スマホを触りながら勉強すると学力は下がる?― “ながら勉強の落とし穴” を小児科専門医が解説

スマホを触りながら勉強すると学力は下がる?― “ながら勉強の落とし穴” を小児科専門医が解説


先日、小学生向けに「スマホと勉強」について講義をする機会がありました。
その後保護者の方々からも多くの反響をいただきました。

スマホは生活や学習の便利なツールですが、
“使いながらの勉強(=ながら勉強)”になると、成績低下につながることがわかりました。
今回は、宮城県仙台市で行われた大規模な学力調査などのデータをもとに、
子どもたちの学力とスマホの使い方の関係を、親御さん向けにわかりやすく解説します。


スマホ自体が悪いわけではありません。

いまやスマホは家族との連絡、調べ物、動画での学習など、子どもにとっても身近な存在。
「スマホ=完全に悪」という話ではありません。

しかし、宮城県仙台市の大規模調査では、
“勉強中にスマホを触っているかどうか” が学力に大きく関わっていることが示されています。

とても興味深いのは、

  • 勉強時間が長くても、スマホを見ながらだと成績が上がりにくい
  • 反対に、短い時間でも集中していれば、成績がしっかり伸びている

という、はっきりとした差が見られること。

つまり、
“どれだけ勉強したか”よりも、“どのように勉強したか”が大きなカギなのです。


ながら勉強の落とし穴①:集中が途切れる“スキマ”がどんどん増える

通知を見るつもりがなくても、
スマホが近くにあるだけで「気になる」「ちょっと触る」が増えてしまいます。

仙台市の調査では、
アプリを複数使いながら学習している子ほど、成績が低くなる傾向がはっきり示されました。

アプリの種類が増えるほど脳の切り替え作業が増えるため、
“一つの課題に向き合う力”が削られてしまうのです。


ながら勉強の落とし穴②:「集中30分」 =「ながら3時間」という衝撃のデータ

さらに先ほどのグラフを見ると、驚きの結果も読み解くことができます。

・集中して30分勉強した子
→ 平均偏差値は約49.9

・スマホをいじりながら3時間勉強した子
→ 平均偏差値は約50.4

……そうなんです。
3時間がんばった“ながら勉強”と、30分だけ集中した勉強が、ほぼ同じ成果。

これは
「努力しているのに、なかなか成果につながらない…」
という親子の気持ちを考えても、とても重要なポイント。

“時間をかける=学力が伸びる”ではないという、象徴的なデータです。


ながら勉強の落とし穴③:スマホが視界にあるだけで脳は気を取られる

研究でも、
スマホが机の上にあるだけで集中力が低下することがわかっています。

通知が鳴っていなくても、
SNSやゲームなどの“次の刺激”を脳が期待してしまい、
“目の前の勉強”にフルパワーを使い切れなくなるからです。

仙台市調査でも、
スマホを別の部屋に置いて勉強している子のほうが、成績が良い傾向が示されました。


じゃあ、どうすればいい?ー今日からできる“シンプルな工夫”

✔ 勉強中はスマホを手の届かない場所に置く

ポケット・机の上・すぐ横はNG。
別の部屋・家族に預けるのがベスト。

✔ 勉強する前に「今日は●分集中する」と決める

時間が短くてもOK。
「集中できる環境」を先につくるのが大切。

✔ 勉強とスマホの“切り替え”をつくる

勉強→休憩→スマホ、という順番のほうが脳が疲れにくい。

✔ 家族で“見本”をつくる

子どもだけにルールを求めるとストレスになりやすいので、
「親もリビングではスマホを置く」など、小さな協力が効果的。


👉 見守ってくれる大人がいると、子どもはずっと伸びやすくなる

子どもは「つい気が散る」ことがあって当然。
大切なのは、叱ることではなく、
“どうすれば集中しやすい環境になるか”を一緒に考えること。

少しの工夫で、学習の質はぐっと上がります。


まとめ

  • スマホ自体が悪いわけではない。
  • でも「ながら勉強」になると集中が散り、学力が伸びにくい。
  • 仙台市の大規模調査でも、ながら勉強の不利が明確。r2gakusyuiyoku_rifureto_hogosya
  • 「集中30分 > ながら3時間」という象徴的データも。
  • 勉強中はスマホを遠ざけるだけで、ぐっと成果が上がる。

親御さんとお子さんが、
無理なく・続けられる形で、
スマホとの上手な距離感を作れると嬉しいです。