目次
はじめに
「薬は体に良いもの」
多くの方が、そう思っているはずです。
しかし実は、大人が日常的に飲んでいる薬の中には、子どもが誤って飲むと“毒”になるものがあります。
しかもそれは、特別な薬ではありません。
海外では
“one pill can kill a child(たった1錠で子どもが死に至ることがある)”
という言葉で知られています。
日本でも、子どもの薬の誤飲事故は決して珍しくありません。
日本中毒情報センターに寄せられる相談の約7割は5歳以下の子どもに関するもので、その多くが家庭内にある「大人の薬」が原因です。
👉 「大人にとって安全」=「子どもにも安全」ではありません。
なぜ「大人の薬」が子どもには危険なのか?
子どもは大人に比べ、体が小さく、薬を分解・排泄する力が未熟です。
小児用の薬は「体重1kgあたり〇mg」と細かく量が調整されていますが、
大人の薬は当然、大人の体を前提に作られています。
そのため、体重10kg前後の乳幼児が大人用の薬を誤って飲むと、
体重あたりの量が一気に中毒域に達してしまうことがあります。
実際に、大人用の薬を1〜2錠飲んだだけで致死量に達しうる薬が複数報告されています成人の薬剤の中毒。
👉 子どもにとっては「少量」でも命に関わることがあります。
「たった1錠」で命に関わることがある薬
① 向精神薬(抗うつ薬・睡眠薬・抗不安薬など)
中枢神経に作用する薬で、
強い眠気、意識障害、けいれん、呼吸抑制、不整脈などを引き起こすことがあります。
小児救急を受診した誤飲例では、
症状が出やすく、入院が必要になる割合も高い薬剤群です。
👉 「眠くなる薬」は子どもにとって特に危険です。
② 糖尿病の薬(経口血糖降下薬)
糖尿病治療薬の最大のリスクは低血糖です。
子どもでは、
ぐったりする・意識がぼんやりする・けいれんを起こすなど、
短時間で重症化することがあります。
小さく白い錠剤が多く、
お菓子と間違えやすい見た目も問題です。
👉 低血糖は「気づいた時には重症」になりやすい中毒です。
③ 麻薬性鎮痛薬(フェンタニルなど)
がんの痛みなどに使われる、非常に強力な鎮痛薬です。
特に注意が必要なのがフェンタニル貼付薬。
剥がれ落ちて付着したり、拾って口に入れたり、噛んでしまう事故が報告されています。
貼付薬を噛んだ場合、皮膚からの吸収の30倍以上の速度で体内に入るとされ、
短時間で致死量に達する可能性があります。
👉 貼る薬でも「飲み薬以上に危険」なことがあります。
④ 甘いコーティングの錠剤(糖衣錠)
薬の苦味を隠すため、砂糖や甘味料で包まれた錠剤です。
子どもには
「お菓子」「ラムネ」のように見え、
何錠も続けて飲んでしまうリスクがあります。
抗精神病薬の糖衣錠では、
2〜3錠で致死量に達するケースも示されています。
👉 「飲みやすさ」は子どもにとって危険になり得ます。
高齢者の「薬の多さ」も見逃せないリスク
超高齢社会の日本では、
複数の病気を持ち、たくさんの薬を服用している大人が増えています。
統計の研究でも、
大人の処方薬が増えるほど、子どもの誤飲事故も増える
ことが示されています。
祖父母との同居や帰省時は、特に注意が必要です。
👉 「祖父母の薬」も子どもの命に直結します。
親御さんに今日からできること
薬の誤飲は、環境を整えることで防げる事故です。
・薬は必ず子どもの手の届かない場所へ
・鍵付き収納を活用
・ピルケースの使用に注意
・貼付薬は剥がれ防止・使用後すぐ処分
誤飲した可能性がある場合は、
元気そうでも様子見せず、必ず相談してください。
おわりに
大人にとっての「いつもの薬」は、
子どもにとっては命を奪う可能性のあるものです。
事故は、
「知らなかった」「まさか自分の家では」
その油断の隙に起こります。
是非この記事をきっかけに、
ご家庭の薬の置き場所を一度見直してみてください。
👉 今日の小さな見直しが、明日の命を守ります。

