学童・思春期の栄養問題― 食事の偏りと生活習慣の見直しを小児科専門医が解説

学童・思春期の栄養問題― 食事の偏りと生活習慣の見直しを小児科専門医が解説

はじめに

小学生になると給食が始まり、
中学生になると部活動や塾で生活リズムが大きく変わります。

この時期は、身体がぐっと成長する一方で、
食事内容や生活習慣が乱れやすい時期でもあります。

そして学童・思春期の栄養は、
実は“二極化”しやすいという特徴があります。

食べすぎによる肥満。
逆に、朝食欠食や無理なダイエットによるやせ。
お菓子やジュース中心の偏った食生活。

それらは単なる好き嫌いではなく、
成長期特有の身体変化と生活環境の変化が影響しています

この記事では、学童・思春期に起こりやすい栄養問題の背景と、
家庭で見直したいポイントを整理します。


学童・思春期は“栄養需要が最大になる時期”

思春期は人生で最も栄養が必要な時期のひとつです。

  • 身長が一気に伸びる(成長スパート)
  • 筋肉量が増える
  • 骨量が増える
  • 月経が始まる(女子)

この時期に必要なのは、

✔ エネルギー
✔ たんぱく質
✔ 鉄
✔ カルシウム
✔ 亜鉛

など、多岐にわたります。

👉 量だけでなく「質」が重要になります。


起こりやすい栄養問題①:肥満

学童期から増えやすいのが、

  • 間食の増加
  • 甘い飲料
  • 夜食
  • 運動不足

による体重増加です。

肥満は単に「体重が重い」という問題ではなく、

  • 将来の生活習慣病
  • 高血圧
  • 脂質異常
  • 自己肯定感の低下

などにも影響します。

ただし、
「筋肉増加による体重増加」と区別することも大切です。

👉 体重だけでなく、成長曲線の推移を見ることが重要です。


起こりやすい栄養問題②:やせ・栄養不足

一方で、

  • 朝食欠食
  • ダイエット志向
  • 食事量の減少
  • ストレスによる食欲低下

などから、栄養不足になるケースもあります。

特に女子では、

  • 鉄欠乏性貧血
  • 月経不順
  • 易疲労感

が問題になることがあります。

男子でも、
極端な食事制限は筋肉量の低下につながります。

👉 成長期の無理なダイエットはリスクが高いです。


朝食欠食の影響

朝食を抜くと、

  • 血糖値の乱高下
  • 集中力低下
  • 午後の過食
  • 生活リズムの乱れ

につながります。

特に思春期では、

夜更かし → 朝起きられない → 朝食抜き

という悪循環が起こりやすくなります。

👉 朝食は“栄養”だけでなく“生活リズムのスイッチ”です。


鉄不足は見逃されやすい

思春期の不調で多いのが、

  • だるさ
  • 立ちくらみ
  • 頭痛
  • 集中力低下

これらは起立性調節障害やストレスと重なりやすく、
背景に鉄不足が隠れていることもあります。

特に、

  • 月経がある女子
  • 偏食が強い子
  • スポーツをしている子

では注意が必要です。

👉 「なんとなく不調」は栄養のサインかもしれません。


生活習慣との密接な関係

学童・思春期の栄養問題は、
食事単体ではなく生活習慣とセットで考える必要があります。

  • 夜更かし
  • スマホ・ゲーム
  • 塾・部活による帰宅時間の遅れ
  • 家族での食事機会の減少

生活リズムの乱れは、そのまま食習慣の乱れにつながります。

👉 食事の見直しは、生活リズムの見直しでもあります。


受診を考えたいサイン

  • 成長曲線から明らかに外れてきた
  • 急激な体重増減
  • 月経異常
  • 強い倦怠感や立ちくらみ
  • 極端な食事制限や過食行動

これらがある場合は、
小児科での評価をおすすめします。

栄養だけでなく、
心理的背景の評価も重要になります。


家族でできる見直しポイント

