子どもの誤飲・中毒に気づいたら! ― 応急処置とNG行動を小児科専門医が徹底解説

子どもの誤飲・中毒に気づいたら! ― 応急処置とNG行動を小児科専門医が徹底解説


目次

はじめに ― 子どもは「探索の天才」。

子どもは、成長のなかで「触ってみたい」「味わってみたい」という強い好奇心をもっています。
薬、洗剤、乾燥剤、観葉植物など――大人にとっては“危険とは思わないもの”でも、子どもには魅力的なおもちゃに見えてしまいます。

こうした誤飲は、単なる「不注意」ではなく、
探索的摂取(exploratory ingestion)
と呼ばれる行動の一つです。

だからこそ大切なのは、
もし起きてしまったときに、大人が落ち着いて“正しい行動”を選べるかどうか。

この記事では、緊急時の応急処置から、絶対にやってはいけないNG行動まで、親御さんがすぐ動ける形でまとめました。


①「誤飲したかも!」と思った瞬間にやるべきこと

ステップ0:まずは安全確保

  • ガス、一酸化炭素、化学物質の飛散など、周囲に危険がないかを確認
  • 子どもと大人自身を、安全な場所へ移動させる

👉 まずは“現場の危険を取り除く”こと。


ステップ1:子どもの状態を落ち着いて確認

次の順でチェックします。

  • 呼びかけに反応するか
  • 意識ははっきりしているか
  • 呼吸が苦しそうでないか
  • けいれんがないか

呼吸が浅い、肩や胸が大きく上下して息が苦しそう、反応が弱いなどは危険サインです。

👉 ひとつでも「いつもと違う」と感じたら救急車(119)へ。


ステップ2:専門機関へすぐ相談する

📞 中毒110番(日本中毒情報センター)

  • 大阪:072-727-2499
  • つくば:029-852-9999

24時間対応で、
「今すぐ受診が必要か」「家庭で何をすべきか」を教えてくれる頼れる窓口です。

👉 自己判断より“相談が先”、これは鉄則。


② 家庭でできる応急処置(意識がはっきりしている場合のみ)

1)口に残ったものを取り除く・すすぐ

  • 口の中の“見える範囲のもの”だけ取り除く
  • 少量の水で軽く口をすすぐ

⚠️ 指をつっこんでかき出すのは危険です。


2)皮膚・目についた場合は流水で洗う

  • 目:15分以上流水でしっかり洗う
  • 皮膚:汚れた衣服を脱がせ、流水で洗う

化学物質が付着したまま時間がたつほどダメージが増えるため、早い対応が重要です。


3)水や牛乳を飲ませる場合(※ケースが限られます)

水・牛乳が有効になるのは次のようなケースです:

✔ 強い酸性・アルカリ性の製品

(例:トイレ用洗剤、漂白剤など)

✔ 界面活性剤(洗濯洗剤・台所洗剤)

✔ 石灰乾燥剤

ただし次の場合は 絶対に飲ませてはいけません

❌ 意識がはっきりしない
❌ 吐き気が強い
❌ 石油製品(灯油・除光液・殺虫剤など)
❌ 防虫剤(ナフタリン・樟脳など)

理由:

  • 誤嚥の危険
  • 粘膜損傷の悪化
  • 脂溶性物質は牛乳で吸収促進される可能性

👉 水・牛乳は“飲ませてもよいときがある”だけで、必ず専門家の指示が必要です。


③ 絶対にやってはいけないNG行動

1)吐かせる(催吐)

かつては一般的でしたが、現在は推奨されていません

理由:

  • 治療効果が乏しい
  • 吐物が気道に入りやすく危険
  • 誤嚥性肺炎のリスク

👉 どんな物質であっても、自己判断で吐かせるのはNG。


2)指でかき出す

指で異物を「かき出そう」とするのは非常に危険です。

  • 異物を奥に押し込む
  • 気道閉塞の悪化
  • 嘔吐・誤嚥の誘発

👉 見える部分だけを取り除く。奥を触らない。


3)勝手に何か飲ませて薄めようとする

水・牛乳で薄めてよいかどうかは物質により完全に異なります。

誤った対応で、

  • 吸収が増える
  • 化学反応で刺激が増す
  • 誤嚥を誘発する

などの危険があります。

👉 飲ませる判断は必ず専門家と相談してから。


④ 受診が必要になったときに持っていくもの

1)中毒の原因がわかるもの

  • 容器・外箱
  • 成分表示
  • 残量がわかるもの
  • 現場の写真
  • 植物ならその一部

医療者が「何を・どれくらい」摂取したか判断する命綱です。


2)子どもの医療情報

  • 母子手帳
  • アレルギー
  • 既往歴
  • 服用中の薬
  • 最近の体調

3)緊急連絡先

自宅以外で事故が起きた場合も想定しておくと安心です。


⑤ 中毒110番は“親の相棒”

中毒に関する相談に24時間対応してくれる、とても重要な窓口です。

  • 今すぐ受診が必要か
  • どの程度危険があるか
  • 家庭でできること
  • やってはいけないこと

すべてリアルタイムで教えてくれます。


おわりに ― 慌てず、正しい行動が子どもを守る

中毒事故は、どんな家庭でも起こり得ます。
完璧に防ぐことはできなくても、
落ち着いて“正しい一手”を取れるだけで、重症化を大きく防ぐことができます。

  • 吐かせない
  • 指を入れない
  • むやみに飲ませない
  • 専門家に相談する

この4つだけでも覚えておいてください。

👉 少しでも不安を感じたら、迷わず相談して大丈夫。あなたの冷静な行動が、子どもの命と安全を確実に守ります。