ワクチンを打ったのにかかるのはなぜ?― それでも予防接種が大切な理由を小児科専門医が解説

ワクチンを打ったのにかかるのはなぜ?― それでも予防接種が大切な理由を小児科専門医が解説

はじめに

痛い思いをして、泣きながら頑張って打ったワクチン。
それなのに、あとから同じ病気にかかってしまったら——
「じゃあ、あの注射は何だったんだろう」
そう思ってしまいますよね。

小児科外来では、こうした声をとてもよく耳にします。
予防接種は「子どものために」と思って選んだ医療だからこそ、
その効果が実感できないと、不安や疑問が強くなります。

そもそも、予防接種は
「絶対に病気にかからなくする魔法」ではありません。
それでも世界中で予防接種が続けられ、
小児科医が今も勧め続けているのには、はっきりとした理由があります。

👉 予防接種の役割は「完全に防ぐこと」だけではありません


① 予防接種をしても病気にかかることはあります

まず知っておいてほしい大切な前提があります。

予防接種をしていても、
病気にかかることはあります。

これは珍しいことでも、失敗でもありません。
ワクチンは、病気に対する「免疫の準備」を体にさせるものですが、
その効果は100%ではありません。

理由としては、

  • 免疫のつき方には個人差がある
  • 体調や年齢によって反応が異なる
  • ウイルスや細菌が少しずつ変化する

といった点があります。

そのため、
「ワクチンを打った=絶対にかからない」
とはならないのが現実です。

👉 かかる可能性がゼロにならないこと自体は、想定内のことです


② それでも予防接種が大切な理由

では、なぜ小児科医は
「かかることがある」と分かっていても
予防接種を勧めるのでしょうか。

理由はとてもシンプルです。

予防接種は、
病気にかかる人の数そのものを大きく減らす
という、はっきりした効果があるからです。

たとえば、
ワクチンがなければ100人が発症する病気があったとします。
ワクチンを接種することで、その人数を数人まで減らせる——
これが「ワクチン有効率○%」という数字の本当の意味です。

よくある誤解として、ワクチンの有効率を
「打った人の何%が守られた」とイメージしがちですが、
実際には
社会全体でどれだけ患者数を減らせたか
を表しています。

👉 予防接種は「ゼロか百か」ではなく「リスクを下げる医療」です


③ 予防接種の一番大きな役割は「重症化を防ぐこと」

親御さんに、特に知っておいてほしいポイントです。

予防接種の最大の目的は、
重症化・入院・合併症を防ぐことにあります。

たとえ感染してしまっても、

  • 症状が軽くすむ
  • 高熱が長引きにくい
  • 入院が必要になりにくい
  • 命に関わる状態になりにくい

こうした効果が、多くの感染症で確認されています。

特に乳幼児は、
免疫が未熟で、病気が重くなりやすい時期です。
そのため、「かかったかどうか」よりも
**「どれだけ軽くすんだか」**がとても重要になります。

👉 「思ったより軽くすんだ」は、予防接種の効果かもしれません


④ 歴史が証明している、予防接種の力

予防接種の効果は、
長い年月で見ると、よりはっきりします。

ワクチンが広く使われるようになってから、

  • はしか
  • 風しん
  • ムンプス
  • 百日咳
  • Hib感染症
  • 肺炎球菌感染症

といった病気は、
ワクチン導入前と比べて大幅に減少しました。

「最近あまり聞かなくなった病気」があるのは、
予防接種がうまく機能してきた結果です。

👉 病気が流行らなくなった社会そのものが、ワクチンの効果です


⑤ 予防接種は「その子一人」だけのためではありません

予防接種には、
もう一つ大切な役割があります。

それは、
社会全体で弱い立場の人を守ることです。

  • まだ月齢が低く、接種できない赤ちゃん
  • 持病があり、ワクチンを打てない子
  • 免疫が弱い人

こうした人たちは、
周囲の多くの人が免疫を持つことで守られています。

👉 あなたのお子さんの接種が、誰かの命を支えています


⑥ 「かかった=意味がなかった」ではありません

ワクチンを打ったのに病気にかかると、
「無駄だったのでは」と感じてしまいがちです。

しかし実際には、

  • 重症にならなかった
  • 入院せずにすんだ
  • 後遺症を残さず回復した

これらはすべて、
予防接種が果たしている重要な役割です。

結果だけでなく、
その経過に目を向けることが大切です。

👉 予防接種は「最悪の事態を避ける」ための医療です


まとめ

  • 予防接種をしていても、病気にかかることはある
  • それはワクチンが無意味ということではない
  • 予防接種は、患者数を大きく減らしてきた
  • 特に「重症化・入院・合併症」を防ぐ効果が大きい
  • 社会全体で子どもたちを守る役割もある
  • 「軽くすんだ」こと自体が、予防接種の成果である場合も多い

👉 予防接種は、完璧ではなくても、確実に子どもを守る医療です