小児科外来では「赤ちゃんが熱を出したので解熱薬を使ってもいいですか?」という質問をよくいただきます。
特に新生児(生後28日以内)の場合、親御さんとしては「熱を下げて楽にしてあげたい」という気持ちになるのは自然なことです。
しかし、専門医の立場からはっきり申し上げると、新生児に解熱薬を使用するべきではありません。
その理由は以下のとおりです。
発熱は防御反応である
まず大前提として、発熱は「悪者」ではありません。
赤ちゃんの発熱は、体がウイルスや細菌と戦っている証拠です。
熱が出ることで免疫の働きが強まり、病気を治す力が高まります。
つまり、熱は「悪者」ではなく、むしろ体が病気と戦っているサインなのです。
なぜ新生児に解熱薬は危険なのか
1. 重い病気を隠してしまう
新生児の発熱は、肺炎や髄膜炎、敗血症などの重症感染症の初期症状であることが少なくありません。
解熱薬で一時的に熱を下げてしまうと、症状が軽く見えてしまい、診断や治療が遅れるリスクがあります。
2. 体温調節機能が未熟
新生児は大人や年長の子どもに比べて体温を調節する力が弱く、わずかな変化でも体に大きな負担がかかります。
解熱薬で体温が下がりすぎると、低体温になり、体力を消耗して逆に危険です。
3. 解熱薬の副作用が強い
代表的な解熱薬について、具体的なリスクを挙げます。
- アセトアミノフェン
→ 小児に広く使われます。海外では痛み止めとしての使用方法が記載されているところもありますが、日本国内では使用経験がなく、安全性が確率されていません。 - イブプロフェン
→ 新生児には禁忌。腎臓への負担、消化管障害、さらには循環への悪影響が出る可能性があります。 - ジクロフェナク、メフェナム酸、インドメタシン
→ 特に小児では急激な体温低下やショックの報告があり、使用すべきではありません。
このように、薬そのものが赤ちゃんにとって大きなリスクになることも理由の一つです。
親御さんにできること
- 新生児が熱を出したら、解熱薬を使うのではなく、必ず医療機関を受診してください。
- 熱を下げることよりも、「原因を突き止めること」がはるかに重要です。
- ぐったりしている、ミルクを飲まない、呼吸が苦しそう…こうした症状があれば、夜間・休日でも救急外来を受診してください。
まとめ
- 新生児の発熱は「ただの風邪」と思わず、重症感染症を疑うべきサイン。
- 解熱薬は、新生児では診断を遅らせ、低体温や副作用などのリスクを伴うため原則使用しない。
- 親御さんにできる最も大切な行動は、迷わず医療機関を受診することです。
👉 新生児期の「熱」は、赤ちゃんの命を守るための大切な警告サイン。解熱薬で隠すのではなく、必ず専門医に相談してください。

