大学病院とクリニック、求められる診療の違いと葛藤

大学病院とクリニック、求められる診療の違いと葛藤

クリニックでの外来日。
診察室では、いつも私の頭を悩ませる一言を、今日も親御さんから投げられました。

「前に●●という抗菌薬を飲んだら良くなったので、今回も同じものを出してもらえますか?」

定期的に風邪を繰り返すお子さんの診察では、決して珍しい場面ではありません。
そしてそのたびに、私は少し考え込みます。


🗣️「前と同じ薬で治った」という感覚

ご家族の立場からすれば、とても自然な感覚だと思います。
実際に、薬を飲んで数日後には元気になった。
だから「その薬=効いた薬」という印象が残る。

ただ、医学的に見ると、
子どもの風邪の多くはウイルス感染です。
抗菌薬が直接効いたわけではなく、
体の免疫で自然に治ったタイミングと重なっていることがほとんどです。


🧪抗菌薬を出さない理由は「今」だけを見ていないから

抗菌薬を必要のない場面で使い続けると、
耐性菌が生まれやすくなります。

耐性菌が増えると、
本当に抗菌薬が必要な重い感染症にかかったとき、
「効く薬がない」「治療が難しくなる」
そんな状況に陥る可能性があります。

私は、今の症状だけでなく、
この先のお子さんの人生も含めて考えたとき、
抗菌薬を出さないという選択をします。


😔それでも「意地悪な医師」に見えてしまう現実

ただ、その判断は、
患者さん側から見ると、

「治る薬があるのに出してくれない」
「話を聞いてくれない」

そう映ってしまうことがあります。

結果として満足度が下がり、
場合によっては
「通っても全然良くならないクリニック」
という評価につながってしまうこともあります。

患者さんが欲しい薬を毎回処方してくれるクリニックのほうが、
「優しい」「よく診てくれる」と感じられる。
これは、多くの医師が抱えるジレンマだと思います。


🏥大学病院とクリニックで求められる役割の違い

私が普段勤務している大学病院では、
正確な診断と、エビデンスに基づいた治療が強く求められます。

一方、クリニックを受診される方は、
「とにかく今つらい症状を早く楽にしてほしい」
その思いを抱えて来院されます。

どちらも正しい。
ただ、求められるものが違う

大学病院とクリニック、
両方で診療しているからこそ、
その違いに日々向き合うことになります。


💬それでも説明を続ける理由

正直に言えば、
言われた通りに薬を出すほうが楽です。
患者さんにも喜ばれやすい。

それでも私は、
毎回できるだけわかりやすく説明し、
ご理解いただけるよう努めています。

小児科専門医として、
「その場しのぎ」ではなく、
すべてのお子さんにとって正しい医療を届けたい。

その思いだけは、
大切にし続けたいと思っています。


🌱今日の外来を終えて

診察室の中で行われている判断は、
決して単純なものではありません。

大学病院とクリニック。
求められる診療の違いのなかで、
迷いながら、それでも最善だと思う選択を積み重ねる。

今日もそんな一日でした。