『ちゃんと飲ませているのに』起こる子どもの薬の中毒― 小児科専門医が徹底解説

『ちゃんと飲ませているのに』起こる子どもの薬の中毒― 小児科専門医が徹底解説

はじめに

「子ども用の薬だから安全」
「医師の指示どおりに飲ませているから大丈夫」

多くの親御さんが、そう信じていると思います。
実際、子どもに処方される薬は安全性を考えて作られていますし、医師も必要だと判断して処方しています。

それでも現実には、
“ちゃんと飲ませているのに”起こってしまう薬の中毒があります。

中毒というと、

  • 大量に飲んでしまった
  • 誤って別の薬を飲んだ

といった特別な状況を想像しがちです。
しかし、用法・用量を守っていても起こる中毒
初期にはほとんど症状が出ないまま進行する中毒も存在します。

👉 「症状がない=安全」ではありません「いつもと何か違う」に気づけるかが、子どもを守る分かれ道です


子どもの薬の中毒で知っておいてほしい基本

薬による中毒の怖さは、次の点にあります。

  • 飲んですぐ症状が出ないことがある
  • 風邪や体調不良と区別がつきにくい
  • 親が「薬の影響」と気づきにくい

特に小さな子どもでは、
「元気がない」「眠そう」「ぐずる」
といったあいまいな変化として現れることも少なくありません。

👉 迷ったときは「様子を見る」より「相談する」


解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)

―「解熱しないから」が一番あぶない

発熱時に最もよく使われる薬が、
**アセトアミノフェン(カロナール®、アンヒバ®など)**です。

小児では安全性が高い薬ですが、使い方を誤ると肝臓に大きな負担をかけてしまいます。

特に注意したいのが、
「熱が下がらないから」と短時間でくり返し服用することです。

  • 効果が出る前に追加してしまう
  • 夜間で何回使ったか分からなくなる
  • ほかの薬と成分が重なっている

こうした状況が重なると、知らないうちに過量となり、肝障害が進行します。

怖いのは、
内服直後は元気そうでも、
数日たってから肝臓の異常がはっきりすることがある点です。

👉 「効かないから追加」はNG服用間隔を守ることが肝臓を守ります


抗菌薬(抗生物質)

―「念のため」が低血糖を引き起こすことも

抗菌薬は、
「熱が続いているから」
「中耳炎かもしれないから」
といった理由で処方されることが多い薬です。

その中でも、ピボキシル基を含む抗菌薬には注意が必要です。

注意が必要な代表的な薬

  • セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(フロモックス®)
  • セフジトレン ピボキシル(メイアクトMS®)

これらの薬は、体内のカルニチンを減少させ、
低血糖・意識障害・けいれんを起こすことがあります。

子どもの低血糖は、

  • 冷や汗
  • 手の震え

といった分かりやすい症状が出にくく、
「元気がない」「ぼーっとしている」だけのことも多いのが特徴です。

👉 短期間の内服でも起こることがあります特に乳幼児では要注意!


鼻水・アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬)

― 市販薬にもある“見落とされがちな危険”

鼻水やじんましんでよく使われる抗ヒスタミン薬も、
中枢神経に強く作用するものがあります。

注意が必要な薬の例

  • ジフェンヒドラミン
    (レスタミン®、トラベルミン® など)
  • ベタメタゾン・d-クロルフェニラミン配合剤(セレスタミン®)

特にジフェンヒドラミンは市販薬にも多く含まれており、
「薬局で買ったから安全」と思われやすい成分です。

症状としては、

  • 強い興奮、不穏
  • けいれん
  • 不整脈
  • 逆にぐったりして眠り続ける

などが見られることがあります。

👉 鼻水止め=軽い薬、ではありません市販薬でも成分確認は必須です


喘息の薬(β刺激薬)

― 使いすぎが副作用につながることも

喘息で使われる吸入薬や貼り薬は、発作時にとても有効です。
一方で、過剰使用により副作用が出ることがあります

  • 動悸
  • 顔色不良
  • 不整脈
  • 血糖・電解質の異常

👉 「効かないから回数を増やす」は危険使い方に迷ったら、必ず相談を


誤飲・飲み過ぎが疑われたとき

家庭でやってはいけないこと

慌てて、

  • 無理に吐かせる
  • 口の中に指を入れる

これは非常に危険です。
誤嚥や窒息、口腔内出血につながることがあります。

👉 家庭で吐かせる対応はしない落ち着いて医療機関・相談窓口へ


まとめ

  • 子ども用の薬でも中毒は起こる
  • 用法・用量を守っていても安心とは限らない
  • 初期は無症状のこともある
  • 「いつもと違う」は最大のサイン

👉 「ちゃんと飲ませている」からこそ、気づきにくいことがあります迷ったら早めに相談することが、子どもを守ります