アトピー性皮膚炎の治療はこう進める! ーステロイドと保湿の使い方を小児科専門医が徹底解説

アトピー性皮膚炎の治療はこう進める! ーステロイドと保湿の使い方を小児科専門医が徹底解説

アトピー性皮膚炎の治療が難しく見えるのは、
「症状の波が大きいこと」と「治療に対する誤解が多いこと」が原因です。

薬を塗って良くなる日の次の日に、また赤くなる。
保湿を頑張っているのに、なぜか悪化する。
ステロイドは使ったほうがいいのか、やめたほうがいいのか分からない…。

こうした悩みを抱える親御さんはとても多いです。

ただ、治療の本質はとてもシンプル。
炎症を確実に鎮める”+“バリアを整えて荒れにくくする
この2点が理解できるとアトピー治療は劇的にうまくいきます。


1. アトピー治療の基本は“外用治療”の2本柱

アトピーは皮膚の炎症と乾燥が同時に起こる病気です。
そのため治療も、炎症と乾燥の両方をターゲットにする必要があります。

それが次の2本柱です。

● ① 赤み・かゆみ・ジュクジュク(炎症)を鎮める

ステロイド外用薬

湿疹の“火事”を消す役割です。
火がくすぶっている状態では、どんなケアをしても良い状態に戻れません。

● ② 弱った皮膚のバリアを修復する

保湿剤

炎症がなくなったあとの皮膚は、
「水分が逃げやすい」「刺激に弱い」という状態になっています。

そこで保湿剤を使って

  • 皮膚にうるおいを与える
  • バリアを補強する
  • 再発しにくい肌に整える

これが必要になります。

👉 消火と修復。どちらか片方だけではアトピーは安定しません。


2. ステロイドの本当の役割

ステロイドには、炎症を素早く鎮める強力な効果があります。
これはアトピー治療の成功に直結します。

● 炎症をその日のうちに止めるほど治りが早くなる

炎症が続くと

  • かゆみが増える
  • 掻き壊しが広がる
  • 肌がさらに荒れやすくなる
  • バリアが壊れ続ける
    という悪循環に入ります。

ステロイドはこの悪循環を一旦ストップする働きがあります。

● 赤みが消えても、皮膚の中では炎症がくすぶっている

見た目が落ち着いても、皮膚内部ではまだ炎症細胞が残っています。
これを“治った”と勘違いしてやめてしまうと、2〜3日で再発します。

👉 アトピー治療は見た目よりも、“皮膚の中の炎症”を治すことが本質です。


3. ステロイドは怖い?よくある誤解と真実

ステロイドを不安に思う親御さんは少なくありません。
しかし、医学的に正しく使えば非常に安全です。

● 「強い薬」=危険ではない

ステロイドの“強さ”は

  • 部位
  • 年齢
  • 炎症の深さ
    を見て処方します。

医師は「最小で最大の効果が出るように」強さを選んでいます。

● 「短期間でしっかり使う」が最も安全

ダラダラ弱い治療を続けるほうが、実はリスクがあります。
炎症が残るほど治療期間は延び、副作用の心配も増えます。

だからこそ
短期間で確実に使って早く炎症を治す
これがもっとも副作用が少なく、安全な使い方です。

● 「つるつるになるまで」の治療が必要

赤みが消えた“だけ”では治療終了には早すぎます。

肌の状態が
赤みなし
+ザラつきなし
+つるっとなめらか

になるまで治療すると再発が減り、長期的に安定します。

👉 “怖い薬”ではなく、“正しく使うととても頼りになる薬”がステロイド外用薬です。


4. よくある失敗パターン

● ① 赤みが引いたその日から中止してしまう

アトピー治療でいちばん多い失敗です。

  • 見た目が良くなる
  • 中止する
  • 数日でぶり返す
  • またステロイド
  • またやめる
    この繰り返しが長期化すると、皮膚がどんどん敏感になり、より再発しやすくなります。

● ② 塗る量が少ない

“うす〜く伸ばす”程度では炎症が残ります。

目安は「ティッシュがふわっと貼り付くくらい」しっとりした量

肌表面にしっかり“うるおいの膜”が見えるくらいが、ちょうど良い量です。

👉 正しい量と治療期間を守ることで、お子さんの肌は驚くほど安定します。


5. 保湿の重要性(全身に塗る理由)

アトピーの子どもは、湿疹の部位だけが乾燥しているわけではありません。
正常に見える皮膚も、実は乾燥・バリア低下が起こっています。

だからこそ
保湿は“全身に、毎日たっぷり
塗ることが重要です。

● 保湿が果たす役割

  • バリアを強くする
  • 炎症が起きにくい肌に整える
  • ステロイド治療後の再発を防ぐ
  • 長期的に安定した状態を維持する

● 入浴後5分以内がもっとも効果的

お風呂上がりの肌は水分が蒸発しやすく、乾燥が始まるタイミング。
そのタイミングで保湿すると、肌の水分を閉じ込めやすくなります。

● 保湿剤とステロイドの順番はどちらでもOK

どちらを先に塗っても効果は変わりません。

◻ 先に保湿 → ステロイド
◻ 先にステロイド → 保湿

どちらでも問題なく、皮膚の上で自然に混ざります。

👉 順番より大事なのは「十分な量」「塗り残しゼロ」「続けられる方法」です。


まとめ

  • アトピー治療の基本は「炎症を消す+バリアを強くする」の2本柱
  • ステロイドは正しく使えば安全で、短期間で確実に炎症を鎮める
  • 赤みが消えても“皮膚の中”の炎症は残るため、つるつるまで治す
  • 塗る量は「ティッシュが軽く貼り付くくらい、しっとり」が適量
  • 保湿は全身に・毎日・入浴後すぐがもっとも効果的
  • ステロイドと保湿剤の順番はどちらでもOK

👉 次回は、ステロイド外用薬の安全な使い方について、もう少し詳しく解説していきます。