目次
はじめに
「薬の時間になると逃げ回る」
「口に入れた瞬間に、全部吐き出してしまう」
小児科医として診察室で何度も聞いてきた言葉ですが、
自分が親になってから、その大変さをより痛感するようになりました。
頭では
「子どもは薬を嫌がるもの」
「多少飲めなくても仕方ない」
と分かっていても、いざ自分の子どもとなると、
- 焦ってしまったり
- 不安になったり
- 「ちゃんとできていないのでは」と自分を責めてしまったり
するものです。
実は、毎回きちんと薬を飲めている子は全体の半分ほどとも言われています。
この記事では、小児科の現場と、親としての実体験の両方から、
- 無理をしすぎない内服の考え方
- それでも知っておきたい注意点
を整理してお伝えします。
👉 内服は「親の努力不足」を測るものではありません。
薬を飲めないと、本当に治らないの?
「少ししか飲めなかったけど、大丈夫でしょうか?」
これは外来で本当によく受ける質問です。
研究では、(当たり前な結果でありますが)
処方された薬を全く飲めなかった子は、症状が悪化or改善しない割合が高いことが示されています。
一方で、
「だいたい飲めた」子どもは、「きちんと飲めた」子どもと比べて、治療効果に大きな差がなかった
という結果もあります。
つまり、
- 少し残した
- 途中で吐き出した
それだけで「意味がなかった」と考える必要はありません。
👉 大切なのは、「全く飲めない状態」を放置しないことです。
完璧じゃなくていい。でも、例外もあります
小児科ではよく
**「薬は8割くらい飲めていれば大丈夫」**と説明されます。
これは、
親御さんの負担を減らし、内服を続けやすくするための、とても大切な考え方です。
ただし、薬によっては「しっかり飲むこと」が重要なものもあることは、必ず知っておいてほしいです。
例えば、
- 抗菌薬(抗生物質)
- けいれん予防薬・発作予防薬
- 喘息など慢性疾患の治療薬
これらは、
中途半端な内服や自己判断での中止によって、十分な効果が得られなくなることがあります。
👉 「8割でOK」は、すべての薬に当てはまる魔法の言葉ではありません。
飲めないからといって、すぐに諦めないで
「どうしても嫌がって飲めない」
そんなときに大切なのは、諦める前にやり方を変えることです。
- 少し時間を空けて、落ち着いてから飲ませる
- 少量ずつ、回数を分けて飲ませる
- 食前・食後を変えてみる
- 剤形(粉・シロップ・錠剤)について相談する
こうした工夫で、
突然飲めるようになる子は決して珍しくありません。
👉 「今日は無理でも、次はうまくいく」ことは本当によくあります。
食べ物に混ぜていい?実は注意が必要です
粉薬やドライシロップは、
ヨーグルトやアイスなどに混ぜることで飲みやすくなることがあります。
ただし、何に混ぜてもいいわけではありません。
国立成育医療研究センターでは、
薬と服薬補助食品・飲食物の飲み合わせについて整理した表を公開しています

この表を参考にすると、次の点がとても重要だと分かります。
- 薬によって、相性の良い食品・悪い食品が異なる
- **酸性の飲み物(オレンジジュース、乳酸菌飲料など)**は、
薬のコーティングが壊れたり、苦味が強く出たり、効果が下がることがある - 食品に混ぜた薬は作り置きせず、すぐに飲ませる
👉 「何に混ぜていいかは薬によって違う」。これは感覚論ではなく、専門機関の整理に基づいた事実です。
年齢別|基本となる飲ませ方の考え方
子どもの内服で最も大切なのは、
年齢=発達段階に合わせて、関わり方を変えることです。
① 1歳未満|「味」よりも「方法」がすべて
この時期の赤ちゃんは、
まだ味の好き嫌いがほとんどありません。
飲めない原因の多くは、
- 量が多すぎる
- 口の中の感覚が不快
- 飲ませ方が合っていない
といった方法の問題です。
- スポイトで少量ずつ
- 少量の水で練って頬の内側や上あごに塗る
- 一気に流し込まない
といった工夫で、
ほとんどの子は対応できます。
👉 この時期は「本人に頑張らせる必要はありません」。
② 1〜3歳|「イヤ!」が前面に出る時期
味覚がはっきりし、自我が強くなる時期です。
- 苦いのが嫌
- 見た目が嫌
- 「薬」という存在そのものが嫌
という気持ちが強くなります。
この時期は、
正面から説得しようとしないことが大切です。
- 食べ物や服薬補助食品を使う
- 少量ずつ分ける
- 無理な日は仕切り直す
ただしここで重要なのが、
**「何に混ぜていいかは薬によって違う」**という点です。
👉 上記の表を参考に、必ず確認を。
③ 4〜6歳|「理由」と「成功体験」がカギ
この年齢になると、
「なぜ飲むのか」を理解できる子が増えます。
- 「これを飲むと、早く元気になるよ」
- 「咳が楽になるお薬だよ」
と、短く・具体的に説明しましょう。
そして何より大切なのが、
飲めたあとの声かけです。
- 「すごいね」
- 「頑張ったね」
👉 成功体験は、次の内服をぐっと楽にします。
④ 小学生以降|最大の落とし穴は「自己判断」
この年代では、
飲ませ方よりも中断の判断が問題になります。
- 症状がなくなったからやめる
- 元気だから飲まなくていい
特に慢性疾患では、
**「元気な時にこそ飲み続ける薬」**があることを理解する必要があります。
👉 やめるかどうかは、必ず医師と相談を。
症状がなくなったら、やめていい薬・続ける薬
- 症状がなくなれば中止してよい薬
- 元気でも継続が必要な薬
どちらも存在します。
そして、この判断は
親が自己判断で行うものではありません。
👉 迷ったら、必ずかかりつけに相談してください。
どうしても飲めないときは、相談してください
- 何度も失敗してしまう
- 親も子もつらくなってきた
- もう限界かもしれない
そんなときは、
遠慮なく、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
- 薬の変更
- 剤形の工夫
- 本当に必要かの再確認
必ず選択肢はあります。
👉 「飲めないまま放置」や「勝手に中止」が一番危険です。
まとめ
- 薬は完璧に飲めなくてもいい
- でも、薬によっては注意が必要
- 飲めないときは、工夫する・相談する
- 自己判断はしない
内服は、
親子で一緒に乗り越えていくものです。
👉 困ったら「相談する」。それが一番の正解です。

