
  • 発熱は単なる症状ではなく、精査・入院・抗菌薬の判断につながる重要なサイン。
  • 親御さんにできる最大のサポートは、速やかな受診です。