お子さんが発熱すると、親御さんにとってはとても心配な瞬間です。
「すぐに薬を使った方がいいの?」「熱が高いと危険なのでは?」と焦ってしまうこともあるでしょう。
しかし、小児の発熱は必ずしも「すぐに下げなければならないもの」ではありません。
今回は、小児科専門医の立場から 発熱の意味・解熱剤の使い方・受診の目安 を、できるだけわかりやすく解説します。
目次
① 発熱そのものは体の防御反応
子どもが熱を出すと「熱があること自体が悪い」と考えがちですが、実はそうではありません。
発熱は、ウイルスや細菌が体に侵入したときに免疫がしっかり働くための防御反応です。
体温が上がることで、
- 白血球やリンパ球といった免疫細胞の働きが活発になる
- 病原体の増殖が抑えられる
といったメリットがあります。つまり「熱=体が闘っている証拠」でもあるのです。
👉「熱は悪者ではなく、体を守るサイン」と受け止めてあげてください。
② 解熱剤を使う目的は「つらさの軽減」
解熱剤は「熱を下げる」ことだけが目的ではありません。
むしろ大切なのは、お子さんがどれだけつらそうか という視点です。
たとえば、
- 熱が高くて水分を受け付けない
- 夜眠れず、休養がとれない
- 顔をしかめてぐったりしている
こうした場面では解熱剤を使うことで「少し楽になる」ことが期待できます。
逆に、熱があっても元気に遊んでいるときに無理に使う必要はありません。
「数字」ではなく「様子」で判断するのがポイントです。
👉「解熱剤は“体温計の数字”のためではなく、“お子さんのつらさを和らげる”ために使うもの」と考えてください。
③ 使用の目安とタイミング
一般的な目安は 38.5℃を超えてつらそうなとき。
ただしこれはあくまで目安であり、38℃前後でもぐったりしていれば使って構いませんし、39℃を超えても元気なら見守るだけでも大丈夫です。
特に夜間は、眠れず体力が削られると回復が遅れることがあります。
「夜ぐっすり眠れるように」「水分がとれるように」使うのはとても合理的です。
👉「解熱剤は“体温計”ではなく“子どもの表情”を見て判断」と覚えておきましょう。
④ 小児に使える解熱剤
アセトアミノフェン(カロナール®など)
最もよく使われる解熱剤で、世界的にも安全性が確立しています。
- 用量:体重1kgあたり10〜15mgを4〜6時間ごと
- 剤形:シロップ、粉薬、錠剤、坐薬と多彩で、小さい子から幅広く使える
- 副作用:少ないが、過量投与で肝臓に負担がかかることがある
👉「小児でまず選ばれる基本のお薬です。」
イブプロフェン(ブルフェン®など)
アセトアミノフェンが効きにくい場合や使えない場合に用います。
- 用量:体重1kgあたり3〜6mgを6時間ごと
- 副作用:胃腸障害、腎機能への影響のほか、水痘やインフルエンザ時は脳症のリスクが懸念される
- 注意:乳児や持病のある子には使えない場合がある
👉「便利ですが、使い方に少し注意が必要なお薬です。」
⑤ 坐薬と内服薬、どっちがいい?
- 坐薬は、嘔吐して飲めないときにとても役立ちます。ただし下痢があると吸収が不安定になり、効きにくいことがあります。
- 内服薬は、吸収が安定しているため通常はこちらが優先されます。
研究によると効果に大きな差はありませんが、状況によって使い分けることが重要です。
👉「飲めるときは内服、飲めないときは坐薬」で考えてください。
⑥ 投与後すぐに吐いた・坐薬が出てしまったら?
「ちゃんと効いたかな?」と心配になる場面です。
- 内服薬:飲んで30分以内に吐いてしまったら、吸収されていない可能性があります。
- 坐薬:入れてすぐに出てしまった場合、座薬の形がそのまま残っていれば吸収されていない可能性が高いです。ただし少し時間が経っていて座薬の形が残っていない場合は、一部はしっかりと吸収されていると考えます。
👉 再投与するかどうか迷ったら、自己判断せずに必ず医師や薬剤師に連絡をとってください。
⑦ 必ず受診が必要なサイン(レッドフラッグ)
次のような症状があるときは、ただの発熱ではない可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。
- ぐったりして呼びかけに反応しにくい
- 水分がとれず、半日以上おしっこが出ていない
- 息が苦しそう、呼吸が早い/不規則
- 顔色が悪い、唇が紫色になっている
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐
- けいれんを起こした/長引いている
- 生後3か月未満で38℃以上の発熱
👉「少しでも『普段と違う』と感じたら、迷わず医療機関へ!」
小児科医からのまとめメッセージ
- 発熱は体を守る反応。数字よりもお子さんの表情を見て判断を。
- 解熱剤は「熱をなくす薬」ではなく「つらさを和らげる薬」。
- 小児で使うならアセトアミノフェンが基本。
- 投与後に吐いたり坐薬が出てしまったら、迷ったら必ず医療機関へ連絡を。
- 危険なサインがあれば、ためらわず受診を。
👉「解熱剤は“熱との戦い”ではなく、“子どもの安心”のために使ってくださいね。」

