うんちが毎日でない。 ― 新生児の便秘について小児科専門医が解説します

うんちが毎日でない。 ― 新生児の便秘について小児科専門医が解説します

2025/10/05(日)

前回の記事では「新生児の嘔吐」について、小児科専門医の視点からお話ししました。
今回はそれと並んでよく相談を受けるテーマ――**「便秘」**についてです。

「赤ちゃんのうんちが出ていない」「何日も出ないけれど大丈夫?」
新生児期(生後1か月ごろまで)は、便の回数や出方に個人差が大きく、心配して受診される親御さんがとても多いです。

結論から言えば――
哺乳が良好で体重が増えているなら、多くの場合は問題ありません

この記事では、小児科専門医の立場から、

  • 新生児の便秘が起こる理由
  • 家庭でできるケア
  • 注意が必要なサイン
    について、解説します。

新生児のうんちは個性豊か

新生児の便の回数は、1日に何回も出る子もいれば、数日に1回という子もいます。
特に母乳栄養の赤ちゃんは便の回数が多く、柔らかめである一方、人工乳(ミルク)栄養ではやや硬く、回数が少ない傾向があります。

これは、母乳に含まれるオリゴ糖が腸内の善玉菌を増やし、便を柔らかく保つ働きをするためです。
人工乳でも成分改良が進んでいますが、それでも若干便秘になりやすい赤ちゃんがいます。

つまり、「毎日出ない=便秘」とは限りません
排便が2〜3日おきでも、赤ちゃんが元気でミルクをよく飲み、体重がしっかり増えているなら、自然なリズムの範囲です。

👉 大切なのは“出る間隔”ではなく、“苦しそうかどうか”。


便秘が起こりやすい理由

新生児期は腸の動きがまだ未熟で、腸の中にガスがたまりやすい時期です。
また、便を外に押し出す筋力も弱く、いきみがうまくできないため、排便までに時間がかかります。

さらに:

  • ミルク量が少ない(便の材料が足りない)
  • ミルクの種類・濃さの影響
  • 水分や体温の変化
    といった要因が重なり、便秘が起きやすくなります。

👉 多くは“成長の途中”による一時的な現象です。焦らず見守りましょう。


便秘のときに見られるサイン

  • お腹がパンパンに張っている
  • うんちがコロコロして硬い
  • 3日以上排便がない
  • 授乳後に苦しそうに泣く
  • 吐きやすくなった

これらの症状があっても、哺乳と体重が良好で、全身状態が安定していれば大きな問題はありません
お腹のガスが抜けたり、便が一度出たりすると、自然に軽快することも多いです。


家庭でできる便秘ケア

🍼 ① 授乳リズムを整える

母乳・ミルクの量が少ないと便の材料が足りず、便秘になります。
授乳間隔を空けすぎず、こまめに水分が入るように調整しましょう。

🧸 ② お腹のマッサージ

仰向けに寝かせ、「の」の字を描くようにゆっくり時計回りにマッサージします。
腸の動きを助け、ガスが抜けやすくなります。

🩺 ③ 綿棒浣腸

便秘が続くときに家庭でできるケアが綿棒浣腸です。
綿棒の先にベビーオイルをつけ、肛門から1〜2cmほどそっと入れて、円を描くように刺激します。

ここでよく聞かれるのが、

「やりすぎると、自力でうんちが出なくなるのでは?」

と言う質問です。

結論から言うと――その心配はありません。
綿棒刺激で腸の働きや自力で排便をする力が弱まることはなく、逆に毎日行う必要もありません。
丸1日出なければ翌日に1回行う程度で十分です。

ただし、赤ちゃんが強くいきむと吐いてしまうことがあります。
そのため、行うタイミングは授乳の直前が理想です。
お腹が空の状態で行うことで、嘔吐を防ぐことができます。

👉 綿棒浣腸は“癖づけ”ではなく、“排便のお手伝い”。安心して使ってください。

🍼 ④ ミルクの濃さ・種類を確認

粉ミルクをやや濃く作っている場合、腸内の水分が減って便が硬くなりやすくなります。
表示どおりの濃度で調乳しているかを確認しましょう。


受診が必要なケース

次のような症状がある場合は、早めに小児科を受診してください。

  • うんちに血が混じる
  • 便が極端に硬い、または真っ黒or真っ白
  • 授乳後に何度も嘔吐(特に緑色の嘔吐)
  • お腹が硬く、触ると痛がる
  • 元気がなく哺乳が落ちている

まれに腸閉鎖やヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)など、構造的な病気が原因のこともあります。
「苦しそう」「いつもと違う」と感じたら、早めに医療機関へ相談を。


まとめ

新生児の便秘は、ほとんどが成長の過程で起こる一時的な現象です。
腸の動きが成熟するにつれて、自然に排便リズムも整っていきます。

哺乳良好・体重増加良好・機嫌が良い――この3つがそろっていれば、焦らず見守って大丈夫です。
人工乳の赤ちゃんは少し便が硬めでも心配しすぎず、綿棒浣腸などを上手に使ってサポートしていきましょう。

👉 “うんちが出ない=便秘”ではありません。赤ちゃんの個性とリズムを知ることが、安心の第一歩です。