「最近、子どもが夜更かし気味で朝起きられない」「学校に行きたがらないけれど、夜は遅くまでスマホを触っている」──そんな相談を受けることが増えています。
子どもの睡眠は、体の成長や脳の発達、そして心の健康に直結しています。
しかし近年、日本の子どもたちの睡眠環境は大きく変わり、ただの夜更かしでは済まされない“睡眠障害”が問題になっています。
目次
① 睡眠不足が子どもに与える影響
睡眠は「成長ホルモンの分泌」「学習した記憶の定着」「感情の安定」に欠かせません。
しかし、日本の子どもは世界的に見ても睡眠時間が短いことが知られています。
睡眠不足の子どもに起こりやすいこと:
- 集中力・記憶力の低下 → 勉強しても覚えられない、忘れやすい
- イライラや衝動性 → 癇癪、友達とのトラブル、暴言・暴力
- 不安定な情緒 → すぐ泣く、気分の浮き沈みが激しい
- 朝起きられない → 遅刻・欠席が増え、不登校につながる
👉「睡眠は“ただ休む時間”ではなく、“心と体を整える栄養”です。」
② 年齢ごとに異なる睡眠の問題
乳幼児期(0〜3歳)
- 夜泣きやコリックが多い時期です。
- コリックとは、生後2週間〜4か月ごろに見られる「激しく泣き続ける状態」を指します。原因ははっきりしていませんが、腸の動きや自律神経の未熟さが関係していると考えられています。(詳しくはこちらにまとめています。)
学童期(小学生)
- 夜驚症や夢遊病など「睡眠時随伴症」が出やすい時期。
- 「寝ているのに突然泣き叫ぶ」「歩き回る」などの行動が見られ、親御さんを驚かせます。
- 学校や習い事で生活が多忙化し、寝る時間が遅くなることも少なくありません。
思春期(中高生)
- 睡眠相後退症候群(夜型になり、夜は眠れず朝起きられない状態)が典型的です。
- 夜遅くまでスマホやゲームに夢中になり、体内時計がずれて朝起きられない。
- 背景には、起立性調節障害などの身体的要因もあり、「怠け」と誤解されやすい点に注意が必要です。
👉「“眠れない”には年齢ごとに理由があります。成長に合わせた理解が大切です。」
③ デジタルメディアと睡眠
スマホやゲーム、タブレットは子どもの生活に欠かせないものになっていますが、睡眠には大きな影響を与えます。
- ブルーライト:体内時計を遅らせ、眠気を誘うホルモン(メラトニン)の分泌を抑える。
- 心理的な興奮:SNSやゲームの刺激で布団に入っても頭が冴えてしまう。
- 長時間使用:使用時間が長い子ほど、22時以降の就寝率が高いことが報告されています。
👉「“あと5分のスマホ”が、翌日の元気を奪ってしまいます。」
④ 小学生の暴力行為の増加と睡眠
文科省や各種調査では、小学生の暴力行為件数がこの10年で5倍以上に増えていることが示されています。
研究では、遅い就寝や睡眠不足、長時間のゲームやスマホ使用が「イライラや攻撃的行動」と関連していることも報告されました。
👉「睡眠と行動は切り離せない関係にあります。乱れた生活リズムが“トラブルの種”になるのです。」
⑤ 親が気づきにくい「睡眠障害のサイン」
睡眠の問題は夜だけでなく、日中の行動に現れます。
- 朝なかなか起きられず、不機嫌が続く
- 朝食を食べない、または日中の食欲が不安定
- 授業中にぼーっとする、集中できない
- 成績が下がってきた
- 感情の起伏が激しい(泣きやすい、怒りっぽい)
- 「疲れた」「眠い」と頻繁に口にする
👉「普段の小さな変化が、睡眠からのSOSかもしれません。」
⑥ 子どもの睡眠を守るためにできること
まずは「睡眠衛生」と呼ばれる生活習慣を整えることから始めます。
- 朝は同じ時間に起こし、太陽の光を浴びる
- 朝食をしっかりとる(体を活動モードに切り替えるスイッチ)
- 寝る30分前にはテレビやスマホをオフ
- 日中にしっかり体を動かす
- 寝室の環境を整える(暗く静かに、快適な温度に)
こうした工夫で改善するケースは多いですが、よくならない場合は起立性調節障害や発達特性など医学的な要因を確認する必要があります。
👉「生活習慣の工夫と医学的な視点、どちらも大切です。」
まとめ
最近の子どもの睡眠障害は「ただの夜更かし」ではなく、発達・学習・メンタルヘルス・不登校とも深くつながる大きな問題です。
- 「朝起きられない=怠け」ではなく、医学的な要因の可能性もあります。
- 学校や家庭生活に影響が出ている場合は、早めに小児科や専門機関に相談してください。
👉「眠れる子は伸びる子。しっかり眠ることは、心と体を育てる最大の投資です。」

