おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは?― 症状から合併症、ワクチンの考え方まで小児科専門医が解説

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは?― 症状から合併症、ワクチンの考え方まで小児科専門医が解説

はじめに

おたふくかぜは、子どもがかかりやすい身近な感染症です。
保育園や幼稚園、小学校で「流行っています」と聞いても、
「ほっぺが腫れる病気でしょ?」
「熱が出てもそのうち治るんですよね?」
と、どこか安心してしまう方も多いかもしれません。

確かに、多くの子どもは大きな問題なく回復します。
しかし実際の診療現場では、あとから「もっと早く知っていれば」と感じるケースに出会うことがあります。
それは、まれではあるものの、一生残る合併症が起こりうる病気だからです。

この記事では、

  • おたふくかぜの基本
  • どんな経過をたどるのか
  • なぜワクチンがすすめられるのか

を、小児科専門医の目線から解説します。
👉 「知っているつもり」になりやすい病気だからこそ、正しく整理しておきましょう。


おたふくかぜってどんな病気?

おたふくかぜ(正式名称:流行性耳下腺炎、ムンプス)は、ムンプスウイルスによる感染症です。
咳やくしゃみだけでなく、会話中の飛沫や唾液を介して人から人へ広がります。

感染してから症状が出るまでの**潜伏期間は約16〜18日(最大25日)**と比較的長く、
「いつ、どこでもらったのか分かりにくい」のも特徴です。

日本では3〜6歳ごろに多く、
おたふくかぜワクチンが定期接種でないため、4〜5年ごとに流行を繰り返しています
また、感染者の約3人に1人ははっきりした症状が出ないとされており、
本人も周囲も気づかないまま感染が広がることがあります。

👉 「気づかない感染」が流行を長引かせる原因になります。


主な症状

おたふくかぜの代表的な症状は、唾液腺(特に耳下腺)の腫れです。

よくみられる症状は次の通りです。

  • 発熱(1〜2日程度のことが多い)
  • 耳の下が腫れる
    • 片側だけのことも、数日後に反対側が腫れることもあります
  • 食事のときの痛み、口を開けにくい
  • 全身のだるさ、食欲低下、頭痛

すっぱいものを食べると痛みが強くなるのは、唾液の分泌が刺激されるためです。
また、耳下腺の腫れは数日〜1週間以上続くこともあります。

年齢が低いほど症状は軽く、
年齢が上がるにつれて腫れが長引き、痛みや発熱も強くなる傾向があります。
👉 「年長児・思春期ほど重くなりやすい」病気です。


注意したい合併症

おたふくかぜで最も大切なのは、合併症の存在です。
頻度は高くありませんが、起こると生活に大きな影響を残すものがあります。

無菌性髄膜炎

  • 約10%前後で合併
  • 強い頭痛、嘔吐、ぐったりするなどの症状
  • 多くは1〜2週間で自然に回復

「髄膜炎」と聞くと心配になりますが、
ムンプスによるものは後遺症なく治ることが多いのが特徴です。

感音性難聴

  • 400〜1000人に1人程度
  • 突然、片方の耳が聞こえなくなる
  • 回復しないことが多い

発熱や耳下腺の腫れが落ち着いたあとに気づくこともあり、
「気づいたときには元に戻らない」ケースが少なくありません。

思春期以降に多い合併症

  • 男の子:精巣炎
  • 女の子:卵巣炎、乳腺炎

これらも多くは回復しますが、強い痛みや不安を伴う合併症です。
👉 「まれだけど、起こると取り返しがつかない合併症」があります。


治療はどうするの?

現在、ムンプスウイルスそのものを治す薬はありません
そのため治療は、症状を和らげる対症療法が中心になります。

  • 解熱鎮痛薬で熱や痛みを抑える
  • 食事や水分がとれない場合は点滴
  • 耳の痛みが強い場合は冷やす

多くは1〜2週間で自然に回復しますが、
強い頭痛、繰り返す嘔吐、ぐったりしている場合は、
髄膜炎などを疑って早めに受診が必要です。
👉 「自然に治る」けれど「油断していい」わけではありません。


保育園・学校はいつから行ける?

学校保健安全法では、
「耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出てから5日を経過し、全身状態が良好になるまで」
出席停止と定められています。

片側が治ったあとに反対側が腫れることもあるため、
「腫れが完全に引いたか」「元気に過ごせているか」を確認することが大切です。
👉 無理な登園・登校は、本人にも周囲にも負担になります。


ワクチンはどう考えればいい?

おたふくかぜワクチンは日本では任意接種ですが、
重い合併症を防ぐための最も確実な方法です。

  • 1歳から接種可能
  • 2回接種が望ましい
  • 発症予防効果は約80〜90%
  • 自然感染より合併症が圧倒的に少ない

海外では定期接種として広く行われ、
おたふくかぜの患者数が90〜99%減少しています。

「一度かかれば免疫がつく」という考え方もありますが、
自然感染は合併症のリスクを伴う方法です。
👉 ワクチンは「危険を冒さずに免疫をつける手段」です。


まとめ

  • おたふくかぜはよくあるが、軽く見てよい病気ではない
  • 年齢が上がるほど症状や合併症が重くなりやすい
  • ムンプス難聴など、一生残る合併症が起こることがある
  • 治療は対症療法が中心で、特効薬はない
  • ワクチンは重症化・合併症を防ぐ最も有効な方法

👉 「知らなかった」を減らすことが、子どもを守る第一歩です。