学童・思春期の栄養問題は、
子ども本人だけに任せても解決しにくいものです。

この時期は「自立」と「環境」のバランスが大切です。
家庭でできる見直しを、具体的に整理します。


① 朝食を“完璧”にしようとしない

朝食は内容よりも「食べる習慣」が最優先です。

よくある誤解は、
「バランスの取れた完璧な朝食を用意しなければいけない」
というプレッシャー。

しかし、朝は時間との戦いです。

まずは

  • おにぎり+牛乳
  • トースト+ヨーグルト
  • バナナ+ゆで卵

など、固定メニューでも十分です。

大切なのは、

✔ 毎日同じ時間に
✔ 必ず何かを口にする

こと。

👉 朝食は栄養補給だけでなく「体内時計を動かすスイッチ」です。


② 甘い飲料は“ゼロ”ではなく“管理”

ジュースやスポーツドリンクは、
気づかないうちに糖分過多になります。

完全禁止にすると反発が起こりやすいため、

  • 家では基本お茶・水
  • 甘い飲料は週◯回まで
  • 部活後のみOKなどルール化

といった見えるルールを作ることが現実的です。

液体の糖分は満腹感が少ないため、
肥満や血糖値の乱れにつながりやすいのです。

👉 “飲み物の見直し”は最も効果が出やすい改善ポイントです。


③ たんぱく質を“毎食意識”する

成長期は特に、たんぱく質が不足しやすい時期です。

目安としては、

  • 朝:卵・ヨーグルト・牛乳
  • 昼:給食である程度確保
  • 夜:肉・魚・豆腐のいずれか

「毎食どこかにたんぱく質」が合言葉です。

特に、

  • 部活動をしている子
  • 身長が急に伸びている子

では意識的に補う必要があります。

👉 成長スパート期は“材料不足”にしないことが大切です。


④ 鉄とカルシウムを意識する

思春期女子では鉄不足が非常に多いです。

  • 赤身肉
  • レバー
  • ほうれん草
  • 貝類

などを、無理のない範囲で取り入れます。

カルシウムは骨量のピークをつくる時期。

  • 牛乳
  • ヨーグルト
  • 小魚

を日常的に。

👉 骨量のピークは思春期で決まります。


⑤ 夕食時間を固定する

塾や部活で遅くなる場合でも、

  • 軽食を先に
  • 帰宅後に補食
  • 就寝直前の大量摂取は避ける

など工夫が必要です。

夕食が22時を超える生活が続くと、

  • 肥満リスク増加
  • 睡眠の質低下
  • 朝食欠食

につながります。

👉 食事時間は生活リズムと直結します。


⑥ “対話”を増やす

学童・思春期は、

「食べなさい」より
「どう思ってる?」の時期です。

  • なぜ朝食を食べないのか
  • なぜダイエットをしたいのか
  • なぜ間食が増えたのか

背景に、

  • 友人関係
  • 体型への不安
  • ストレス

が隠れていることもあります。

👉 栄養問題の裏に“心”があることも少なくありません。


⑦ 完璧を目指さない

毎日理想通りの食事は現実的ではありません。

大切なのは、

✔ 7割できていればOK
✔ 1週間単位でバランスを見る
✔ 親が過度に不安になりすぎない

ことです。

👉 継続できる形が最も強い対策です。


親御さんへ

学童・思春期は、
「自分で選ぶ」時期に入ります。

だからこそ、

  • 禁止だけでなく説明を
  • 叱責だけでなく対話を
  • 管理だけでなく伴走を

意識することが大切です。

食事は、
身体だけでなく“自己肯定感”にも影響します。


まとめ

  • 学童・思春期は栄養需要が最大になる
  • 肥満とやせの二極化が起きやすい
  • 鉄不足は見逃されやすい
  • 朝食と生活リズムが土台
  • 急激な変化があれば相談を

学童・思春期の食事は、
「今」だけでなく「将来」をつくる土台です。

焦らず、でも見逃さず。
一緒に整えていきましょう。