はじめに
転びそうになったわが子の手を、
とっさに引いた——
その直後から、腕を使わなくなった。
「え?なにが起きたの?」
「病院に行くべき?」
こうした場面、実は珍しくありません。
そして原因としてとても多いのが、**肘内障(ちゅうないしょう)**です。
肘内障は名前ほど怖い病気ではなく、
幼児期によく起こる一時的な関節のトラブルです。
正しい知識があれば、
過度に心配する必要はありません。
この記事では、
親御さんが知っておきたい肘内障のポイントを
小児科専門医がわかりやすくお伝えします。
肘内障とは?
肘内障とは、肘の骨(橈骨頭)が靭帯の中で一時的にずれてしまう状態です。
正式には「橈骨頭亜脱臼」と呼ばれます。
幼児では、
- 骨の形がまだ完成していない
- 関節や靭帯がやわらかい
といった特徴があるため、
腕が引っ張られた拍子に起こりやすいとされています。
とくに多いきっかけは
- 転びそうになった子の手を引いた
- 手首を持って立ち上がらせた
- 子ども同士で遊んでいて腕を引っ張られた
といった日常の何気ない動作です。
👉 「強く引っ張った覚えがない」場合でも起こることがあります。
どんな症状が出るの?
肘内障の子どもには、次のような特徴がみられます。
- 腕をだらんと下げたまま動かさない
- 手のひらを下に向けたまま(回内位)
- 肘や腕を触られるのを嫌がる
- 腫れや変形、皮下出血はほとんどない
「肩が外れたのでは?」と心配される親御さんも多いですが、
幼児期に肩の脱臼はほとんど起こりません。
👉 腫れがなく、動かさない腕は肘内障を疑う大切なサインです。
何歳に多いの?
肘内障は
**1〜3歳(特に2歳前後)**に最も多くみられます。
生後6か月頃から起こることがあり、
6〜7歳頃までは起こる可能性がありますが、
成長とともに靭帯が強くなり、自然と減っていきます。
一度起こした子は、
しばらく再発しやすいことも知られています。
👉 年齢と成長によって起こりにくくなる病気です。
治療はどうするの?
治療は**徒手整復(としゅせいふく)**と呼ばれる方法で、
医師が腕をやさしく動かして元の位置に戻します。
- 数秒で終わることがほとんど
- 整復時に「カクッ」「プチッ」とした感触があることも
- 成功すると、しばらくして自然に腕を使い始める
注射や手術は不要で、
通常は鎮痛薬も必要ありません。
整復後すぐに動かさないこともありますが、
15分ほど様子を見ると使い始めることが多いです。
👉 短時間で改善することが多いのが肘内障の特徴です。
レントゲンは必要?
次のような場合には、
骨折を除外するためにレントゲン検査を行います。
- 転倒や転落がきっかけ
- 腫れや強い痛みがある
- 受傷の状況がはっきりしない
一方で、
典型的な「腕を引っ張った直後」の肘内障では、レントゲンが不要なことも多いとされています。
👉 状況に応じて、安全確認を行います。
再発を防ぐために大切なこと
一度肘内障を起こすと、
しばらくは再発しやすい状態になります。
ご家庭では次の点に注意しましょう。
- 手首をつかんで引っ張らない
- 腕を振り回して遊ばない
- 抱き上げるときは脇の下を支える
👉 日常のちょっとした工夫が再発予防につながります。
こんなときは再受診を
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 再び腕を動かさなくなった
- 肘や腕が腫れてきた
- 痛みが強く続く
- 発熱を伴う
骨折や別の病気が隠れている可能性もあります。
まとめ
- 肘内障は幼児に多い、よくあるケガ
- 正しく整復すれば後遺症なく治ることがほとんど
- 再発しやすいため腕を引っ張らない工夫が大切
👉 慌てすぎず、でも「おかしい」と思ったら早めに受診しましょう。

